表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

426/449

6-80『DOOM会議』

◇決闘3日前「マジックスクエア研究室内」◇


「みんなーーー、次戦は、この私が作った『DOOM』だーーー!絶対に勝つんだぞーーー!裏工作でもなんでもしていいから絶対に勝つんだーーー」


 ……うるせえ。


 たまにいるんだよね。


 生徒よりうるさい保護者が……!


 ミーティング用の大画面マスボから激励するうちのメンバーの保護者が1人……


 一応、保護者である上に、<連合>を形勢する派閥の顧問の1人でもあるのだが、この人、そのどちらの属性も気にしている様子はあまりなく、何よりも今度の決闘「DOOM」の開発者として俺たちを激励しているようだ。


 開発者だったら裏工作を推奨すんなよ、とは思うけどな……

 実力で勝ってこそだろうが……と!


 この決闘の開発者であるダメ教授ことマーゴット=エジウス教授は、現在、第5戦が始まるまで1人どこかに監禁……いや、隔離されて過ごしているらしい。


 情報が漏れるのを防ぐため、という目的なのかと思ったら、どうやら違うらしく、これ以上当日までにおかしな改良をしないように、と運営によって拉致されたとのことだ。


 まあ、あの人の性格上、あり得そうな話だから、この処分は致し方ないだろう……


「よーし、これから私が、皆の活躍よりもとにかく勝利を祈願して『3・3――」


「うるさいっ!」


 ブチッ……


 顔を真っ赤にした血縁者、クレハ先輩がマスボのスイッチを強引に切った。


 致し方ない。


 ダメ教授の血縁者というだけで、日頃、かなりの心に負担を掛けさせられているのだから、ここは温かい目で見守ろう……いや、見なかったことにしよう。


「さて、それでは『DOOM会議』を始めましょうか」


 リバーが何事もなかったかのように、マスボのスイッチを再度入れ、連絡の途絶えた別の研究室の映像ではなく、今度は戦略図の画面を映し出した。


 部屋の中央のテーブルに置かれた俺のマスボの映像だな。


 この会議では、壁に張られた大画面の映像と俺のマスボの立体映像と、2画面で戦略や戦術のシミュレーションを行なっていく予定だ。


 早速、俺のマスボが張り切って精巧な「DOOM」の映像を映し出している。


「まず、新たに『運営』が発表した情報を整理しましょう。『DOOM』においては、各属性の『環境』の順番が予め統一されることになりました」


 ……どういうことかというと、これまでの「ELEMENTS」や「PIECES」など、属性魔法の結界を用いた「決闘方式」では属性の魔道具の配置などは決闘ごとにランダムで、意外性を持たせていた。


 これにより、事前にシミュレーションを行なう際の難易度が上がり、どの<連合>も、いくつも戦術のパターンを持っておく必要があったわけだが……


 今回の「DOOM」では、それを固定化し、各属性の「環境」の順番を全決闘で統一してしまおうということだった。


 発表された内容だと、スタートから『雨(水)』→『雪(氷)』→『強風』→『酷暑』→『砂嵐(土)』の順番で固定されるそうだ。


 各属性環境の継続時間は5分。


 制限時間は45分だから、1度全属性分回ってから、また最初に戻るようだな。


「それと、ルールとは関係ありませんが、私とノーウェは、急造の『コンプライアンス委員会』とやらの査問にかかり、次戦で開始5分間の出場停止となりました」


 ざわざわ……


 他のメンバーたちがざわつく。

 この「DOOM」という「決闘方式」の出場者数が10名であることを考えると、スタメンはかなり重要になってくる。


 定石で考えれば……!


 その中でこの罰則だからな。

 皆が不安がるのも無理はない。


 まあ、罰則にしたのはリバーだけど……!


「リーダーとリバー抜きでの初っ端が『水』かよ……」


 珍しく帽子を外しているハリーの額から薄っすらと汗がにじんでいる。


 無理もない。


 なーんか、作為を感じるよね。


 スタートが『雨(水)』というのは……!


