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6-87『悪魔の交代策』

 8分経過……


◇「ドーム」外、『土台』上<ノーウェ視点>◇


 もうすぐ2回目の属性転換。

『雪(氷)』から『強風』に変わるタイミング。


 「三勇士」の動きは予想どおりというか、あいつらならそれぐらいやるだろ、と思っていたから上々の立ち上がりだ。


 一方の「アンバスターズ」たちもまた、見事な立ち回りだった。


 『雨』と『雪』というのは、常に視界に自然物が入る状況だから彼女たちと相性が良い属性だ。


 相手が指揮官不在の幹部連中の集まりであったのも大きい。


 優秀な指揮官があの場にいれば、「アンバスターズ」が守備戦術や撹乱戦術をとった場合、一筋縄ではいかない集団だということにすぐに気づいただろうに、ここまでの彼らは烏合の衆に成り下がっている。


 それ以前に、単純に彼女たちの実力を舐めていたってことも大きいね。


 ここからは、彼ら敵幹部たちがいつ問題に気づき、誰がイニシアチブを取って改善するか、ということに尽きるだろうけど、こちらは、当然、そう簡単に立て直すことはさせないよ。


「準備はよろしいですか?」


「はっ!お任せください。リバー殿、ノーウェ殿」


 第2陣として入るのは、以下の7人……


「真正飛行部隊」:

【泥魔沼】

『飛燕』コト=シラベ(隊長)

瑞風蘭ずいふうらん』ヤチヨ、

蒐螺波しゅらば』ローズ=ピオニー

風沸矢かふし』レーネ=ボイル

川翔陽かわしょうよう』ミライ=ラフスカ

【火鳥風】

風実取かざみどり』ハービー=キュリアス

東風亀こちかめ』ボリス=リョーツ


 ……コト先輩を筆頭に、『風』のエキスパートたちだ。

 元々、「第1ラウンド」ではハリーを隊長にしていたが、今回はさらにメンバーを増やし、隊長を『風』のエキスパートであるコト先輩に据えたから、「真正飛行隊」だな、いうなれば……!


 次の『強風』の環境下で存分に力を振るってもらう。


 『強風』の中で飛ぶのは本来なら難しいんだけどね。

 そのために彼女たちはこの3日間、みっちりと訓練をしてきた。


 「擬似DOOM」だとどうしても試作品段階のものなので、そこは俺やブランクたち「黒魔導師軍団」が協力して、さらに進化した、相応の環境を用意してあげたんだ。


「皆、思い出せ!この地獄の3日間を!今から入るこの『ドーム』はアレ以上の環境か?」


 何やら檄を飛ばしているコト先輩……


「「「「「否!」」」」」


 応える隊員たち……

 皆、何かを思い出したように苦悶の表情を浮かべている。


 ……おかしいな。


「中にいる敵にワイバーンの大群級のバケモンはいるかーー?」


「「「「「否っ!!」」」」」


 気合の入り方はいいんだが、話している内容がおかしい。


「この中の環境に、あの悪魔の所業、『避けないとフェザータッチ地獄』よりも酷いものはあるかあーーーー!?」


「ノーーーーー!!」


 ……うむ。

 気合乗りもバッチリだし、ここは信頼して彼女たちを見送るとしよう。


 9分が経過した……


「おおっと、ここで<無法者連合>に動きがあるぞーーー!吹雪の中、なんと、7人が一挙に交代だーーーー」


 「ドーム」内にいるトルナ先生によるアナウンス。

 拡声の魔道具を通じて会場全体に伝わってんだね。

 中継用も置かれている?

 あ、そうなのね……


「行くぞーーーー!」


「「「「「おーーーーー!!」」」」」


 『雪(氷)』の残り時間あと1分のところで、「アンバスターズ」と「真正飛行隊」が交代で入れ替わった。


「お疲れさま」


「お疲れ様でした」


「「「「「寒かった~!」」」」」


 俺とリバーで「アンバスターズ」の全員を出迎えてハイタッチをしていく。


 中は今『吹雪』だ。

 そりゃ、寒いだろう。


 いくら、『温かい空気』を魔法で纏ったとしても……ね。


 交代した彼女たちですらそうなんだから、中にいる人たちは言うまでもない。


 『雨』と『雪』によって芯から冷え切った身体に今度は『強風』が襲う。


 そのあと、急に『猛暑』になって、しまいには『砂嵐』だ。


 誰がこの順番にしたんだか分からないけど、考えられるかぎりで最悪の並びにしてくれたもんだ。


 おかげで、こちらが決闘を有利に運べることになったけどね。

 ご愁傷さま。


「みんなー、気合いは入っているかぁー!?」


「「「「「おー!」」」」」


 『土台』には次の交代メンバーがすでに集まっている。


 『火樽真』イッチャ=イマースを隊長とする「猛火突撃隊」だ。


 そのメンバー構成は……


「猛火突撃隊」

【泥魔沼】

火樽真ひだるま』イッチャ=イマース(隊長)

