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6-102『総参謀』

◇「南西側の『玉座』<最強軍閥連合>」<レオ視点>◇


 決闘開始から5分が近付き、事態が一気に動き始めていた。


 <無法者連合>のノーウェ=ホームが先手を取り、<最強軍閥連合>と<五騎当千連合>がそれに呼応するかのようにそれぞれの手を打ったことで、状況が目まぐるしく変化していく。


 <最強軍閥連合>のとった策は2方面攻撃。


 中央にある「金の玉座」には、特殊キワモノ部隊である『蛙井引あいいん』のケインと『合蝶雲がっちょうん』のタニクを送り込み、ノーウェ=ホームを牽制しつつ、チーム内最高戦力である『光厳』と『焔海』を別方面に侵攻させた。


 周囲からすれば、「最弱」と「最強」と思われている2つのコンビを2方面に向かわせる奇策。


 『光厳』メーネス=アンフェと『焔海』パージ=ジョートーが向かったのは北側<無法者連合>本陣。


 しかし、これも牽制であり、<無法者連合>の部隊を一時的に彼らの「本陣」に釘付けにしつつ、別の<連合>の行動を待つ狙いがあった。


 <最強軍閥連合>の「総参謀」レオ=ナイダスとしては、総合力の高い<無法者連合>の勢いを警戒しつつも、もう一方の「最強」が次の手に移る時間を作り出したのであった。


 かくして、<五騎当千連合>がいよいよ動きだしたところで、「偵察役」に扮していたこちらの最強格2人も一気に次の行動に移る。


 「五騎」……『迅雷』、『音爆』、『涙雨』、『火吹』、『灰魔導師』の5人が本陣から離れたところで、彼らの本陣に残る8人を、『光厳』と『焔海』の2人が強襲。


 弱肉強食……弱き者は戦場において立っていることすらも許されない。

 そんな自然の理。


 それは、この最強を決める一大決戦においても当てはまる論理であり、レオは、まず敵陣の中で最も弱い者たちを最初の5分で排除するという、ごくシンプルな作戦を採用するに至った。


「決まりましたね。レオ殿」


 すっかり「総参謀」に心服している面々の中で『影漏かげろう』シクル=オーバーが代表して頭を下げた。


「ええ、初手は成功です。『五騎』はこれで『流浪の王とその一行』になりました。これより、『南東の玉座』には別働隊が向かう予定です」


「恐れ入りました。まさかあの2人にそのような任務を与えていたとは……」


 空になった<五騎当千連合>の本陣の「玉座」には、『蛙井引あいいん』のケインと『合蝶雲がっちょうん』のタニクが就くことになっている。


「で、ですが、本当にあの2人で大丈夫なのでしょうか?」


 代わって、『水平すいへい』メア=インパスが質問者となる。


 どうやら、幹部たちはこのスタイルが最善と判断したらしい。


 人はあらゆる場面、あらゆる舞台において戦うものであるが、戦場ばかりではなく、会議においてもそれが当てはまる。


 彼らなりにこれが会議の場で「総参謀」と対峙するのにベストな戦術と判断したのだろう。

 それを成長と見るべきか、ただの責任回避行動と見るべきか、なかなか興味深いものだ。


「あの2人だからこそ、『南東の王の座』に収まれるのです」


「「「「「え?」」」」」


 皆、同じ顔で困惑している。


 まだまだ固い。


 これは鍛え甲斐がありそうだ。


「貴方たちは、皆が同じような実力を持った優秀なチームと、総合力では若干劣る、チーム内のメンバー間の実力がまちまちなチームのどちらが強いと思いますか?」


「え?」


「それは……」


「貴方たちであれば、前者と答えるでしょうね。【蘭光】や【炎城桜】はそういった類の、均整の取れた優秀なチームですから」


「「え、ええ」」


 派閥の副将含め、全員怪訝な表情を見せている。


「そして、私の答えは後者です」


「「「「「……っ!?」」」」」


「では、それを踏まえて、質問です。貴方たちの派閥のように、全員が同程度の実力者で並んたチームの場合、仮に誰かを『()()()』にしなければいけなくなったときはどうします?指揮官として迅速な判断ができますか?」