 もちろん、偶然かもしれないけど、このもやもや~とした疑いをさらに濃くしているのが、順番的に最後に回るのが『砂嵐(土)』という点。


 うちの<連合>には『土』の使い手が多いからね。


 クレハ先輩、リバー、コナース君と『土魔法』持ちの実力者が多い。


 そんな『土』使いに有利な環境がよりによって最後。


 これを偶然と取るのはなかなか難しい状況だ。


「それと、うちのバラン様も恥ずかしながら欠場となります……」


 コナース君が申し訳なさそうに発言した。


 申し訳ないのはこちらだ……


 バランは第4戦で負った火傷と肋骨の骨折が治っていないために、「マスクストップ」となってしまった。


「いやいや、こちらこそ、うちのリーダーがすみません」


「『総大将』のくせにわがままで場を乱す男で大変申し訳ない」


 ぐっ……


 ……なんも言えねえ。


 ハリーとカーティスと一緒に頭を下げる俺。


 バランは、前回の<公爵令嬢連合>との「ELEMENTS」で俺の仕掛けた透明の『ジェリーマジック』トラップに引っ掛かり、負傷した。


 現在、入院中だけど、お見舞いに行ったら、本人いたってピンピンしていたけどな。


 今度、お見舞い品の代わりに病室で天ぷらを作ってあげよう。


「いやいや、仮にも『火魔法』の使い手が火傷するなんて、魔帝国の恥ですよ、恥」


 コナース君の言葉に【火鳥風】のメンバー全員頷いている。


 ……前々から思っていたけど、配下なのにバランに辛いよね、みんな。


 まあ、「決勝ラウンド」に進めれば、復帰できるだろうし、ここは残ったメンバーで彼の穴を埋めるとしよう。


 ……俺、最初の5分間出れないけど!


 これまで主力であった俺たち3人がスタメンに出れないということで、どことなく重い空気が会議室中に漂っている。


 ふぅ、気分を変えるためにも、ここで空気を変えるか……!


「俺に良い案がある」


 俺がまっすぐに挙手をすると、皆が注目しながらもなんか微妙な表情になっている。


 今度はなんだよ?

 何やらかすんだよ……


 ……とでも言いたげな皆の表情。


「今度はなんだよ、リーダー」


「何やらかすんだ……?」


 よかろう。


 そこまで期待されているならこの逆風にも負けずにぶち上げてやろうじゃないか!


「ノーウェ、どんな案でしょう?」


「うん。名付けて『三勇士作戦』だ!」


「「「「「さんゆーし?」」」」」


「かくかくしかじか……」


「「「「「いやいやいやいや」」」」」


 ……おやおや?


 想像以上の不評だ。


「お前なあ、決闘は『天ぷら』を揚げるのとは違うんだぞ?」


「いくらリーダーのアイデアでもなあ……」


「相手をナメ過ぎじゃないか……?」


 おや、「三勇士」も及び腰のようだ。


「まあ、今回の作戦の狙いは『舐めプ』だからな!」


「「「舐めプ!?」」」


「いや、()()()と言った方がいいかな。でも、どちらにしても、ブルートがやる事は決まっているんだから、余計な邪魔が入らないようにする必要があるだろう?」


「うーん、そう言われるとまあ……」


「なんか、リーダーに乗せられそうだな」


「でも、残りのメンバーは、それで大丈夫なのか?」


 カーティスの発言を受け、俺が周囲を見渡すと、【紫雲】メンバー、クレハ先輩たち、コナース君たちが皆、肩を震わせながらこちらを注視していた。


「大丈夫だろ。だって、この『DOOM』という『決闘方式』で、俺たちが<2年生『殿上人』連合>に負けることなんて絶対にあり得ないんだから」


 俺がそう言うと、皆の肩の震えがピタッと止まった。


「ちょっとー、ノーウェ君、いつになく不敵じゃん!?」


「大丈夫かしら?そんなことを言っていたら足元をすくわれるんじゃない?」


 レミとディリカが早速噛みついた。

 ()()()()()()()って言っている時点で、実は相手と自分たちが対等以上だと言っているようなもんだけどな。


「マスター、自信満々デス」


「私たちも自信に満ち溢れた筋肉が欲しいデス」


 ……君たち、筋肉はもう十分だから魔力をつけるのデス。


「ノーウェ殿にはそう思う根拠がおありなのでしょうか?」


「できればご教示いただけますでしょうか」


 ……と、腕を組んだクレハ先輩とコト先輩。


「分かりました。では理由を説明しましょう。ごく単純な話です。『DOOM』は単なる集団戦ではなく、属性魔法に対する『()()()』が求められる決闘方式だからです!」


 どよどよ……


「だからーー!!その理由を聞いてんじゃん!!もったいぶるなー!!」


「ちょ、ちょっと、ミスティちゃん」


「「「それなー」」」


 まあ、みんなが焦るのは分かるよ。


 そろそろ核心に入るか。


「簡単な話だ。俺たちはこの夏()()()過ごしてきた?」


「「「「「えっ?」」」」」


「ふむ……『魔境』と関係があると?」


「ああ、大ありだ。みんなは気づいてないだろうし、相手も当日戸惑うだろうけどな」


 今回の「DOOM」。

 ポイントはただの環境変化ではなく、魔道具によって作られる『魔力の空間』だということだ。

 しかも、一か所や一面ではなく、全面。


 これまでのあらゆる決闘で、会場となる環境全体が魔力が充満するような環境になったことがない。


 ……ジャングルはノーカウントだ!


