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2-8『遠足』

「いらっしゃいませー!冒険者ギルドにようこそー!!」


 翌日、俺たちは再びギルド本部にやって来た。


 幹部(暫定)による会議の最後に家を買わないかという提案がリバーよりなされ、物心つく頃には自分の家にいなかった俺としては、夢のマイホーム購入か?と少々興奮し、色めき立ってしまったが、よく考えたら派閥で購入する家なので、俺の家ではなかった。


 あの箱の置き場と、皆が気軽に入り浸れる場所として派閥専用の家があることには何も異存はないので、物件探しをリバーに一任した。


 というか、派閥ポイントで家まで購入できるとは……学園恐るべし。


「今日はどうされまし……ぴっ!」


 おっと危ない。

 俺を見たミルカさんの気が一瞬遠のいたようだった。

 受付できないと困るから気を確かに持っていてね。


「はぁ、はぁ、すみません……本日はどのようなご用件でしょうか?」


「はい。今日も魔物狩りに森に行きます」


「……は、はい……ですが、見たところ人数がちょっと多いような……」


「そりゃ、20人いますからね」


「ですよねーー……」


 また少しミルカさんの目が虚ろになっているな。

 大丈夫か?この人。


「とりあえず、昨日登録したメンバー以外を全員登録させてもらえます?」


「は、はい。ではこちらの用紙にご記入をどうぞ……」


 俺は登録用紙を受け取りリバーとブルートに渡す。

 2人は未登録のメンバーを集めて記入台の方へと向かった。


「で、でもノーウェさん。さすがに、この人数の引率はいくらCランクの君でも許可できないわよ。10名以上の研修となるとBランク以上の冒険者であることが必須条件なの」


「え?そうなんですか?」


「そうなのよ……だから、おひ……」


「それなら大丈夫だ」


「ぴっ!」


 ミルカさんが何かを言いかけた後ろから、大きな影がぬっと出てきた。

 このデカい影は?と見上げると……やはり、ラッフマーさんだったか。


「ノーウェ君は昨日付けでBランクに昇格した」


「「え?」」


 俺とミルカさんの声が重なる。


「ホーガンリザードの魔石を納めてもらったからな。他の魔石も大概Bランクの魔物のものであったし」


「で、ですが推薦人の方は?」


 推薦人?俺のよくわからない方向で、職員2人の間で話が進んでいく。


「それも確認した。ノーウェ君の実力を良く知る高名な人物からのお墨付きをもらったからその点も大丈夫だ。まあ、君はともかく、他の学生たちの安全面にだけは配慮をしてもらった上で狩りに精を出してくれたまえ」


 そう言って、ギルドマスター直々に励まされ、俺たちは魔物狩りに向かうことになった。

 急な話でよくわからないが、村であれだけ魔物を狩ってもランクが一向に上がらなかったのに、本部のマスターにかかれば一発なんだなと、改めて帝都ってすごいなと思う。


 スケールがデカいよね、やっぱり!!


