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2-51『勝利の余韻』

「それでは~、決闘3連戦【紫雲】の勝利を祝って~!かんぱーい!!」


「「「「「乾杯!!!!!」」」」」


 レミによる音頭で俺たちはグラスを掲げて乾杯をした。


「美味い!甘い炭酸の飲み物か?これ」


 口の中で泡がプチプチと弾けて舌にシュワシュワっと刺激がゆっくりと余韻を残しつつ消えていく。実に官能的な感触。

 味はショウガ?……それと、スパイスなどによって刺激が補強され、さらに砂糖による甘味によって不快感なく上等な飲み物として喉を通り過ぎていく。

 俺のは紫色に着色されているが、他のメンバーは赤っぽかったり、ピンクだったり、緑だったり、青だったり、見ていて面白いな。


 今回の勝利を祝う飲み物として最高の1杯だ。

 1杯で満足感もたっぷり……

 うん、おかわり。


 俺たちが取り囲むテーブルの前には様々な料理が並んでいる。

 場所はもちろん……俺の寮部屋だ。

 まだ、家を借りていないからね。


 俺は近くにあった唐揚げを1本掴んだ。

 ……こ、これは……珍味として名高い「フロッグバードの唐揚げ」じゃないか!?

 鳥の唐揚げでもなく、蛙の唐揚げでもない……

 鳥もものジューシーさと蛙の足の弾力と繊維のほぐれやすさが共存し、何より、噛めば嚙むほどに旨味が舌の上に洪水のように溢れ出てくるこの味わい……


 村では滅多にお目にかかれなかった代物だ……う、美味い!!


「フロッグバードの唐揚げ」を食べながら炭酸飲料を飲む……これ即ち至福!!


 うーん、もう1杯!!


「ショウガやスパイスを混ぜたフレーバーに砂糖で甘味を付けた炭酸水です」


 リバーがお代わりを注いでくれた。

 自分も主役の1人なのに、給仕みたいなことをしていていいのだろうか?


「へえー、炭酸水なんて温泉地の特産品だと思っていたよ。帝都で飲めるとは思わなかったな。どっかから汲んできたの?これ」


「いえ。開発しました」


「え?」


 事も無げに言うリバーにびっくり。


「それじゃあ、例の飲み物への挑戦の第一歩ってわけか!?」


「はい。もっとも、まだ炭酸水を作ることに成功しただけで、これからこれを貯蔵できる魔道具の開発に取り掛かりますけどね」


「はえー」


 やっぱりリバーはすごいな。本当に多方面にその頭脳を生かしている感じがする。

 俺なんてこの1か月の間で、魔物を倒すこと以外に考えたことといえば、変態を懲らしめる方法を思いついたのと、教会に巣食う大悪魔への仕返しを考えることぐらいだったのに。

 前者1%、後者99%ぐらいの割合で。


「ハリーやブルートにも手伝ってもらったのですよ」


「大した手伝いじゃないけどな」


「フハハハハ……讃えろ!」


 リバーの傍でハリーとブルートがそれぞれの飲み物を飲んでいる。

 ハリーは赤、ブルートは青だ。

 そして大口を開けて笑うブルートの舌が青くてなかなかに気持ち悪い。


 詳細を聞くと、ハリーによる火魔法によって「炭酸」の気泡を生み出す成分を作り、それを水に溶かしこんで風魔法で攪拌したらしい。


 ……うむ。説明を聞いて思った。

 別にブルート要らねえじゃねえかって……


 水を用意しておけばいいよね、それ!?


 胸を張るブルートに微妙な眼差しを注ぎながらグラスを合わせるリバーとハリーをみて何となく状況を察したよ。いるよね、こういう自分が仕事に関わっていないと急に不貞腐れるやつって……


 こいつを置いて森やダンジョンに出掛けてしまい、ごめんよ。


「魔法で作った水の方が不純物が少ないんですよ」とリバーがフォローしていた。


「あれも、同じ『炭酸飲料』なのか?」


 俺は視線の先に映る大人たちの持つ大きなコップの飲み物を差して尋ねた。


「あれは、エールですね。大麦とホップを発酵させた酒です」


 なるほど。発酵によって発泡する大人の飲み物というわけか。


 酒を用意するかどうか分からない段階から、顧問のフィッティ先生の近くには木桶やゴミ捨て用の樹脂箱を置いて、徹底した布陣を敷いている。


 そして、ソファには近づけない。これが一番大事。

 

 絶対に負けない。

 ソファに投げ出さない。

 逃げ出させない。

 自分を強く信じる。


 ダメになりそうな大人は部屋の外に放り投げるのだ!

 

 もう涙は見せないぞっ!


 でも、きっと大丈夫!

