2-38『かばう』
「フォームチェンジは計3回です」
リバーが断言する。
さっきも説明していたが、確認のためだろう。
3回変わるということは、4形態あるということで、ここまでドラゴン型から羽人間型へと変わったから、残りは変化中の現在と合わせて2形態ということになる。
「『土』……の城が人になったような姿だ!」
「何だそれ?」
大辞典マスボに映る立体像を表現する俺にハリーからツッコミが入った。
しょうがないじゃん……そうとしか形容できない姿なんだから。
点滅していた、無念そうな羽人間型結界は今度は倍くらいの体格になって、身体に魔法でできた?石を集めて積み上げている。
見るからに耐久力重視のフォームだな。
最初のドラゴン型が攻撃寄り。
次の羽人間型が回避寄り……回避できてなかったけど。
3番目は耐久寄りか。
ちょっと楽しくなってきた。
誰が開発してるんだろうね。こんな面白いゲームと変てこマムンクルスを。
石を積み上げ終わったマムンクルスは、手足はあるがその同体と頭はまるで城のようだ。歩く城に見える。
「ほら見ろ!?」
「いや、そんなこと言っている場合じゃねえよ。ブランク、ミスティ、もう一丁行くぞ」
「ええ〜?」
「分かった!」
ブランクの背中を押すハリー。
「ジャックとレヴェックも準備だ」
「「りょうかい!」」
良い前線指揮官ぶりだ。
急遽メンバーに加わったにもかかわらず、今ではチームの誰もがハリーに自然と従うようになっている。
指示は適切。
それでいて簡潔。
しかもツッコミまでしてくれる。
無駄がない。
「ブランク、行くよっ!」
「うー、あれやると、あとで身体がだるくなるんだよなぁー」
「いいから行くよっ、『サープラス-プロテクト』」
「ううっ……」
問答無用に固まらせられるブランク。
すっかりミスティの尻に敷かれておる。
いや、たぶん尻に敷かれても何も感じないんだろうな……
あとで身体がだるくなるだけっていうのが、もうすごいよ……
ブォーン……
ガスッ……
城人形型マムンクルスが自分の城のブロックをブランクに思いっきり投げつけたが、ブランクの固い体はしっかり弾いてブロックした。
なんとなく悔しそうなブロック……もとい、城人形。
「『ハ・イ・ア・ー・ス』」
「続けっ!『土玉』」
「「『ハイアース』」」
要塞に4人が大きめの土塊を投げつけるの図。
そして、ぶつけられて怒った要塞が自分の岩を投げつける図。
その岩は1人の小柄な人間に当たっていとも簡単に弾かれ、当たった人間は平然としている(ように見える)のに対し、投げた本人である巨大な城人間は、こちら側の放つ土魔法をくらってダメージを受け、痛がっている。
なかなか滑稽でシュールな光景だ。
ふと思ったが、これは映像になって観客が見ているんだよな!?
……盛り上がるのだろうか?
あと、気づいてしまった……
俺が何もしていない恥ずかしい映像が全学園ネットで中継されてしまっている。
何もしてないどころか、さっきマスボに向かってお祈りしていた……
……
…………
………………
やめよう。
今は決闘に集中だ。
俺はポーター。
目立たないことが信条。
その分、次の決闘は張り切って動くぞ!
……などと余計なことを考えていたら、制限時間前に城人形が点滅し始めた。
何ターンにも渡って『ハイアース』4連発攻撃を受けていたからまあこんなもんか。
次が最後の形態のはずだな。
ヒヒヒーン……!
ブルッブルッブルルッ……!
あ、やばそう……
最後は一角の馬の造形をしたマムンクルスだ。
「気をつけろ!今度は馬だっ!角付きの馬!属性は『風』!」
「きゃー」
馬が突進してこちらの前線の陣形を撹乱している。
こいつは初めからこういう仕様なのだろうか?
それとも学習してるのだろうか?
なんか気になる……
「気になりますね」
あ、やっぱり?
「ええ、気になります。こちらの対策をするように……ですし、2つ前の人形と同じ『風』。これは、なかなかイレギュラーな状況です」
リバーの方がより詳細な分析だったが概ね意見は一致した。
これまでの作戦が無になる。
「一か八かですが作戦を思いつきました。レミ、とりあえず足止めをお願いします」
「あ、あれねー!?分かったー」
レミが左の人差し指を立てて、それを右手で掴むようにして、さらに右手の人差し指も立てている。
「にししっ、にーん!『頭磁風』〜」
おおっ!
