表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

431/449

6-85『不発のブルート』

 4分経過……


◇「南側本陣」<ブルート視点>◇


「俺が……小さいだと?ふ、ふん。言うようになったじゃないか。ならば見せてやる」


 『岩』がさらに厚みを増して積みあがっていく。


 「コ」の字型が「口」の字型に変わった。


 周囲を『岩』に取り囲まれ、大量の『水』が放出され始める『大滝』……

 その中心の空中にいるブルートは、360度、すべての方向を『滝』に囲まれてしまい、そこで浮いているだけでも水飛沫が掛かるような状態だ。


 まあ、「ドーム」内の雨足が強まっているので、どちらによって濡れているのかはよく分からない状況ではあるが……


 たしかに、「春」に戦ったときよりもその魔力が高まっているのだろう。

 兄の『岩滝』のスケールは1年前よりも遥かに大きくなっている。


 でも、やっていることは変わらない。


 『岩』を積み上げ、そこから『水』を大量に落とす『岩滝』にする。


 あるいは、『岩』と『水』を同時に落とすなんてこともできるのだろう。

 魔力が高まっている分、その量も、範囲も、圧倒的に多く、そして広くなっているのだろう。


 ……ただ、それだけだ。


「これが『水』の『支配者級』の真髄だ。『滝龍:那由亜駕羅ナイアガラ』」


 ドォーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!


 ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!


 案の定、全方位から流れ落ちる『滝』が『龍』の姿に変わる。


 上下左右、その長い首と胴体をうねらせ、互いに絡み合いながら、一目に数え切れないほどの『滝龍』がブルートを包囲し始める。


「『越仙球羅華えちせんくらげ』」


 ブルートはその身に大量の小さな『泡』を纏わせながら、プカプカと上空に昇り始める。


「はっ、そんなもので俺の『滝龍』を防げると思うなよ。『水』そのものの大きさを……格の違いを思い知るがいい!」


 グルルルガァーーーーーーーーーーン……ザッバーーーーーーーーー!!

 グルルルガァーーーーーーーーーーン……ザッバーーーーーーーーー!!

 グルルルガァーーーーーーーーーーン……ザッバーーーーーーーーー!!

 グルルルガァーーーーーーーーーーン……ザッバーーーーーーーーー!!

 グルルルガァーーーーーーーーーーン……ザッバーーーーーーーーー!!

 グルルルガァーーーーーーーーーーン……ザッバーーーーーーーーー!!



 兄は、一体、何を必死に証明しようとしているのだろうか。

 『水』の『支配者級』……?


 もちろん、この学園に入学した当初は、ブルートにも憧れはあった。


 自分の『称号』の持つ得意属性を極めた者が与えられる名誉。


 たしかに、この何体もの巨大な『滝龍』はその証明なのかもしれない。

 でも、それは結局のところ、ただ1つの属性を極めただけだ。


 それが叶ったところで、魔導師の頂点に立てるわけではないし、自分の魔法をそれ以上発展させられるわけじゃない。


 単なる通過点に過ぎないことに、そうやって必死でこだわっているから小さいんだ……


「『雲英王流渦キラーオルカ』」


 小さな無数の『水泡』が結集し、何体もの『水泡鯱みずあわしゃち』となって、ブルートの周囲を高速に旋回する。


 空から降り注ぐ『雨』と、周囲で飛び散る『水飛沫』を取り込んでドーナッツ状の大渦を作り出しながら。


 ギュルルルルーーーーーーーーーーン……ザッバーーーーーーーーー!!

 ギュルルルルーーーーーーーーーーン……ザッバーーーーーーーーー!!

 ギュルルルルーーーーーーーーーーン……ザッバーーーーーーーーー!!

 ギュルルルルーーーーーーーーーーン……ザッバーーーーーーーーー!!

 ギュルルルルーーーーーーーーーーン……ザッバーーーーーーーーー!!