「そ、それは……!?」


 レオは続ける。

 そろそろ講義の時間がなくなってきた。


「あるいは、相手がこちら側の戦術を読む場合、どちらの部隊の方がその行動を読みやすいでしょうか?」


「……っ!?」


 全員実力者が揃えば、たしかに地力で勝る上に、一見やれることが増えるように見える。


 だが、その実、戦術的には限定されることが多い。

 よっぽど、過酷な訓練をくぐり抜けて、感情を殺せるぐらいまでになった「特殊部隊」でないかぎりは……


 彼らが、現在、「道化」に扮してこっそりと作戦を遂行している2人を、若干の侮蔑の感情で見ているように、優秀な人間ほど自身の心情に左右され、戦術面においては使い勝手が悪い者が多い傾向にあるのだ。


「貴方たちもいずれは戦場で采を振るうことがあるかもしれないので覚えておいてください。優秀な者を上手く使える程度では、指揮官としてまだまだ二流です。一流の戦術家は、『()()』を『()()』に変えることができるのですよ」


「……っ!」


 <五騎当千連合>の本陣にいた8人は、『光厳』メーネス=アンフェと『焔海』パージ=ジョートーによる一気呵成の攻撃により、あっという間に壊滅した。


 これにて、作戦は完了。


 ここから『光厳』と『焔海』の2人には、好きに動いていいという「自由手形フリーパス」を与えているので、彼らは勝手気ままに動くだろう。


 2人の最強格によって焦土と化した「南東の玉座」に蛙の格好をした王が腰を下ろし、その横にガチョウの姿をした大臣が並んだ。


 レオの読みでは、ここから15分から20分の間は、あの地は無風地帯となる。


「さて、世間話をしている暇はなくなりました。これから我々の陣も2方面より攻撃を受けるでしょう。まずは、南東から『最強』が来ます。心して守ってくださいね」


「「「「「はっ!」」」」」


 ゆっくりと「三騎」がこちらに向かっている。


 別の「二騎」はこちらの道化が仕掛けて火を付けた策に乗り、すでにノーウェ=ホームと交戦を始めている。


 ここまでは、想定した通りの流れとなっている。


 <五騎当千連合>は指揮官不在のチームだ。


 それはそれで厄介ではあるものの、戦略面でいえば、この<連合>の方針は分かり切っている。


 全員倒せば「玉座」も何も関係ない……


 「流浪の王とその一行」は本気でそう考えており、初めから退路を一切考えていない。


 自分たちの魔導師としての能力に絶対の自信がある者たちだからこそ取れる思い切りの良い戦略であり、怖さはある。

 ……あるにはあるが、「指揮官」としてやりやすくもある。


「『珠雷矢じゅらいや』」


 ヒューーーーン……バリバリバリバリ!


「『岩固逸鉄がんこいってつ』」


 ドドドドドドドド……ガガガガガガガンッ!


「『火吹網能かぶきものう』」


 ボボボボボボボボボボアーーー!!


「『水平直風すいへいちょっぷ』」


 シュルシュルシュルシュル……ザッバーーーーン!!


「『涙雨座魔雨なみだめざまあ』」


 ドプンッ……ゴォーーーーー!!


「『吹愕風穴ふがくふうけつ』」


 ブオンッ、ヒューーーーーーーゴォーーーーーーーー!!


 目まぐるしい展開にふさわしい開戦……


 『雷の矢』が告げたその開始の合図は、互いの技の応酬で一進一退の状況となる。


 相手の「三騎」は『迅雷』、『火吹』、『涙雨』。


 それに対して、こちら側(<最強軍閥連合>)は現在4人。


 『岩塞がんさい』テツ=フォートレー、『水平すいへい』メア=インパス、『風穴ふうけつ』ケヴィン=ブロウ、『地平ちへい』ローラ=ランドールが対応する。


 『火吹』には『水平』が、『涙雨』には『風穴』がそれぞれ対応し『迅雷』には『岩塞がんさい』と『地平ちへい』が2人で抑える。


「『雷切らいきり』」


 ドゴォーーーーーーーーーン!!バリバリバリバリバリ……!!


「『地平扇ちへいせん』」


 ドリュリュリュリュリュパーーーーーーーーーーン!!