「おおっ、俺が冒険者に……」

「嘘じゃないわよね?」

「これでAランク冒険者も夢じゃない!?」


「はい、はい、行くよー。行くよー」


 感慨に浸っている暇はないので、さっさと全員を引き連れてギルドを出る。


 昨日の森へ。

 但し、今日はちょっとした情報を得ている。


「ここから北東の方角にたくさんいるみたいだ」


「りょーかい!!」


 ぞろぞろと歩く【紫雲】一行。まるで遠足気分。

 俺とレミを先頭に、昨日狩りを経験したモモエ、ディリカ、カーティスを中央に配置。

 最後尾はリバーとブルートの2人だ。2人なら、何かあっても水魔法と土魔法で足止めする時間が作れるからね。最善の配置だ。


「お、さっそく、あっちに群れがいるよ」


 レミがマスボを観ながら話す。

 マスボに魔物を探知する機能があるわけではなく、彼女のやっていることは、単純に言うと、光魔法と風魔法を駆使してマスボにこの周辺の情報を集めさせているのだそうだ。


 目当てのモンスターの魔石があるとより精密に探索が行えるということで、昨日渡しておいた。よく分からないけどすごい技術だ。


 レミの予告通り、数分歩くと、フガフガ聴こえてきた。


「よし。じゃあ、早速狩りの説明をしていくけど、ここはまず経験者に実演してもらうとしよう。モモエ、ディリカ、カーティス!」


「はいっ!」

「ええ!」

「おう!」


 昨日と違って少し自信のある顔つきの3人が前に出た。

 俺たちの視界には10匹ほどのアイスピッグが屯している。


「今日は昨日の応用編だ。1人3~4匹アイスピッグを倒してくれ」


「「「はい!」」」


「但し、ルールを設ける」


「「「!!!」」」


 顔つきは変わったが驚いてはいないみたい。

 昨日でどうやら俺のやり方に耐性が付いたようだ。


「ルールは1人一匹ずつ倒すこと。一匹ずつそれぞれが違う属性の魔法を用いた方法で倒すこと。それだけ。互いにどの属性の魔法を使うかを相談する時間を10秒あげよう」


「「「10秒っ!?」」」


「それではどーぞ!」


 俺はカウントを始める。慌ててはいたが、やはり耐性ができているのだろう。

 10秒の間に、3人はそれぞれの持ち場を確認し合った。

 それをみていた他のメンバーたちの方が慌てている様子だった。


「他のメンバーも1日でこうなってもらうからな!?お手本を見せてもらっている間に、ちゃんと自分だったらどうするかをイメージしていてくれよ」


「「「「「はいっ」」」」」


「こうなってもらう」が、実際に現状どうなっているのかは俺にもわからない。

 だが、経験則で彼らが昨日よりも断然成長していることには確信がある。

 初めて魔法で魔物を倒した時の感触は、生まれて初めて魔法を使った時のものに勝るとも劣らず今も記憶に残っている。

 倒したその日はなかなか寝付けずに、いつまでも戦いのイメージをするものだ。

 次はどうやって倒そう?この方法はどうだろう?ってね。


「はい。じゃあ、初めて!」


「「「はいっ(おうっ)!」」」


 3人がそれぞれ別の場所へと駆け出した。


「魔物と戦う時の注意事項その1!モモエ」


「はいっ!相手の動きを予測し攻撃を受けないような配置に着きます」


 モモエはそう言って、土魔法を唱える。

 おおっ!見事にアイスピッグ1体を1mほどの土の壁が囲む。


「その2!ディリカ」


「はいっ!防御は最大の攻撃。相手の攻撃を防ぐことを第一としながら、同時に攻撃する手を考える、でしょ!?」


 ディリカは、今日は武器を携帯している。竿のように長い棒で先端が金属のようだ。

 彼女が『ファイア』を放つと、火は棒の先端に纏わり付き、松明のようになる。

 その棒でアイスピッグの鼻にジュッと……熱そう!

 アイスピッグはピギピギ呻いている。


「その3!カーティス」


「おうっ!最も効率の良い倒し方は何か?を常に考えながら戦う、だ!」


 カーティスは制服のポケットから何かを取り出して、アイスピッグに投げつけた。

 風魔法によって、その何かがアイスピッグに突き刺さる……あれは、釘だ。

 釘がアイスピッグの目に当たり、視界を完全に奪った。やるな、さすが大工の息子!


「正解!では今の君たちが一番に心がけるべき大事なことは?」


「「「発動時にしっかりと集中し、正確に魔法を行使する!!」」」


「よし。あとは……今日は1対1じゃないから周りにも目配りしながら戦うこと」


「「「はいっ(おうっ)!」」」


 モモエは土の壁をさらに固めて身動きを取れなくしたあと、水魔法を上から流し込み土で蓋をした。結構むごい倒し方。アイスピッグは下手したら自分の魔法で氷漬けになるし、そうでなければ、水によって窒息死だ。


 ディリカは、火の棒で相手の注意を先端に向けつつ、ファイアを何発か当てて丸焼き。

 水魔法での消火も忘れない。こっちはこんがりと程よく焼けて美味そう。昼ご飯はこれにするかな。


 カーティスは視力を奪ったアイスピッグに今度は大きめの石を投げつけ風魔法で速度を速める。石が頭に当たり、脳震盪を起こしたアイスピッグの首元に今度はナイフ。

 小道具が多いけれど、まあ合格点だな。


「す、すご……」

「や、やるなぁ……」

「でも、あれってありなの?」


 所々から聞こえる声。


「ありだよ!昨日あの3人は君らとまったく同じ感想や疑問を抱いていたよ。けど1日であの通り!たった1日でね……」


「お、俺たちもできるってことか……!」


「ああ。今からイメージしておくんだ。自分ならどうやって倒すのかって」


「けど、あんな道具持ってきていないよ……」


「この森にあるものならなんでも使えるだろ?」


「白魔法でどうやって倒せば……」


「『ライト』、『プロテクト』、『グルー』で何とか倒せるかな」


「え?」


 俺は白いフード付きのローブを制服の下に着込んだ女子学生に木の枝を渡す。

 この子はミスティ。レミやモモエとよくいる『白魔導師』の女の子だ。


「『ライト』で相手の視界を奪う。木の枝に『プロテクト』を掛けて堅くする。土を『グルー』で粘着質にする。確かに幅は狭いけど、工夫をすれば攻撃に転用できるよ」


「そ、そうか……相手の視界と足場を奪って泥を飲ませれば」


「そうそう。そういう柔軟な発想で行けることもある」


 とはいえ、正直『白魔導師』だとかなり厳しいけど。

 ものを固める『プロテクト』と逆に泥状の粘性あるものに変える『グルー』という2つの魔法が何となく攻略の糸口にはなりそうだと思っただけだ。


「あとは、相手の攻撃を利用することだな」


「相手の攻撃……氷のつらら……」


「そうそう。『白魔導師』の真髄は、相手の魔法を受け流したり、軽減したりし、味方を回復すること……だよな!?」


「はい。そう習うわ」


「でも、その先にもう1つ、壁がある。それは、相手の攻撃を受け流すのではなく、はね返すんだ……」


「はね……返す?」


「そう。『ライト』、『プロテクト』、『グルー』の3つの魔法はその足掛かりになる魔法だと俺は思っている。これからちょっと実践してみようか?」


 俺は周囲を見回した。

 アイスピッグが1匹、2匹、3匹……10匹全部すでに倒されたあとだった。


「やりましたっ!ノーウェさん」


「どう?昨日よりもずっとスムーズになったでしょ!?」


「ふん。これぐらい何てことないさ!」


 モモエ、ディリカ、カーティスの3人が涼しげな顔をこちらに向けた。


 ……


 ……ごめん、最初の1匹以外、全然見ていなかった……


ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。

もしこの物語を面白い!と気に入っていただけたら、どうか、いいね、評価、ブクマ登録をよろしくお願いいたします。今後の執筆の励みになります。


ノーウェと仲間たち(とブルート)の活躍に乞うご期待!


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