 ギュルルルルーーーーーーーーーーン……ザッバーーーーーーーーー!!


 バァーーーーーーーン、バァーーーーーーーン、バァーーーーーーーン、バァーーーーーーーン、バァーーーーーーーン、バァーーーーーーーン!!


「なっ……!?」


 『水泡鯱』は大渦とともに高速に移動し、途中で枝分かれして3体ずつ、同時に『滝龍』に喰らい付きながら、弾ける。


 弾け飛んだ『滝龍』の水飛沫を自身の弾けた身に『補給』させながら回復し、1体、また1体と集団で『滝龍』を喰らっていく。


「ふぉぉーーーーーーーー!」


 まだまだ上手く制御が行き渡っていない。


 ある意味、暴走に近い、『水泡鯱』の猛攻……


 それでも、威力勝負であれば、こんなもので事足りる。

 そして、そんな程度のものは、ブルートが目指している戦いではない。


「ちいぃっ……ぐぉぉーーーーーー!」


 グルルルガァーーーーーーーーーーン……ザッバーーーーーーーーー!!

 グルルルガァーーーーーーーーーーン……ザッバーーーーーーーーー!!

 グルルルガァーーーーーーーーーーン……ザッバーーーーーーーーー!!

 グルルルガァーーーーーーーーーーン……ザッバーーーーーーーーー!!

 グルルルガァーーーーーーーーーーン……ザッバーーーーーーーーー!!

 グルルルガァーーーーーーーーーーン……ザッバーーーーーーーーー!!


 ギュルルルルーーーーーーーーーーン……ザッバーーーーーーーーー!!

 ギュルルルルーーーーーーーーーーン……ザッバーーーーーーーーー!!

 ギュルルルルーーーーーーーーーーン……ザッバーーーーーーーーー!!

 ギュルルルルーーーーーーーーーーン……ザッバーーーーーーーーー!!

 ギュルルルルーーーーーーーーーーン……ザッバーーーーーーーーー!!

 ギュルルルルーーーーーーーーーーン……ザッバーーーーーーーーー!!


 バァーーーーーーーン、バァーーーーーーーン、バァーーーーーーーン、バァーーーーーーーン、バァーーーーーーーン、バァーーーーーーーン!!


「はあっ、はあっ、はあっ……ちいぃっ!」


 『大雨』が『粉雪』に変わった……


 この「ドーム」では、時間が立つに連れて、『属性環境』が強まるようで、切り替わった最初のうちは、その影響は弱いものに戻るらしい。


 今は、『粉雪』程度であるが、これも、時間経過によってどんどん強まって『雪』、『大雪』、『吹雪』となっていくのだろう。


 『滝龍』と『水泡鯱』が互いに相殺し合ったことで周囲から『水』は消え、視界の晴れた先では、『岩滝』の頂上に立つ、肩で息をする兄の姿が見えた。

 その身体からは湯気が出ている。


「だから、言ってるんだ。自分の『水』だけを極めていればいいなんて、魔導師として小さすぎるって!」


 ブルート自身、昔はそうであった。


 ……というか、それしか「道」はなかった。


 両親からは見放され、兄姉に見下され、友人からは距離を置かれたブルートにとってその手に残っていたものは、『水』だけであった。


 だからこそ、その『水』を大事に育て、『龍』を作れるところまで育て上げた。


 フェスタ家の家紋であり、先祖が興した家の歴史に大きく関わっているといわれる『水龍』にちなんだ魔法を……!


 でも、その『水龍』を作っているだけで自分は果たして満足なのか……?


 ……違う!


 『水龍』はたしかにあいつらと出会うきっかけと、この学園でやっていく自信を与えてくれた。


 ノーウェに敗れたあとも前を向けたのは、この手に『水龍』があったからだし、今もずっと磨きをかけている。


 だが、それ以上に大事なのはこの【紫雲】という派閥の環境。


 自分の手の中にある魔法を磨くと同時に、同じように研鑽を重ねる仲間のメンバーたちの魔法を参考に高め合える……その環境だ。


『水』だけじゃない……


『風』も、『氷』も!


