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6-63『腹の探り合い』

<戦況>


<無法者連合>

ノーウェ:シーア=ベンと交戦しながらリバーのいる北東『土柱』へ

リバー:せっせと築いた『堅土の巨塔(ほぼ要塞)』に籠城中(?)

「ELEMENTS団(残り13人)」:舞台中央で敵と交戦後、南東『氷柱』に向かい通過。その後、南西『風柱』に向かう


<公爵令嬢連合>

ジャネット、ラウラ、ジェシー、マリー、ルー=ネルネ

:舞台中央防衛、一時「ELEMENTS団」と交戦

シーア=ベン:ノーウェ=ホームと交戦中

「魔法隠密舞台」:ノーウェの「無色の策」に被弾。ノックアウト(?)

南東『氷柱』守備部隊:退避し、南西『風柱』へ。そちらの守備隊と合流し8人に


◇「北東『土柱』を囲む『堅土の巨塔』◇


 この短期間に、なかなかの手仕事だ。


 作り手の几帳面さがその外壁の滑らかさからしてよく分かる。


 寸分の狂いもなく積まれた立方体の『堅土』。

 それが、柱にも外壁にもなり中央の貧相な『土柱』を囲んで見えなくしている。


 その『堅土の巨塔』の最上部の天井部分、今やすっぽり埋まってしまった『土柱』が唯一覗ける隙間があります……


 なんということでしょう?


 その隙間に建設者であるリバーがすっぽり納まっています。


 無言の上目遣いで……


 ああ、はいはい。

 さっさとしろということね。


 『シュラトラーント』!


 なんということでしょう?


 リバーが消えてもぬけの殻となった天井の隙間部分がみるみるうちに埋まっていきます。


 これぞ匠の仕事……!

 『土』の魔術師……いや、魔導師の為せる匠の技です!


「なぜ効かない?」


 なんの話でしょうか?


 ……おっと、シーア先輩がやって来た。


 『火』に当たらずにすぐにやって来るなんて根性あるね。


「なんの話でしょうか?」


「私の『冷気の領域支配』……目に見えないようにやっているのに、全然効いていない。なぜ?」


 ああ、そういうことね。


 やっていたのは知っていたけど、『冷気』は感じていなかったな。


 教えてもいいのだけれど、少し迷う。


 この「第4戦」から撮影の魔道具の配置数を増やしたり、性能を強化したらしい。

 リバーがそう言っていた。

 なんでそんなことになったのかは知らないけど……!


 だから、俺たちの会話もバッチリ拾われている可能性が高い。

 そこで迂闊なことをバラしてしまっていいものなのだろうか……

 さすがの俺も少し考える。


 昨今は「テンプレ問題」が世間を騒がせているらしいからね。

 あれ?

 「テンプラ問題」だったっけ?


 なんか映像を見させられたよ。

 決闘中、健全な煽りならいいけど、あまりに口汚く罵るようなものはダメなんだって!


 あとは、個人の秘密を漏らすようなことも……


 ひょっとしたら、それに引っかかるんじゃないか、と思ったんだが、よくよく考えると、『領域支配』の対抗策をまさに『領域支配』の使い手に聞かれて答えることは別に構わないんじゃないかと思えてきた。


 公益性ってやつがあるもんね。


「教えて!『雪双梨せっそうなし』」


 ポォーーン、ポォーーン……ピキピキピキ……!!


「まあ、簡単な話です。『ファイア-ガンランス』」


 ボンッ、ボムッ……ボボボボアッ!!


「全身に『属性魔法』を纏って微細に流し続けるんです。いつ何時でもね」


「……そんなこと可能なの?『雪投弾せっとうだん』」


 シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュパパパパパパ……ピキピキピキピキ……!


「できますよ。実際にやっています。背中やお尻まで纏うのはなかなか難しいんですけどね。思いつくきっかけとなったのは、コイン先輩の技ですね。『ハイファイア-ニードルラッシュ』」


 ボアッ、ゴオォッ、ボボボボボボボボボボヒュンッ!!