 ガガガガガガガ……


「『岩錠がんじょう』」


 ガンッ、ガンッ、ガンッ、ガンッ……バリバリ……


「はっ、なかなかやるねぇ……でも、お前さんたち4人ではたして俺たちを止められるかねぇ」


「じゃあ、()()と行こうか……」


「むっ!!」


 ピュンッ、ピュンッ、ピュンッ、ピュンッ……


「……メーネス」


「さあ、3年間の決着をつけるとしようか、イクス。このまま勝ち逃げはさせないよ『煌足光輪こうそくこうりん』」


 ピュンッ、ピュンッ、ピュンッ、ピュンッ、ピュンッ、ピュンッ、ピュンッ、ピュンッ……

 ピュンッ、ピュンッ、ピュンッ、ピュンッ、ピュンッ、ピュンッ、ピュンッ、ピュンッ……

 ピュンッ、ピュンッ、ピュンッ、ピュンッ、ピュンッ、ピュンッ、ピュンッ、ピュンッ……

 ピュンッ、ピュンッ、ピュンッ、ピュンッ、ピュンッ、ピュンッ、ピュンッ、ピュンッ……


「「イクスッ!?」」


「君との勝負付けは済んだと思っていたけどな……『雷陣羽織らいじんばおり』」


 バリッ、バリバリバリバリッ……バリッ、バリバリバリバリッ……

 バリッ、バリバリバリバリッ……バリッ、バリバリバリバリッ……


 陣を守るように、飛んで来た『光厳』メーネス=アンフェが『迅雷』イクス=トストに向かって猛攻を仕掛ける。


 無数の『光線』がメーネスの足から無数に放たれ、着弾したかに見えたが、衣のようにイクスを纏う『雷』が『光』を直前で弾き飛ばす。


 眩い『閃光』と激しい『轟音』が、1つの巨大な『衝突』となって舞台中に響いた。


「はっ、『火吹焼射かぶきやくしゃ』」


 ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ……

 ボボボボボボボボボボボボボボ……


「『舞涙《まいティア―》』」


 ビュパパパパパパパパパパパパパパ……


「おっと、あんたらの相手は俺たちだぜ『岩固逸鉄がんこいってつ』」


 ドガガガガガガガガガガガガガ……!!


 戦場を少しずつ南東へと移しながら、『光厳』メーネス=アンフェと『迅雷』イクス=トストの頂上決戦、そしてその側近である者たちの4対2の争いが激化していく。


「さて、今度は貴方の番ですよ。『影漏かげろう』さん」


「はっ、このシクル、必ずや<無法者>の幹部共を仕留めて参ります」


 『影漏かげろう』シクル=オーバー、『流氷りゅうひょう』ウィリー=ジョー、『順風じゅんぷう』ゼファー=オーロンの3人が北側にゆっくりと向かっていく。


 ここまで、先手、先手と駒を進めることはできているが、ここから相手はどのような動きに出るか。


 「総参謀」レオ=ナイダスがその棋戦を仕掛けている男は、<無法者連合>の「総参謀」リバー=ノセック。


 序盤の棋戦は、レオが取っているが、相手もこのままということはないだろう。


 ・南東の「玉座」を取りに行く……

 ・中央のノーウェ=ホームの救援に行く……

 ・南西のこちらの進軍に対抗する……

 ・北の本陣で防衛策を取り続ける……


 選択肢は与えている。

 さて、リバー=ノセックはどのように駒を進めていくか……


 レオ=ナイダスは北側の「玉座」のある方を向いてニヤリと笑った。


「レオ、僕の出番はいつ回ってくるんだい?」


 1人愉悦に浸るレオ=ナイダスの隣に、同じ派閥の同級生『情冷炎』スコーン=ナバスが並んだ。


「貴方は……現時点ではこの『玉座』を守る役ですよ、スコーン」


 レオは同級生に向かって「玉座」を指差した。


「ふっ、()()()()というわけかい」


「まあ、そうですね。状況次第で貴方を投入する場所を決めます。それまではゆっくり座って待っていてください」


「分かった……」


 ピキピキピキピキピキ……


 そう言うと、自称秘密兵器のスコーンは、「銀の玉座」を凍らせながら、その座に着いた。


◇「北側の玉座<無法者連合本陣><リバー視点>」◇


 5分経過……


「リバー、予定通り動いていいか?」


「ええ」


 ここまで、「総大将」のノーウェが中央に向かった以外では特に動きを見せていなかった<無法者連合>。


 敵の両<連合>の動きが明確になったところで、いよいよ「攻撃部隊」が動こうとしていた。


 そのような状況下で「総参謀」リバー=ノセックは、その脳内をフル回転で加速させていた。


 敵も然る者……


 「最大戦力」と「囮役」を利用した電撃作戦であっという間に先手を奪っていった。


 現在は、南東にある元<「五騎当千連合>の支配していた「玉座」に楔を打たれた形。


 ここを攻めに行けば、こちらの守りが手薄になるし、放っておけば、「玉座」1つ分ビハインドの苦しい状況で戦局を進めて行かなければいかなくなる。


 その「玉座」を守る者が、それなりに「強者」であるのならば、敵の戦力を削ぐという意味においても付加価値を得られるというものだが、かつて自分たち【紫雲】が「派閥間決闘」において破った相手だというのがまたいやらしい……


