〘五十話〙ミーア、暇を持て余して色々やる
新章!
「あ~、ひ~ま~」
どうしましょう。
暇です。
その場の勢いで町から出たのはいいものの、目的も何もなくただただ歩き、無為に過ごしてたらあっという間に七日も経ってしまったのです。
代官様の館から逃げ出し、町の防御の要である外壁や結界もスライム体の能力と有り余る魔力のごり押しによって、まかり通ってしまった私です。
最初は普通に見習い登録プレートを見せて通り抜けようとしてたんですよ?
けれど、どうやら冒険者ギルドから手が回ってたみたいで、通行門の物々しい雰囲気に断念するしかありませんでした。寄り道なんかせず、さっさと門に向かっていれば通り抜け出来てたかもしれないですけどね……。
あとから言っても後の祭りというやつでした。
ってことで門から普通に出ることをあきらめた私は、力技で抜けるしか手はありませんでした。
この町の結界はワイバーンのブレスをもはじき返すような強固なものでしたが、どんなものにも限界はありますよね。
以前、警備隊の砦や野盗のアジトに閉じ込められた時には魔力を抑え込む魔法陣や結界などというふざけた仕掛けがあって、それから逃れるためにグロいことしたり、魔法陣を切り刻むなんてことをしたりしましたが、ここはそんな無粋な仕掛けもなかったですし。
そんなわけで、結界の魔力を私の魔力で中和させるイメージで、グイグイ押し込み潜り抜けを敢行し、無事成功するに至りました。
やってみればものの数十秒。あっけないものでした。
通り抜けた後、しばらくは見えざる壁であるはずの結界面にゆがみが入っておぼろげに視認出来る状態となりましたが、数分も経てば元通りとなり、見えざる壁に戻ったように思えました。
自己修復的な機能があったのかもしれません。
ちゃんと直ってるのかはわかりませんが、ちょうどお貴族様もいっぱい集まってたみたいだし頑張って正常に戻してほしいと思います。
無責任でごめんなさい。
そういえばあの結界って、川や海の底までも有効だったのでしょうかね?
そちらから試してみるのもよかったのかも知れません。
今更も今更ですが……。
などと、ぶつくさ自己中な理屈や考えを垂れ流しながら歩き続けてる、実は九歳だったスライム娘ことミーアです。
ちなみに、歩いてる場所は街道じゃなく森の中となります。
いくら私が無計画で考え無しだとしても、さすがに人や馬車の往来が多い街道をのん気に歩いたりするわけないのです。
ほんとですよ?
あのお貴族様やギルドマスターから、いつ捜索の手が伸びてくるかわかりませんからね。
これでも元日本人の常識的な中年サラリーマンだった男なんですから。
警戒すべきときはちゃんと警戒する。
そう、出来る幼女なのですよ、私は!
ただ、人と関わる中で、おじさんアイデンティティが若干崩壊してきた気がしないでもないですが……。
スライムっぽい体になって幾星霜、それでも前世の記憶なんてものが今もって残っているのはとても不思議ではあるけれど。
それはまぁ考えても仕方ないことで。
私が私であるのは間違えようのない事実なのです、はい。
おっと、久しぶりに脱線癖が出てしまいました。
そうそう、警戒しなきゃって話でした。
何にしろ面倒な人たちに見つかるのは面倒くさいので工夫しました。
見つかるとすれば、何が原因になるのか? と考えれば、やっぱ魔力に行きつくわけです。
ミーアとしてみた場合、当然ながらミーアの魔器官が最大の魔力発生源なわけですが、スライム体からはそんなもとは比べ物にならないくらいの魔力が出ているはずなので注意が必要です。まぁ、普段は大部分が収納としても使っている謎の空間に収まっているのでそれが表にでることは無い訳ですが。
ミーアの魔器官はギルドで他に類を見ないくらいに発達していると言われたくらいなので、対策しなければここに居ますって積極的にアピールしているのと変わりないです。
だからやったことはミーアの魔器官の活動を最小限に抑えることです。気配をなくすために今までに何度かやったこともあるので全く問題ないです。
対するスライム体の方は、大部分が謎空間にあるとはいえ、ミーアの体に浸透しているものとスライム脳は隠すわけにもいきませんから、魔力発生源になってるはずなのですけど、それを指摘されたことはありません。なぜなのかは私にもわかりません。
以前やった魔力測定の結果にしても、あれは全てミーアの魔器官からのもので、そこにスライム体の魔力を示す情報は何ら出なかったみたいですし。出てたら、それはそれできっと大騒ぎになったはずです。
魔力が微弱ってことはないと思うのですけれど、測定結果に表れないのは何とも不思議です。スライム体の魔力は普通の魔力とは何か違ったりするのでしょうかね?