 「春の選抜決闘」でコイン先輩と戦ったとき、先輩は上半身に『石』よりも数倍固い物質を纏わせていた。


 あのとき、コイン先輩は、その時点では未完成だった技を俺との決闘で試したわけだけど、逆にあれが完成していたら、あの決闘も結構危なかったと思う。

 何より大いに参考になった。

 コイン先輩に感謝だな。


 ……といっても、昔からやっていたことの応用ではあったけどね。


 魔法の発動と魔力の放出は微妙にやり方が違う。


 魔法は『称号』を持つ魔導師でなければ発動できないが、魔力の放出は誰にでもできる。


 現に、熟練の騎士や兵隊さんたちは魔力を腕に集中的に放出することで腕や武器に纏わせて強化する技を持っている。


 魔導師は無理にそんなことをする必要がない。


 だって、魔法が使えるから。


 でも、魔導師がやったっていい。

 やった方が生存率が上がる場所がある。


 ……そう「魔境」。


 そこで自然と身についていたものを、「夏休み」が過ぎてから俺はひたすら研究し、この学園で知った属性魔法による『領域支配』と掛け合わせた。


 空を飛ぶときに、足に風魔法を纏わせるように……


「魔境」で、周囲の魔力に対して繊細になるため、全身に放出した微細な魔力をその身に余すことなく纏わせるように……


 その2つを掛け合わせれば、属性魔法の『領域支配』ではなく、『全身着衣』が可能となる。


 何人かの実力者は、これを『纏い』と呼び、自身の『領域支配』の発展形としてやろうと試みていた。


 コイン先輩然り……

 ジェシー然り……


 でも、それはここぞというときの『技』であり、それゆえに『領域支配』の発展形でしかないんだ。


 でも、俺がやっているのは違う。


 あくまでも「基本形」。


 だから微細な魔力の調整が必要になる。


 始めは神経を多く使うものだが、いつしか、自然に発動できるようになっているもの。


 イメージはワイバーンの魔法『フェザータッチ』だな。

 あれぐらい、繊細な魔法の発動だ。


 これにより、シーア先輩ほどの手練れであっても、その目で確認できないぐらいの『属性魔法』をその身に薄く着ることができている。


 「温かさ」を調整してね。

 だから、『火柱』に当たりながら確かめていた……!


 おかげさまで、『土柱』の方に移り、シーア先輩の『冷気の支配』を受けても、変わらずあったかいんだから!


「なるほど……面白い。『吹雪の領域支配』、『刺々冥雪ささめゆき』」


 ……支配をより強め、形状変化で対抗というわけね。


「今度ぜひ使ってみてください。『決勝ラウンド』へは俺たちが行くので、消化決闘になるでしょうけど……『ハイストーン(石板)-エアマッシャー』、『れんぞくま』」


 パパパパパパパパパパパパパパパ……!!


 『雪』が尖り、針のように降り注ぐ……


 ガガガガガガガガ……パパパパパパーーーーーン!!」


『石板』を作り、『エアマッシャー』で粉々にしながら弾き飛ばす。


 シーア先輩、さっきから会話の中でナチュラルに魔法を放ってくるよね。


 ……大した手練れだ。


 しかし、違和感がある。


 シーア先輩の方こそ、まだ()()を出しているようには思えないな。

 どこか、攻撃が単調だ。


 ……さて、いったい何が狙いだろうか?


 つついてみるか……!


「『エンジェルウイング-レフト』」


 まず魔力を強化……


「見よう見まね『ハイストーン(武石)』、『フロート』」


「この技は、コインの……」


「見よう見まね『ハイウインド(風羽)』、れんぞくま」


「これは、クォーターの……」


 そうです。

 コイン先輩の『巨石』とクォーター先輩の『風切の刃』……


 それを組み合わせて……


「『ハイウインド-コルナード』」


 ブンッ、ブンッ、ブンッ、ブンッ、ブンッ……!


 シュパパパパパパパパパパパーーーーーー……!


 ……混ぜこぜにして先輩の方に向けてぶつける。


「『大吹雪領域』……『大雪厳氷点下』だいせつげんひょうてんか


 ピキピキピキピキピキピキピキピキピキピキピキピキ……

 ピシャーーーーーーーーーーン、ピシャーーーーーーーーーーン……

 ビュオォーーーーーーーーーーーーーー!!