光火斜こうかしゃ』アカリ=トモス

火矛威かむい』コロネ

帯平烙たいへいらく』ベラ=デルバール

【火鳥風】

灯線墓とうせんぼ』コージ=フクロ

燃照蛍ねんしょうけい』シキ=アミーノ


 ……の6人。


 次の『猛暑』に切り替わるタイミングで、今入った「真正飛行隊」の、コト先輩を除く6人のメンバーたちと交代で入り、『火の玉』による猛攻撃を仕掛ける予定だ。


 その次にはコナース君たち『土』の魔導師軍団「バラン仕置隊」が控え、さらには、『水』の「水月隊」、『氷』の「氷華隊」と続いて、他にも「黒魔導師軍団」や「マッスルブラザーズ」がまだかまだかと順番待ちしている状態だ。


 この決闘、全員出るつもりだからね。

 『環境』が変わる度にメンバーも代わるよ。


 えっ、俺とリバー?


 俺たちは「三勇士」次第だな。

 あいつらがどうなるかによるけれど、まあ、出番がなければないで<連合>としては良い結果と言えるだろうから。


 クレハ先輩は、ハリーの代役として、「マッスルブラザーズ」の隊長を務める予定だ。


「マッスル、マッスルー!」


「え、ええと、まっする、まっする?」


「ちがーうデス!マッスル、マッスルー!」


 ……隊長代理なのに、隊員から掛け声とポーズの厳しい指導を受けているのデス。


 ……かわいそうに。


「ところで、リバー」


「なんでしょうか?」


 俺には決闘そっちのけで気になっていることがある。


「思い出せ、あの『土輪布山泊』第5層を軽く超える灼熱の地獄を!この3日間、みんなはどんな思いをしたー?」


「「僕たちー」」」


「「「私たちはー」」」


「「「「「死ぬ思いをしましたー!」」」」」


 声を張り上げる「猛火突撃隊」のイッチャ隊長とメンバーたち……


「あの伝説の『大怪物』マグマガルダを超える者はいたかー?」


「「僕たちー」」


「「「私たちはー」」」


「「「「「悪魔を見ましたー!!」」」」」


 決闘に参戦する前に気合いを入れるのはいいんだけど、言っていることがだいぶおかしいんだよね……


 ほら?

 今は、中継のために撮影用魔道具をそこら中に設置しているわけじゃん?

 ここの声も、ぜんぶ拾われてしまうのよ……

 ちょっと外聞が悪いというか、なんというか……さ?


 しかも、なんか「卒業式」みたいになってるし……!


 卒業にはまだ早いんよ。

 絶対に逃がさんよ?


「ははは、魔帝国の訓練よりも厳しいものがあるとは思わなかったなあ」


「「「「「そーですね!」」」」」


「『地獄の合宿』に参加しなかったバラン様には、相応のお仕置きが必要ですねえ」


「「「「「そーですね!!」」」」」


「協力して、くれるかな?」


「「「「「いいともー!!」」」」」


 こ、コナース君まで……


 それと、「バラン仕置隊」ってそういう意味だったの?