 もちろん、それは微細なものなので、大した影響ではないのではないかと思うのが普通である。


 『殿上人』クラス、その幹部クラスであれば気にも留めないであろう。

 実際に、決闘開始直後は大したことがないと思って動くはず、動けるはず。


 ……そして、そこにこそ活路があり、彼らにとっての穴になると俺は踏んでいる。


「そういうことですか……我々は、すでに『DOOM』の環境に慣れていると」


「たしかに、『魔境』は、そこにいるだけで常に体力を奪われるような場所でした」


 クレハ先輩たちもちょっとは納得してくれたようだ。


「あのー……話の腰を折って悪いのですが」


「なんだい?コナース君」


「私たち【火鳥風】は『魔境』に行ってないのですが……」


「「「あ!」」」


 申し訳なさそうな感じで、コナース君が頬を人差し指でポリポリとかきながら指摘した。


 たしかに……


 ずっと、一緒にいたから、夏休みもいたかと思っていたよ……!


「ま、まあ『魔帝国』も似たような環境だし、大丈夫だろう」


「そんな、取って付けたような……」


 聞いた話だと、魔帝国の方が帝国よりも魔物が強いらしいし。

 「魔境」ほどじゃなくても、似たような場所は多く存在すると考えられる。

 ……たぶん。


「それに、この2週間で訓練もしてきたわけだから、大丈夫だ」


「本当かなあ……」


「ああ。俺から言わせると、相手がこの決闘を『()()()』し過ぎなんだよ」


 論より証拠。

 決闘になれば分かる。


「ははは、なんかノーウェ君に乗せられそうになるなあ」


「事実だからな。とにかく、みんな、『魔境』で戦う心積もりでいてほしい」


「「「「「おうっ(うん)!!」」」」」


「そうは言っても、もちろん強敵であることに変わりない。だから、スタメンは手堅く『守り』ができるメンバー構成で行くぞ……『アンバスターズ』の出番だ」


「「「「「えっ、私たち?」」」」」


 この決闘……


 長引けば長引くほど俺たちに有利になる。


 それを見越しての「戦略」だ。


「私も『絵』が見えましたよ、ノーウェ。それでは、レヴェック、コナース、コト先輩。『三勇士作戦』をベースに残りの7人のチーム編成をしていくとしましょう」


「「「はい」」」


 「参謀本部」にも俺の思い描いたビジョンが共有できたようだ。

 3日後が楽しみだな。


「ところで、1つ質問よろしいでしょうか?」


 コト先輩がおもむろに挙手をした。


「なんです?コト先輩」


「いったい、いつまで、この『疑似DOOM』で会議を続けるのですか?」


 全員が切実な表情で頷いた。


 そう……


 俺たちは、先輩たちとダメ教授が作った【泥魔沼】の部室である2F研究室にいる。


 そこは現在、「DOOM」で実際に使われる魔道具が全面に貼られた疑似「DOOM」の空間になっているんだ。


 ここまでの会議中、『酷暑』→『強風』→『氷点下』の流れで切り替わっていた。


 ね、言ったでしょ?


 普段から、この環境に身を置いている俺たちが、この「決闘方式」で負けるはずがないと……


 皆も、気づかないうちに、「魔境」で過ごしていたときの俺のように、繊細な魔法でその身を包み始めているんだよ。

 まるで、天ぷらの衣のように……


「もちろん、ずっとだ。これから当日までの間、ここで合宿を慣行する!」


「「「「「えっ?」」」」」


 ザーーーーーーーーーーー……!!


 俺がそう言った直後、室内の『属性環境』が切り替わり、砂嵐が会議室中に舞った……!


ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。

もしこの物語を面白い!と気に入っていただけたら、どうか、いいね、評価、ブクマ登録をよろしくお願いいたします。今後の執筆の励みになります。


マスボは雨にも砂嵐にも耐久力があるようです……


次回、「最終ラウンド」の切符を賭けた決戦開幕!


ノーウェと仲間たち(とブルート)の活躍に乞うご期待!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