 早々に倒したところで、今度はその「玉座」を守ることを考えなければいけなくなる。


 リバーは、常に冷静かつ明晰なその頭をめずらしく悩ませていた。


 そもそも、決闘において、先手を取られたこと自体がほとんど初めての感覚である。


「ノーウェの方には行かなくてもいいんだな?」


「ええ。ノーウェは何か周囲を巻き込みたくないような準備をしているみたいなので、必要はありませんが……そこも、状況に応じて『勝手に』お任せします」


「分かった……じゃあ、俺たちは行くぞ!?」


「お願いします」


 先手を取られたのは仕方ない。

 相手の「駒」の使い方が鮮やか過ぎた。


 同じことをやろうとしても、リバーたちではあの短時間に<五騎当千連合>の本陣をあのように壊滅させることは不可能だろう。

 圧倒的火力を誇る<最強軍閥連合>だからこそ為し得たことだ。


 そう言い聞かせるしかない。


「よし、じゃあ行こう、みんな!」


「大将、今回の『雲』の発動は気を引き締めてな」


「分かっとるわ!いちいち思い出させんなっ!」


「引き締めるのは、気だけじゃないけどな……」


「う、うるさいっ!」


 軽口をいい合いながら飛び立つ「三勇士」。


「さて、バラン様、私たちも行きますよ。付いてきてください」


「いや、それ、我の台詞だから!」


 続いて、地上から向かうバラン&コナースコンビ。


 勝手気ままに戦場に向かう「攻撃部隊」を見送りながらも、リバーは、その頭の中で高速にいくつかの方策のシミュレーションをしていく。


 ……正直、どれも読まれている。

 単に敵の策が鮮やかなだけではない。

 こちらが……いや、他ならぬリバー自身の思考が相手に見透かされているのだ。


 ノーウェやブルートが皆をガンガン引っ張り、前へ前へと進む推進力になる分、リバーが慎重に後ろに舵取りをする。


 それが【紫雲】のスタイルだ。


 そして、それが読まれている……


 ……

 …………

 ………………


 ……悪いイメージが頭に浮かび、その額に汗が伝った。


「わっふっふ、リバー殿。いけませんぞ。考え過ぎは」


「レヴェック……」


 額の汗を瞬時にハンカチで拭い、顎に手を置いたリバーの隣に、副参謀的な役割に就いているレヴェックが並んだ。


「リバー殿。ここは私たちにお任せを」


「コト様……」


 同じく、参謀のコト=シラベがリバーの背中を押す。


 リバーは、ふっと息を吐いて思考を巡らせた。


 ……

 …………

 ………………


 相手がこちらのすべての策を読んでいるのであれば……


「ふふっ、私は、()()()()()()()というわけですか」


 リバーは少々皮肉的な物言いでニヤリと笑った。


()()()()()()()……ですよ。リバー殿」


「はっはっは、然り!」


 2人の「参謀」は親指をぐっと立てた。


 リバーは、2人を見て微笑み返す。


「分かりました。これより、このリバー=ノセック、『流浪の魔導師』となります」


 2人の進言に従って、1度「理」から外れれみてみれば、新たに見えてくるものもあるかもしれない……


「うふふ、リバー殿にはここまで、いつもどっしりと私たちを守ってもらいましたもの。今度は私たちがお返しする番ですわ」


「お願い致します、クレハ様」


「ここは偉大なるブランク聖王に任せるのだ!!」


「承知しました。貴方たちにも期待していますよ、ミスティ、それにモモエ」


「は、はい!」


「任されよ!!」


 ふっと肩の荷が降りた気がしたリバーは、舞台全体を俯瞰するように見回した。


 さて、どこから攻めに行くか……


 今なら選び放題……


 ……自由だ。


 1度、振り返る。


「それでは、ブランク聖王。このリバー=ノセック。ここでお暇させていただきます」


 固まったままの王は、わずかにその腕を上げて親指を立てた。


「では、これにて御免」


 1礼して再度戦場に向き直る。


「総参謀」改め「流浪の魔導師」リバー=ノセックは、舞台中央に向かってゆっくりと歩き出した……!

ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。

もしこの物語を面白い!と気に入っていただけたら、どうか、いいね、評価、ブクマ登録をよろしくお願いいたします。今後の執筆の励みになります。


棋戦敗北……なのか?

リバーの目的は……?


次回、ノーウェVS最狂コンビ!

敵の秘策……とは?


ノーウェと仲間たち(とブルート)の活躍に乞うご期待!


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