6-103『裏返し』
◇「中央の玉座」<ノーウェ視点>◇
うーむ……
なかなか良いイメージが湧かない。
装飾の話じゃないよ。
魔法と戦術の話だ。
「『爆奏網土』」
「『ハイウインドースプラッシュ』」
ボアンッ、ボアンッ、ボアンッ、ボアンッ……!
ボンパパッ、ボンパパッ……!!
ビュー……シュパパパパパ……!
最初、グレイ君の時間差『炎』に囲まれたおかげで、内職していた『ジェリーマジック』をだいぶ消費してしまった。
補充しないとな……
一緒にいる黒ライオンも、最初の威勢こそ良かったわりには、今は、やたら慎重にこちらとの射程距離を測っているようだ。
ひょっとしたら、以前に「土輪布山泊」でこちらが使った『ボイスバッグ』を警戒しているのかもしれないね。
……今回の決闘で使う予定はないんだけどな。
あれ使ったら、あんた「瞬殺」じゃん……?
それじゃあ、つまらないだろう?
とにかく、互いに距離感を掴むための慎重な立ち上がり……
この1年を通して分かったことは、ハイレベルな決闘になればなるほど、皆、この作業を丁寧に行なっているということだ。
さらに、超ハイレベルのイクス先輩や<最強軍閥連合>の最強格2人だとまた違う感じなのかもしれないけどね。
「『色彩連破』」
「『ハイファイア』−『マジックボム』」
ボボボボボボボボボボアー……ボガーーーン!!
グレイ君の「保存」した属性魔法もいくつも揃えると見た目に綺麗だね。
いくつもの違った色の魔法が次々と発動しているよ。
装飾美としては、俺の『ジェリーマジック』には負けるけどね!
まあ、そういう意味では、俺が対峙しているこの2人もまた、ハイレベルな魔導師ということなんだろう。
猛獣が獲物を狙うように殺気走っていながらも、こちらを品定めするかのような目と、豪快で荒削りなようでいて細部にまで気を払っているのが伺える魔法がそれを示している。
気に食わない魔法だけどな……
それに、なんとなくまだ物足りない。
……こんなものか?
一方で、虎視眈々とこちらの魔法の発動を伺うような冷静で狡猾な魔導師の目もこちらに向けられている。
その2つの監視に気を取られた隙に、『灰魔導師』グレイ=ゾーエンスの生み出す時間差のトリックが相手の虚を突き、その判断を狂わせ、2人と戦っているはずがいつの間にか3人にも4人にもなっているように錯覚し、後手後手に回ってしまう……
ガイル先輩たちが敗れた原因はそんな感じだった。
シュー……パラパラパラパラ……ボンッ、ボンッ、ボンッ!!
ボボボボボボボボボボアー!
なるほど……
すでに放っていた黒ライオンの『風の炸裂玉』をグレイ君が『氷』でコーティングし、時間差を作ったというわけね。
まあ、こっちも、浮かしておいた『ジェリーマジック』で対抗するだけだ。
事前に仕込んでおいた装飾代わりの『ジェリーマジック』による時間差と距離感で彼らの戦法に対抗しているというのが現在ってわけ。
対抗策としては万全のはずだけど……
それでもまだ、なんとなく気に入らない。
技の読み合いの中で、どこかに意識のズレがある……のを感じる。
俺の魔導師としての本能がそれを伝えている。
頭で考えていても辻褄が合わない。
……
…………
………………
……つまり、何かがおかしい。
……それは何だ?
相手はこの戦法を以前の決闘で用いており、観戦していた俺に見せていたわけだから、いくら立ち上がりとはいえ、敢えて何度も単調なリズムで続ける理由があるか?
考えられる理由は2つ。
相手がこちらの手を警戒している。
逆に、向こうが別の手を隠し持っている。
そのどちらかだろうな……
少し揺さぶってみるとするか……
「なんか、散々イキっている割には怖くて踏み込めないみたいだね。臆病者の黒ライオンは……」
「ああっ!?てめえっ!!」
ドスドスと足音を鳴らして近づく黒ライオン。
「あからさまな挑発に乗るなよ、腐れライオン!」
「グガッ」
黒ライオンは緑と黒のチェック柄のローブの襟部分を後ろから引っ張られてうめき声を上げた。
「『ファイア』」
ボバンッ!!