 『巨石』は『冷気』によって凍らされ、『風切の刃』によって切り刻まれる。


 とんでもない威力ではあるが……


 俺はその隙に舞台を確認する。


 「ELEMENTS団」は、南東側『氷柱』を通過し、今度は南西側『風柱』まで撤退した敵メンバー含め8人を13人で追い立てている。


 中央にいるジャネット先輩は、その様子を見守りつつ、中央を固め、どこを攻め立てるか考えている様子だ。


 その近く、俺に奇襲を仕掛けた「魔法隠密部隊」は2人ほど、中央舞台に横たわっているな。


 ……なるほど。


 さて……


 そろそろ、次の作戦を発動するタイミングに近付いてきたな。


 この決闘を、正しい意味で「決める」ために……!


 この決闘の「運営者」は学園でも、大会運営委員会でもない……


 新決闘方式「ELEMENTS」の運用を決めるのは発案者である俺たちだ……!


 だから、決闘中にその形を作り変える……!


「……っ、なかなか強力」


 先輩の『冷気の領域支配』は、巨石を凍り付かせて固定し、次々とできあがる『氷の板』を『風切の刃』に削らせて周囲に粉雪を散らせる。


 さすがの実力……


 圧倒的な『領域支配』はまずもって物量が違う……!


 なかなか理不尽な技だよね。


 このシーア先輩でも及ばないということから、学内ランク上位3人のとてつもない実力が窺い知ることができる。


 さて、どうやって攻略しようかな……


「もう1つ質問。『雪投弾せっとうだん』」


 シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュパパパパパパ……ピキピキピキピキ……!


「なんでしょうか?『ハイファイア(火玉)』、『れんぞくま』」


 『炎の大玉』をまず作って……


 ドンッ、ボボボボアッ!!


「『ハイウインド(攪拌)』」


 かき混ぜる……!


 ボボボボボボ……ゴオォーーーーーーア!


「なぜ、2人で戦わない?『雪双梨せっそうなし』」


 ポォーーン、ポォーーン……ピキピキピキ……!!


 ……ひょっとして、リバーのことを言っているのかな?

 さっきよりも難しい質問だ……


「こっちにも作戦や()()()()()()()があるもんで……『ハイファイア(火玉)』、『れんぞくま』……『ローリン』」


 ボンッ……ゴロゴロゴロゴロ……ドッガーーーーーーン!!


「そう……じゃあ、恨みっこなし」


「え?」


 ……どういう意味だ?


 ビュンッ……!!


 そのとき、すぐ近くで一陣の風が吹いた……


「お命頂戴……『風具刺ふぐさし』!」


「しまっ……」


 ビューーーーーー……グサッ!!


 突風とともに、『颯梟さっきょう』モナ=オウルが現れ、俺の腹に狙いすました一撃を入れてきた……!



◇「南東『氷柱』」付近◇


 スタスタスタ……スタスタスタ……スタスタスタ……スタ……


 13人の「ELEMENTS団」が嵐のように過ぎ去り、敵を南西の『風柱』からさらに追い立てようとしているその頃、南東の、誰もいないはずの『氷柱』付近の舞台上で静かな足音が響き、そして止まった……


「さて、始めますか……ここはさすがに、1つずつ積み上げる時間はなさそうですね」


 『認識阻害』の魔法によって透明化していた1人の男の姿が徐々に露わになっていく……


 男は、たった今、激戦地となっている『土柱』を取り囲む『堅土の巨塔』で籠城していたはずの『土』の魔導師……リバー=ノセックであった。


「『土塔嚢櫃地(どとうのひつじ)』」


 ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ……

 ドドドドドドドドドドドッ……!!

 ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ……

 ドドドドドドドドドドドッ……!!

 ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ……

 ドドドドドドドドドドドッ……!!


 注意深く舞台を見守っている観客ですら、まばたきをしていれば見逃していたかもしれないほどのわずかな時間に、この決闘方式の創始者たちが目指した難易度に敵う、2つめの「本物の防護結界」が完成した……!


ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。

もしこの物語を面白い!と気に入っていただけたら、どうか、いいね、評価、ブクマ登録をよろしくお願いいたします。今後の執筆の励みになります。


ノーウェ危うし……?


次回、仕切り直し……!


ノーウェと仲間たち(とブルート)の活躍に乞うご期待!


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