「なあ、リバー……」


「はい」


「『合宿』……そんなにきつかったか?」


 俺は声を張り上げる交代メンバーたちを見ながら、遠い目をしているリバーに聞いた……


「そうですね……控えめに言って、『地獄』であったかと」


「……そうか」


 ……

 …………

 ………………


 ……ま、まあ、「地獄」ならまだいいかな。


 「極楽」に比べてまだ「生の実感」がありそうだし……


 ◇「北側<無法者連合>本陣」<<2年生『殿上人』連合>幹部たち視点>◇


 <<2年生『殿上人』連合>幹部陣営>

 【針木】

 『潤羽じゅんぱ』ミランダ=ヨー

 『灼情しゃくじょう』ジェニファー=アルバ

 『凍白とうはく』シャロン=アイサー

 『土莱どらい』オーランド=ローレンス、

 【陰忌那】

 『霜刃しもば』ショーン=シャンク

 『巨霧きょむ』マイル=グリーン

 『翔遠しょうえん』ウィル=グッドハンティング


 こんなはずでは……


 積もる『雪』の上に点々と転がる大小様々な丸い玉。

 散乱する『雪玉』を見て惨憺さんたんたる思いに駆られる幹部たち……


 逃げ切った敵の背を見ながら彼らが思うのは、ここまでの約10分間は一体なんだったのだろうか、という疑問であった。


「骨折り損のくたびれ儲け」という言葉が、現在の彼らの置かれた状況ほどあてはまるものも、なかなかない。


 徒労に終わったあとの疲労感が『雨』に濡れ、『雪』に降られた1人1人のローブに重くのしかかる。

 メンバー内の1人『灼情しゃくじょう』ジェニファー=アルバの『火魔法』によって暖はとっていることで、体力の消費は最小限に抑えられてはいるものの、ここまで、敵を倒すために費やした魔力が戻ってくるわけではない。


 精神的な疲労はより大きい。


 実力的に自分たちの方が確実に上回っていたはずなのに、相手メンバーのただ1人も仕留めることができず、みすみす交代されてしまった。


 せめて、敵が交代できないように、本陣を押さえていればよかったものを、その戦術を積極的に打ち出す指揮官もいなければ、まとまるほどの協調性もない。


 それでも、このままではまずい……


 それは、7人のメンバー内の誰もが感じていることであった。


「みんな、聞いて。このままではまずいわ。なんとか、ここで効果的な戦法を取らないとうちは劣勢に立たされてしまうと思うの」


【針木】の副将格である『潤羽じゅんぱ』ミランダ=ヨーが、思い切って提案をしてみた。


「たしかに、俺もそう考えて提案しようとしていたところだ」


「俺も」


「俺も」


 ……本当に提案しようとしていたのかは、怪しいところであったが、今はそんな些細なことで揉めている場合ではない。


 状況は差し迫っている。


「とりあえず、誰かあっちに伝令に行った方がよくないか?ハリー=ウェルズとカーティス=ダウナーを討つチャンスにもなるかもしれないし」


「たしかに……」


「そうだね……」


 自分たちの派閥の長2人が敵方幹部格であるハリー=ウェルズ、カーティス=ダウナーと交戦中だ。


 ここに1人ずつ伝令がてらに援軍に向かえば、相手の数を減らすチャンスにもなる。


 敵が交代策直後で準備が追いつかないうちに、迅速に動くのも良い手のように全員思えて賛同を示し始めた。


 あとは、7人の中の誰が、と決めるだけであったが……


「させませんよ」


 上空で6人分の大きな『風』が北側本陣から南に向かって吹き荒れ、幹部たちを巻き込む『猛吹雪』となって舞台中央に向かって視界を「ホワイトアウト」させてしまう。


「くっ、その声はまさか……」


「『飛燕領域』……」


 ブーーーーーーーーン……!!


 次に、半球状の巨大な風の『領域支配』ができあがった。


「ま、まずいっ……!全員防御ーーーーー!」


「『燕雀出捨薫剃えんじゃくいずくんぞ』」


 ブワーーーーーーン……シュパパパパパパパパ!!

 シュパパパパパパパパ……シュパパパパパパパパ!!


 自分たちと同格……

 いや、派閥の格でいうと少し上の幹部格……


 魔力タンク満タン、フレッシュな状態で、メンバー交代により入った【泥魔沼】の副将『飛燕』コト=シラベの襲来により、指揮者を持たない幹部たちは、せっかく決めていた作戦を実行に移すタイミングを失った。


 10分経過……


 敵陣営からではない『強風』が一気に吹き始め、『飛燕』のもたらず『風の一閃』の『追い風』となって力を上乗せしていく……


 <2年生『殿上人』連合>の幹部陣営は混乱の極致に陥った……!

ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。

もしこの物語を面白い!と気に入っていただけたら、どうか、いいね、評価、ブクマ登録をよろしくお願いいたします。今後の執筆の励みになります。


「合宿」に比べたら「DOOM]はまだまし……?


だといいですけど……!(笑)


次回、「三勇士」の三部構成が続きます。

初日は、あの人……!


ノーウェと仲間たち(とブルート)の活躍に乞うご期待!


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