突風が馬に向かって行ったと思ったら、旋風に変わって巻き込んで行く。
俺の持つ『コルナード』の一点集中強化版だな。竜巻がかなり大きい。
ブルッブルッ、ブヒヒヒヒーンーン……
馬が驚いたように前足を上げる。
効いてる。効いてる。
「ハリー、お願いします」
「了解、行くぞっ『風玉』」
「「「『ハイウインド』」」」
効いてはいるが……風魔法を纏った突進がなかなか侮れない。
とりあえず、今はハリーの迅速な指示により、魔法の発動とともに距離を置いて走り回っているので角馬は的を絞れていないでいる。
「ミスティ、試したいことがあります。退場覚悟になりますが……いいですか?」
腕を組み、顎下に手をあてるリバーから新たな指示が追加される。
「えっ、うん、いいよ!何をすればいいの?」
「床の一部を溶かして下さい」
「えっ?あ、そういうことね。了解!『サープラス-グルー』」
なるほど。床を溶かしてできた沼にはまって一時的にでも動かなくなってくれれば狙えるな。洞窟の硬い岩盤も溶かせるミスティならこの床も溶かせるだろう。
問題はそれが魔法の行使と判定されるかどうかだが。
ミスティが中央あたりの床をあっさり溶かした。
やはり異常……
そして過剰……
「ブランク、そこの後ろに立って」
「ええー?」
さらに、ミスティはブランクを溶けた床の手前に配置して囮にした。
さすが過ぎる……ブランク使いに余念がない。
ブルルーー……
パカッパカラッ……ドプッ……!
馬の片足がはまった。
問題は、判定がどうなるか……
……退場の告知音は……鳴らない!
どうやら、セーフみたい。
「よしっ、『風玉』」
「「「『ハイウインド」」」
「こっちも、もう1回!ににーん」
レミの旋風トラップがもう1回はまり、そこから再び一斉風魔法攻撃。
角馬にもかなりのダメージが入ったようだ。
「もう1回行くよっ!『サープラス-グルー』」
もう一度、床を溶かす……だが……
大辞典マスボ内の立体像のマムンクルスが変化を見せ始める。
あれ?フォーム変更は3回までのはず。
角馬にニョキニョキと羽が生え始めた。
「まずいっ、馬が翔ぶぞっ!!みんな、下がれーーー」
「え?りょ、了解!下がるぞーーー」
俺の声にハリーが呼応し、攻撃を仕掛けようとしていたメンバーが後ろに下がる。
ブヒヒーーン……
パカッパカラッバサッバサバサッ……
案の定、馬は突進後に急に羽を生やして飛び始めた。
空中を走りながら旋回し始め、時折こちらを威嚇するかのように嘶く。
旋回によって旋風が起こり、こちらの風魔法に対抗してくる。
かなり厄介なことになってきたな……
なんかいい方法はないかと考えて周囲を見渡したそのとき……
あ、やばい……
気づいてしまった。
ハリーの号令による前線の後退はその統率力により完璧に遂行された……
……はずだった。
……だが、ひとり、前線に取り残されている人物がいた。
「え、俺?」
ブヒヒヒーーーン……ブルッ……ブルルッ……
その男に狙いをつけた羽角馬が、一度空中で前足をあげて嘶いたあと、逃げ遅れたアホな男に向かって突進を始める。
「う、うわぁーー『水膜』」
なおアホなことに、その青髪の男は水の膜を張って突進を防ごうと試みた。
あかん……それ、退場になるやつ……
俺はつい目を瞑ってしまった。
南無三……
ドーーーン!!ボコッ!!
……ん?
水に当たった衝撃音とは異なる音。
不思議に思って、俺は即座に目を開いた。
目の前に見えたのは……
……土の……壁!!
額についている立派な角が土の壁に突き刺さっており、羽馬は進もうにも進めずにその場で4本の足を何度も動かしながらもがいていた。
ブーブーブー……
そして、鳴り響く退場の告知音。
「ハリー、この結界は退場による属性変更はしません。とりあえず、始末しましょう」
「……お、おう!『風玉』……『追い風』」
パリィーーーン!!
核の割れる音が静寂の中で響く。
……
…………
………………
……俺たちは、3つ目の部屋を攻略した。
…………何よりも大きな代償と引き換えに。
【紫雲サイド】
脱落者:〈指揮官〉『土庵深』リバー=ノセック
ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。
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まさかの<指揮官>退場。
次回、第4の部屋に向かうノーウェたちは……
ノーウェと仲間たち(とブルート)の活躍に乞うご期待!