 一見、自分に関係ないと思われる『火』も、『土』も、『光』も、『闇』も……!


 ゴブリンの魔法も、小さいおっさんの魔法も、意外と難しい天ぷらの技術も……


 ……きっとなんだって自分の糧になる。


 彼らが磨き上げたその技術を知り、その過程を教えてもらったり、模擬決闘で実際に触れたりすることで、その形状、発動の仕方、開発に至る思考を知ることができ、それがきっと自分の魔法へと昇華される。


 ……半分以上、何を言っているか分からないけどな!


 その積み重ねで「手」の上に乗せたものは、きっと兄の持つそれよりも今では何倍も大きい……!

 自分がそれを証明してやる……!!


「あんたはただ魔法の威力を高めているだけだ、『瀑布』カシウ=フェスタ!そんなの【紫雲ウチ】では『成長』とは言わないんだよ!」


「な、なんだと……!?」


 【紫雲】の魔法磨きとは、決して自分の魔法の威力を増すためだけのものじゃない。

 もちろん、それも要素としてないわけじゃないが、そんなものは大前提にみんなやっていることで、人に誇るようなことではないし、それが「最強」への道ではない。


 「成長」とは……魔法を磨き続けて「進化」させることだ!


「見せてやるよ。俺の本気を……!このブルート=フェスタの()()()()()()への道を!」


「ちっ、図に乗りやがって……」


 兄は、舌打ちをしながらもまだ肩で息をしている。


 知っている。

 それが、高威力の『牙』を磨き続けた代償だ。


 今回は、見逃してやる。


 そして、見せつけてやる……!


 きめ細かな『風』を含んだ『水』をイメージして『水泡』を……


 『水泡』をさらに細かく、さらに『風』で膨らませて無数の『雫』に……


 それを、さらに『氷』掛けして冷やし固めていく……


 手だけでは駄目だ……足りない!


 全身で、いや、尻以外……


 ブーーーーーーーー


 ……

 …………

 ………………


「……」


「は……?それが、お前の本気だって言いたいのか」


「う、うるさいっ!今のは失敗しただけだっ、こ、これは、の、ノーウェのせいだっ!」


 ブルートは赤面した……!


 ここにきての放屁。


 何も、この場面で出なくても……

 一瞬、イメージをしてしまったのが失敗だった。


 もう1度……


 意識を集中する。


 全身で『水』、『風』、『氷』を『融合』したものを放出する……!


 シュワーーーーーー……モクモクモクモクモクモクモクモクモク……

 シュワーーーーーー……モクモクモクモクモクモクモクモクモク……


「なっ!?」


 突如、ブルートの全身から『白い煙』……いや、『白い雲』がモクモクと溢れ出し、その身を、その周囲を、そして滝の上から上空を覆ってしまった。


 すでに、元いた場所に『水豪』ブルート=フェスタの影はなく、覆われた『厚い雲』の中にその身を潜ませた。


 ブルート=フェスタは……


 上空で『雲』隠れした……!


ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。

もしこの物語を面白い!と気に入っていただけたら、どうか、いいね、評価、ブクマ登録をよろしくお願いいたします。今後の執筆の励みになります。


皆さん、ここまで85話という長い章なんですが、この第6章は「雲の章」なんです(^^)


おさらい……

「冬の総魔戦」における<無法者連合>の偉業(所業)


・決闘に主力が遅刻する

・他人の属性を無茶苦茶に変えて反則負けに追い込む

・決闘中に寝る

・決闘舞台を「ジャングル」に変える

・ラスト1分でゲーム全体をひっくり返す

・決闘中におならをする(←new)


次回……一方、あの2人の戦いは?


ノーウェと仲間たち(とブルート)の活躍に乞うご期待!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