 今回はスペシャルゲストを招いているからな。

 こっちも盤石の布陣だ。


「やあやあ、ノーウェ君。この度はおめでとう。派閥結成に助力した私としても実に鼻が高いよ」


「ありがとうございます」


 対フィッティディフェンダー1人目は恩師であるクローニ先生だ。

 酔いつぶれても担いで帰ってくれるという強靭な肉体を信頼しての抜擢だ。

 なお、その様子はハリーが何度か目撃しており、俺に献策してくれた。


 あ、酒臭いんで1m以内に近づかないでください。

 俺は遠くからグラスを合わせる。


「私からもお礼を言わせてもらおう、ノーウェ君。しかし、良いのかな?私がここにお呼ばれいただいて……」


「ありがとうございます。まあ、決闘も終わったわけですし、相手が相手だったわけですし、いいんじゃないでしょうか?あまり堅いこと言わずにこの場を楽しんでください」


「そうだぞ~。先生はお前をそんな風に育てた覚えはないぞ~」


「いえ、先輩は先輩だったんで教師として何かを教わって覚えはないんですが……」


 苦労人体質のクローニ先生よりもさらに苦労人な感じをそこはかとなく醸し出しているのは、第3決闘で立会人を務めていたアーネストさん。


 彼が2人目の対フィッティディフェンダーだ。


 決闘のあと、例の偏愛クズ公子は帝国政府の管轄機関に引き取られていったそうだ。

 そのやり取りでげんなりして戻って来たところをクローニ先生が捕まえた……いや、誘ったらしい。


「フィッティ先生の顧問としてのお祝いでもあるので、アーネストさんも楽しんでもらわないと困りますよ」


「そうだぞお~。私たちの仕事は日々プレッシャーにさらされているんだ。こういう時くらい解放されなくてはね~」


「……先輩は解放されすぎだと思いますが……いったい、いつから飲んでいるんですか?」


 俺も激しく同意する。

 クローニ先生は乾杯の前からだいぶこんな感じだった。

 そして、アーネストさんはお酒を飲んでいない。俺たちと同じショウガの炭酸飲料を飲んでいる。


 俺は、世の中というものはどの年代であっても「良い人」と「残念な人」で分かれるんだなって思った。


「アーネストぉーーー飲んでるぅーー?ひゃっはーー」


 「残念な人」が1名、輪に加わった。


 ある意味、今日の主役、フィッティ先生だ。

 

 彼女についてはこれ以上語る必要はないだろう。

 どうか、楽しい時間を過ごして欲しい。

 家具の近くに寄らなければそれでいい。


 自分を大事に。家具をもっと大事に!


「ああ。楽しんでいるよ、フィッティ。挨拶も終わったし、あっちに行こうか。窓から見る街灯が色あざやかできっと綺麗だよ」


「うん、わかったー。行こうーーーアーネストぉーーー」


 そういって、さらりとフィッティ先生を回収して遠くに行ってくれたアーネストさん。


 ……やっぱり良い人だ。

 さすが過ぎる……

 涙見せてもいいかな……?


「しかし、君のあの『泡』は何だい?先生恐ろしくなっちゃったよ」


 願わくば、もう1人回収してほしかったけど……

 さすがにそれは甘え過ぎか……


「あれは『ヴァインバブル』という魔法です。『バブル斜光クラブ』の固有魔法ですね」


「ほー。しかし、あれはすごいねぇ。上位のランクにいる連中はきっとあれに戦々恐々としていると思うよー」


「……と言いますと?」


「だって、あの魔法があれば『領域支配』も怖くないだろう?」


「領域支配」?

 ……ああ、ブルートがやっていたあれか。

 属性魔法でフィールドを支配してどこからも攻撃ができるようにするってやつね。

 

 ブルートは大きなお湯玉をせっせと作って、最後に攻撃してたな。

 たしかに、『ヴァインバブル』を使えば、あれは無になるというか倍返しすることになってしまう。


「なるほど……じゃあ、封印しましょうかね。この学園にいる間は」


「「「「「ええ~???」」」」」


 クローニ先生の声に何人かの声が被さった。

 よく見ると、レミ、モモエ、ミスティ、ディリカ、カーティスがいた。

 あと、ブランクは彼らと一緒に立っているが固まっていて動いていない。


「それはちょっともったいないんじゃないかね?」


「そうだよっ、せっかくあんなすごい化け物を倒して得た魔法なのに〜」


「そうだよ、せっかくブランクが犠牲になったのに!!」


「もったいないわね。考えられないわっ」


「そうだな。俺なら毎回使う」


 その場で皆の反応に首を動かしながらもニコニコ笑顔で事態を見守っているモモエ以外からは非難轟々だった。

 あと、ブランクは今も犠牲者のままだ……加害者は俺ではなくミスティな!?

 なんか、実演してたんなら、とりあえず解いてあげようよ……


「うーん。だって初めから自分が有利になる技なんてつまんないじゃん!?今回はあの変態貴公子が卑怯な技を使ってくるだろうな、と最初から思っていたから使ったまでだし、俺は色んな魔法を試したいからなあ」


「たははー」


「これだよ……うちのリーダーは。本当に嫌味なんだよな」


「そうね。相変わらずね……」


「そっかー、ならしゃあない。ノーウェ君だしっ!」


 リーダーに対して失敬が過ぎる。


「ノーウェ君は色んな魔法に日の目を見せたいのですもんね」


「そうそう」


「ふーん、まあでも君の意思に関わらず周囲は動くと思うけどね……下から上に……うっ!」


やばいっ!

先生の胃から何かが下から上に動いている予兆だ。


「た、タンマ、タンマ!先生、耐えて!!誰かーーー!!『フロート』!ブルート、リバー、ハリー、ハリィ!ヘルプ!」


 俺は断固たる意思をもって周囲に助けを求め危機を救おうと試みた。


 結果、俺の魔法は汚されてしまったが、なんとか高級絨毯の危機は防ぎ、事なきを得るに至った。


 ……もう、先生たち、この部屋出禁にしようかな。


ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。

もしこの物語を面白い!と気に入っていただけたら、どうか、いいね、評価、ブクマ登録をよろしくお願いいたします。今後の執筆の励みになります。


派閥【紫雲】も着々と結束を強めているようですね。内容はともかく。笑


次回、久々のあの子の回です!


ノーウェと仲間たち(とブルート)の活躍に乞うご期待!


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