まぁ、ミーア的にはその方が断然都合良いので、とりあえず理由はどうでもいいですけど。
にもかかわらず、あの砦のお貴族様にはなぜかばれてしまったんですよね?
驚いて一瞬漏らしてしまったミーアの魔力はすぐに抑え込んだわけで、あの人はほんと、どうやって伸ばしたスライム体の存在に気付き、かつ切断までやってのけられたのでしょう?
ふう……、これは今悩んでいても解決できるものでもないし先送りです。
検証できるような事態になっても困りますから現状維持が良いですね。
魔力と言えばもう一つ。
森の中は危険がいっぱい、準備もせずに森に入るなとはよく言われることですが、ミーアの魔力を抑えたことで魔獣から襲われることは格段に減りました。
ぶっちゃけ襲われるんじゃなく、こちらが狩る方なわけですが、魔獣が来てくれないとご飯が確保できないじゃないですか~。
っていうか、とてもつまらないです。
このままでは退屈でだめになります。
このままでは湖にいた時の暮らしと変わらなくなってしまいます!
それでふと思ったのですが、ミーアに入る以前、湖で過ごしていた私は、無数に居た他の生き物に襲われることはまずありませんでした。
まぁ湖に同化しているかのごとくなスライムっぽい生き物だったわけですし、襲いようもなかったかもしれませんが……。
それはともかくとして、スライム体なんて魔器官どころか何の臓器も、核となるものすら存在しないわけで……。
うーむ、私っていったい?
前世の記憶から勝手にスライム体って呼んではいますが、実際のところ私自身が私のことを全然わかってないのですよね。
それに私自身もそうですが、この世界にしたって、まだまだ知らないことでいっぱいです。
あ、だからと言って調べて回って解明したいなんて殊勝なことを言うわけではないですよ。
ただ楽しめればよいのですから。
それを踏まえ、暇を逃れるための行動方針として、『領都に向かい新たな出会いを求める』か、『人を避けつつ冒険の旅に出る』か、あるいは、『樹海経由で湖に戻る』、そんな選択肢が考えられます。
とりあえず。
湖に戻るのはないですね。
一番つまらないです。
領都に向かうのはいいですが、当分人とは関わらない方が良いでしょうし……。
消去法で人を避けつつ冒険の旅で決定です!
とりあえずね。
くどいね。
そういえばワイバーンの魔器官はまだ吸収できていませんし、それを目的の一つにするのもいいかもしれません。
ところで、話は思いっきり変わりまして、ぷにょ収納のことなのですが。
ぷにょだけに体から離すことが出来ないのが難点だったのですが、その点も魔石に魔力を込めたことがヒントになり解決出来ちゃいました!
そう魔石です。
まず自分の魔力を魔石に十分に注ぎ込み、虹色化した魔石つくりま~す。
虹色じゃなくてもいいのですけれど虹色になっちゃうから仕方無いのです。
自分の魔力っていうのが大事なところなので、虹でも単色でもなんでもオッケーなのです。どちらかといえば込められた魔力量の方が大事です!
それをぷにょ収納に放り込みま~す。
するとあら不思議!
私から完全に分離しても、ぷにょ袋は死滅することなく存続することが出来るです!
虹色魔石の魔力が続く限り、スライム体の生命維持と行動プログラムの維持が共になされるので、一見すると普通の皮袋のように使うことが出来るわけなのです!
ミーアやっぱり天才じゃないかしらん。
これで体から離すことも出来、どこへなりとも置いておけるようにもなってとっても便利です!
背負い袋を持てないときは、かっこ悪いですけど紐付きミーアになって、体から直接出し入れするってことをしなければいけませんでした。
それはそれで某青いネコみたいに究極便利なんでしょうけれど、自分の体に手をぶちこんで取り出すだなんてちょっと不気味です。
とは言っても実際やり方次第でそんなことも出来そうです。ウエストポーチの中で穴を開けておき、そこから出すふりして実はお腹から出しちゃうとか。
うっわ、やっぱ気持ち悪っ。
ついでに、この紐のことだって改善できました。
魔石利用の副次効果として、虹色魔石を収納したい品物と一緒にしておけば、それを目印に謎空間から探し出し、取り出せることに気付いたからです。
あまり多くなるとどれがどれって覚えておくのが大変なのが玉に瑕ですけれど。
まぁほんとに大事なものは直接ミーア自身にしまっておきたいと思います。
何よりミーア自身に入れておけば魔石の魔力は尽きることがないので永久保存できます!
なんか、ミーア自身に入れるって……。
ちょっとエロいなって思えるのは私の心がおじさんだからでしょうか?
…………。
はい、それではそういうことでっ!
旅を続けていきたいと思います。