床に仕込んでいた透明な『ジェリーマジック』がグレイ君が探りを入れるために放った『火の玉』によって引火した。
……ちっ、気づいていたか。
こっそり仕込んで地面に並べている透明な『ジェリーマジック』に。
なかなかやるね、グレイ君。
「チッ……」
「このテの相手は、威力任せの魔導師と違って、舐めて掛かると翻弄されるって言っただろうが」
「分かっているよ。うるせえなっ!」
……なんというか、意外な関係性だ。
猛獣に付けたリードをグレイ君が引いている印象。
実際引っ張ったのはリードでなくローブだけど!
「言葉で相手を牽制しつつ、裏でいくつも罠を仕込む……それが君の基本的な決闘スタイルだ。そうだろ?ノーウェ=ホーム」
「まあね」
それを知っているということは、彼もまたそれができる魔導師ということだ。
油断ならないね。
俺が警戒しているのは、彼の方なのかな……?
いや、それもまた、なんとなく違う気がする。
「ひょっとして、俺は焦らされているのかな?」
違うアプローチを試みる。
「くくくっ、どうかな?どちらにせよ、そんなすぐには決めないさ。ノーウェ=ホーム!君はじっくりと甚振りながら倒すよ。なあ、そうだろ?腐れライオン」
「へっ、そうだな。お前はたっぷりと俺の魔法で甚振ってから八つ裂きにしてやる!」
……んまー、性格の捻じ曲がっていること!
「それじゃ、こっちから遠慮なく行くかね。『フロート』、『ハイウインド』」
挑発に掛からないなら、こちらが手を出すしかないよね。
「『フロート』解除……」
さあ、透明な『ジェリーマジック』よ、向かえ!
『風』でいろんな属性の『ジェリーマジック』玉を送るよ。
「腐れライオン!」
「分かってるよ!『爆音気』」
ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ……
ボボボボボバァーーーーーーン!!
……気づいたか。
じゃあ、合わせ技はどうかな?
「『フロート』、『ハイウインド』」
「『フロート』解除、『フロート解除』」
こちらも時間差で攻撃しようか……
ビューーーー……!
まず、見えている何色もの『ゼリー玉』が向かう。
「くっ、『色彩連破』」
ボボボボボボボボボボバァーーーンッ!
それは当然防がれるが……
『フロート(解除)』によって、時間差であとからスタートした『透明玉』がすぐに向かうよん。
「腐れライオン」
「ちっ、見えねえってのは厄介だな!畜生!『爆奏網土』」
ボアンッ、ボアンッ、ボアンッ、ボアンッ……!
ボンパパッ、ボンパパッ……!!
……相殺された。
これも防げるのは分かっているよ。
「『フロート解除』、『ローリン』」
「『ハイウインド』、『フロート解除』」
今度は、送る方の魔法の種類と順番を変えてみる。
「3度目……?くっ、『色彩連破』」
ボボボボボボボボボボバァーーーンッ!
いや、4度目だよ。
その前に透明な方をあんたらの足元まで『ローリン』で転がしておいたからね。
ボボボボボ……
「「ぐあっ」」
2人の足に『火』が付く。
「ちいっ、『ハイウォーター』」
グレイ君が咄嗟に大きな『雨』を自分たちに降らせて『火』を消した。
まだ、読めない……
依然、奥の手を隠し持っている気がする……
それじゃあ、こちらも1人じゃきついからね。
《《援軍》》を呼ぼうか……
「『ダークエレメント』」
―ケケケ……キャッキャ―
かわいい『闇の精霊』だ。
「ハイウォーターースプラッシュ』、『れんぞくま』」
ブバッシャーーー……シュパパパパパ!!
「なんだ!?『水』?」
「ちぃっ、『闇魔法』だ!『色彩連破』」
ボボボボボボボボボボバァーーーンッ!
いくら事前に上空に魔法を浮かせて準備していたとしても、初動が遅れれれば、 全部は防げないだろう。
ちょっと判断が遅れたね。
コンビプレーの欠点でもある。
俺の相棒の『闇の精霊』が付与した、『闇』に染まった『水の散弾』のいくつかが2人の身体に着弾した。
「ちっ、このクソガァ!」
黒ライオンが魔力を練り始めた。
……大技か?
「ヒャッハー、面白いことになってんな」
ん?
