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番外編「新春福袋ガチャ」

今回は本編の未来というか、本編と関わりのない小話なので閑話ではなく番外編とさせていただきました! 本編の最新話がまだ真夏の時期を想定していますので、新年ネタにためには番外編とするしかありませんでした(汗)。 あと、すごい短いおまけみたいな話です。

「新年最初の運試し! 当店自慢の福袋をご紹介します!」


 マイク片手にパフォーマンスを始めた私に、集まった客達の注目が集まる。

 今日は新年。剣と魔法の異世界であろうとも、新年を皆で祝う習慣というのは存在していた。


「福袋は、買って開けてみるまで中身が分からないという、どきどきわくわくの商品となっています! とはいえ何が入っているのかまったく分からないとなりますと、購入していいものか迷っちゃいますよね。

 なので今から、福袋の中に入っている物を紹介していきたいと思います!」


 私が合図をすると従業員達が動き出し、福袋の中に封入している物と同じ商品を客に見えやすいように机の上に配置していく。


「まずご紹介しますは、当店所属のアイドル達の限定ブロマイド!

ここでしか手に入らない貴重品ですよ!」


 アイドル系のグッズは、好みの分かれる商品だ。

 興味のない人には「はずれじゃねえかよ……」と不評だが、アイドルが好きな客には「きゃあああ! 欲しい、ノアきゅん限定ブロマイドぜったい欲しいー!!」とか「手に入れたいでござる! 絶対に手に入れたいでござる!!」なんて叫ばれるくらいに人気がある。

 実は福袋の中に必ずひとつ入っているのだが、どのアイドルのブロマイドが当たるかは運次第。さらには各アイドル毎に複数の種類のブロマイドが存在する。

 目当てのアイドルのブロマイドがどうしても欲しい人には、厳しい運試しとなるだろう。


「他にも、高級バッグや特製グッズなど、どれもお買い得な商品ばかりです!」


 私はそれからしばらく、各種商品の紹介を続けていった。

 どれもこれも、福袋単品の値段から考えるとお買い得な物ばかりだ。

 しかし、客達の反応はそれほど芳しくなかった。


「悪くはないんだが、なあ……」


「なんか、このカジノにしてはぱっとしねえというか……ちょっとお得、ってくらいだよな」


 新年早々にカジノへ訪れるような客は、ほとんどが大金を夢見るギャンブラー達だ。そんな彼らにとって、買えば得するという程度では、あまり魅力的には感じないらしい。

 ――無論、そんな彼らを釣り上げるための豪勢な餌は、既に準備済みである。


「さて、最後に紹介しますは福袋の商品の中でも超絶希少!

なんと封入数僅か1%――!」


 大仰な身振りを交えて、私はポケットから1枚のカードを取り出す。

 それはちょうどアイドルのブロマイドと同じサイズのカードで、客達は「またブロマイドか?」と怪訝な顔をする。

 しかし次の私の一言に、客達は必ず驚愕すると確信して、私は言い放った。


「――高級ガチャのお好きなウルトラレア景品との引き換え券です!」


「「「……な、な、なにいいいいいいいいい!?」」」


 虹色の輝きを纏う、私が掲げた特別なカードには「ウルトラレア引き換え券」と明記されている。

 それも、今までにガチャでウルトラレア景品として提示された景品の中から、好きな物を選ぶことができる、超特別なアイテムだ。


「過去にガチャの景品としてラインナップされて、しかし誰にも引き当てられることがなかった――あるいは、誰かの手に渡り、もう諦めるしかなかった秘宝。

 さらにカードの有効期限内なら、これから新たに登場するウルトラレアも!

 このカードはそんな秘宝をどれでもひとつ、自由に選び取る権利を得ることができるのです!」


「実質、億越え確定の景品じゃねえかあああ!?」


「いや、下手をすれば億どころの騒ぎじゃないぞ!? 過去の物も含めて自在にウルトラレア景品を選び取れるなら、それだけの価値はあるはずだ!!」


「ガチャ回すより遥かに格安でウルトラレアを狙えるとか……!

 こんなのもう、福袋買い占めるしかねえ!!」


 ウルトラレア引き換え券の存在を示した瞬間、先程までとは打って変わり、カジノ内は騒然となる。

 何せ、福袋の販売額は1000G。高級ガチャを回すための金額の、10分の1という格安の値段だ。

 ガチャコインの相場の最安値よりもさらに格段に安い値段で好きなウルトラレアを狙えるとなれば、大騒ぎになるのも無理はない。

 ――正直なところ、これは福袋というより新春ガチャとでも言うべき代物だった。


「販売はただいまから開始! 数に限りがございますので、お一人様一点限りの限定販売とさせていただきます!」


「なっ……い、一点限りって、ひとつしか買えねえってことかよ!?」


「……いや、逆にこれはチャンスだ! このルールなら、一人に買い占められて自分が買えなくなる確率は格段に低くなる!!」


「福袋を買って、それを他の奴に高値で転売すれば……いえ、けど、もしそれでウルトラレア引き換え券が当たったらと考えると……ああ、どうすれば……!!」


「とにかくまずは、売り切れる前に買うしかねえだろ!!」


 カジノ内に設けられた、福袋販売用の特設会場は一気に騒がしくざわつき始めた。

 そうして人々から生み出される欲望、期待、懇願、苦悩といった、いくつもの感情はダンジョンマスターである私の糧として、莫大なエネルギーへと変わる。

 福袋自体の利益が見込めないどころか大赤字だとしても、それと引き換えにダンジョンマスターとしての糧を得られるなら、私としては大儲けだ。

 少しでも行列の前に並ぼうと押し合い圧し合い争う人々を、従業員達に指示を出して制させながら、私は内心でほくそ笑む。


(今年もよろしくお願いしますね、お客様――うふ、うふふふ……)




 世界は今日も回り続ける。

 新たな年が始まり、未来へと続く日常が回り始める。

 幸せな日々が訪れるようにという願いと共に、新しい一年が巡り回っていく。


皆さん、新年あけましておめでとうございます!

今年もよろしくお願いします!

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