〘二十二話〙ミーア、魔法暴発の顛末
目が覚めたら見知らぬ場所で、粗末なベッドに寝っころがってました。
どうも!
一度寝てしまうとちょっとやそっとじゃ起きない図太さが売りのスライム娘、ミーア十歳です。
反省。
とは言っても、こんなこと自分の意思じゃどうにもならないわけなんですが。
けれど殺されても死なない自信ありますし、なんとかなるでしょ、大丈夫。(意味不明)
っていうか、ここどこでしょう?
いつものボロ部屋じゃないのは確かです。
あそこはまあ、ね、不測の事態でぶっ壊れましたしね、仕方ないね。不測ですから、わざとじゃないですから。
とまぁ、お約束の現実逃避はさておきまして。実際問題、マジここはどこなんでしょう?
私はいったい、どれくらい眠っていたのでしょうか?
生き物からのエネルギー吸収はもちろん、通常の食事すらしていない私は、珍しくかなりお腹がすいているのです。これって一日以上は寝てたんじゃないでしょうか?
目や耳はすっかり治ってます。
スライム体細胞による自然治癒か、アンヌの治癒魔法か、どちらでしょう?
きっと両方なのかもしれません。
ミーアの目は完全に潰れてましたからアンヌの魔法だけでは無理でしょうし、私は途中で寝ちゃいましたし。
で、本題。私が今いるここです。
殺風景で何もない狭い部屋です。
私じゃ到底届かない高さに明り取り用の小さな窓があるだけで、そのせいかとても薄暗く、不思議なことにドアがありません。
いったいどうやって出入りするのでしょう?
もっと不思議なことに過保護なアンヌがそばに居ないです。
いつもの調子なら、絶対そばについて看病してくれているはずなのに……。たまたま居ないとかじゃありません。
そもそも人がそばにいた形跡すら見受けられないのです。
こんな部屋の様子、状況で考え付くものはただ一つです。
そう、独房です。
なんとか良い方にとらえて言えば隔離室。
まぁどちらも閉じ込められてるって意味では同じです。言っときますけど、前世でだって入ったことなんかありません!
品行方正な小市民でしたからね。
いやしかし、これはもう独房以下じゃなかろうか?
ドアすらないんだよ、ドアすら!
映画やドラマでよく見る、独房お約束の鉄格子もなくって、四方全てが壁。
それでね、よ~く見れば隅っこに小ぶりな壺など置いてあるわけなんですよ。
よもや、よもやですよ。
アレにアレしたときアレせよと?
乙女なスライム娘になんたる仕打ちっ!
そんなとこで意地でもしないし、ミーアはウ〇チなんてしない!
実際しなくてもスライム体でミーアの体内のアレを吸収すれば何とかなっちゃうし~!
うひぃ、自分で考えてもめげそう。あ゛~、そんなことしたくな~い。
むむぅ、これは完全危険物扱い?
そりゃあ魔法暴走させて屋根とか色々吹っ飛ばしちゃったけど……、それでこの仕打ち?
ひどくない?
いったい私のこと、何だと思われてるんでしょうか?
こんな可愛い美幼女なのに……。
うう~む。
…………。
あ?
ああっ!
やっばい。
ほんとやばいことに気付きました!
これは今こうなってしまってるのも納得の新事実っ。
私、今、心臓動いてない。
当然息だってしてないです……。
うぎゃ~!
そりゃあ保護するべき愛らしい幼女から、不審すぎる死体……みたいな幼女に変わってるし、隔離だってされる……かも?
アンヌ……、驚いただろうなぁ、悪いことしちゃいました……。
もちろんわざとじゃないけれど。
原因はきっと魔法暴走。
あれだけ凄まじくも無駄なものを、意図せず突然引き起こした代償は大きかったのです。
ミーアのレセプタの魔力だけにとどまらず、どうやらスライム体の魔力をも引きずり出され、その暴走に使われてしまったみたいです。慣れないことはほんと慎重に慎重を重ねなきゃダメってことです。
身をもって体験してしまいました。
で、その代償がミーアの体を無意識下でも動かすよう、スライム体組織に出していた自動命令のリセットです。
結果、息も心臓も何もかもが止まった、生きた死体の出来上がり~。
とは言っても全身に浸透しているスライム体自身は当然生きてますからミーアの体はちゃんと維持されているわけで、なんなら血液なんか無くても普通に動けちゃいますから。
けれど血液ないとか、ケガしても血が流れないなどという、人として、というか命ある生き物としてダメなものになってしまうし……。
マジやってしまったですねぇ……、困った。
と、とりあえず再命令しなきゃ。
スライム体細胞さん、ちゃんと色々動かしてね。
ミーア再起動~!
…………。
うんうん、バッチリ動き出しました。
胸に手を当てればちゃんと鼓動が伝わってきます。
まさに死人のようだった肌も、普段なみの青白さに戻ってます。なんだそれ。
いや、スライム体細胞が浸透してるせいなので仕方ないね。
でも、詰んだ――。
「……ここはもうダメです。見切りつけて出ていくしかないです」
幸い言葉もかなり理解できるようになってきましたし。
どこか遠く、いっそ、よその領まで行ってしまいましょうか?
うん、そうしよう。
アンヌが以前ちらっとだけ地図を見せてくれたから大まかな地理はわかります。
スライム脳の記憶力万歳!
そうと決まれば、魔法の復習しておこう。
え~っと、身体中の魔力をレセプタに集めて練って~、練って……?
って、あれ?
あれれ?
練れない。うまく練れない~!
ど、どうして?
寝てる間にもう使い方忘れた……ってこと?
前世のおっさんのころならともかく、このスライム体に限ってそんなお間抜けなこと……。
いや暴走はしましたけれど。
私がおバカだったことは認めますけれど!
それはそれ、ま、まぁいいじゃないですか。
そんな自己嫌悪でつい俯いてしまい、ふと胸元を見たところで何か目に入ってくる。
「ちょ、何これ?」
思わず着ていたワンピースをたくし上げ、ぽいと脱ぎ捨てます。
かぼちゃパンツのみになった寸胴幼女ボディ。
そのツルペタな胸に、いかにも何かの仕掛けありますって見た目の魔法陣っぽいものが描かれているじゃないですか!
くっそ、スライム娘の柔肌になにしてくれはりますの!
まさか、これのせいで魔力が扱えないの?
うにゅにゅ、おにょれ~!
でも、さっきスライム体の自動命令は復活できたよね?
う~む。
これはあれでしょうか?
この魔法陣っぽいのはあくまでミーアの体にのみ効果があるってことじゃないかしらん?
くふふ、片手落ちです、バーカ、バーカ。
私を閉じ込めたやつもそこまでは気付けなかったみたいだし、気付かれてたまるか、だし。
スライム体活動復活したから、肌に描かれたのか彫られたのかわかんないですが、そんなモノなんとでも出来ると思う、きっと。
でも。
いずれにしても、ここに居ても碌なことにならないのは目に見えてます。
アンヌ……、ごめんね。
優しくしてくれて、色々面倒見てくれて、ほんと究極久しぶりに人の優しさに触れあえて嬉しかったけど……。
もう無理っぽい。
ミーア、どうにかしてばっくれます!