飛び入り参加?
「『炎海分張』」
ボボボンッ!!
ボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボアー……
周囲を陣幕のように炎が取り囲んだ……!
いきなりなんですか?
『ウォーター-マジックボム』。
とりあえず、『火』は消えて。
ボボボボボボボボボボガーーーーーーーーーーン!
あーあ、盛大に誘引されちゃったよ。
せっかく、頑張って内職していたのに……
「え、『焔海』!?」
黒ライオンとグレイ君のやや後ろの上空から赤髪を逆立てた『焔海』パージ先輩が飛んできた。
「てめぇ、『焔海』!なんのつもりだ、コラァ!」
「お前らがここであっさりやられたら俺たちが不利になんだろうが。もっと真剣にノーウェ=ホームを押さえてろよな『炎塊気威射』」
ボボボボボボボボボボ……ボンッ、ボンッ、ボンッ!!
おうおう、『殿上人』級3人が相手かよ!?
なかなか、きついな……
『炎の槍』のようなものが3本飛んできた。
「『王流渦雷』」
ドリュンッ、ドリュリュリュリューー……ザッバーーン!!
俺の後ろからは、勢いよく放たれた『水鯱』と、『雲』を足に纏って空中をスイスイ滑るポンコツがやって来た。
『炎』の攻撃を『水鯱』が相殺する。
「お勤めご苦労、ポンコツ!」
「うるせー、お前の援護じゃねーよ、アホノーウェ!『雲海』」
モクモクモクモク……
モクモクモクモク……
モクモクモクモク……
モクモクモクモク……
上空を暑い雲が覆っていく……
「ハッ、ちょっとこっちで楽しもうと思っていたのによ。お前、せっかちな奴だな、カシウの弟!」
「俺も混じりたかっただけですよ!」
上空で言い合う『焔海』とポンコツ……
「うるせえっ、お前ら!俺の上に立つんじゃねぇっ!消え去れや『爆音間風羅』」
ボバンッ、ボバババババババババババババ……!!
2人の浮いている上空に向かって、周囲の『風』の爆発が起こる……
「おっと、『雲足八奔』」
ポンッ、ポンッ、ポンッ、ポンッ……
ポンッ、ポンッ、ポンッ、ポンッ……
「ハッ、癇癪起こすなよな。『炎海脚』」
ボババババババーーー!
あっという間に対決場所を変えて東の方に向かうブルートと『焔海』。
まあ、健闘を祈る。
「オラッ、今だよ坊ちゃん!」
……おっと、一瞬気を取られた。
まずいな、『マイティハート』……
「分かっているよ!『不発魔再着火』」
シュー、シュー、シュー、シュー……
コロコロコロコロコロコロ……
……なるほど。
意趣返しってわけね。
さっき俺が放った「透明な『ゼリー玉』転がし」……!
『音爆』がやみくもに放ったかに思われた無差別の包囲散弾『風』爆発は、実はグレイ君が、手っ取り早く『加工』するための「布石」だったというわけだ。
そして、何かしらの作戦の合図……
導き出される答えは……?
うむ、ようやく、読めてきた。
完全に、先手を取られたが致し方ない。
いずれ、すべて裏返そう。
「『ハイウォーター(散弾)−マジックボム』(融合)」
シュパパパパパ……シュパパパパパ……
ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ……
グレイ君の『不発魔』が時限で再爆発する前に、『マジックボム』の散弾で限りなく分解する。
「布石」だと分かっていてもね……
「くくくっ、掛かったな、ノーウェ=ホーム!」
「バカめ。俺たちは『囮』だったんだよ、オラァ、逝けや!」
愉快そうに笑う2人……
……知っている。
「『飛雷針』」
ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ……
……さっき、もう読めたって言っただろう?
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ……!!
突如、上空から『雲』を割いて、『雷の針』が飛んで来て……
……俺の全身を貫いた。
ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。
もしこの物語を面白い!と気に入っていただけたら、どうか、いいね、評価、ブクマ登録をよろしくお願いいたします。今後の執筆の励みになります。
ノーウェ危うし……?
う、うーん……!?(^_^;)(笑)
次回、反撃と制裁……!
恐怖のノーウェ=ホーム劇場!
ノーウェと仲間たち(とブルート)の活躍に乞うご期待!




