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6-61『無策の策』

<スターティングメンバー>:


<無法者連合>:

【紫雲】:ノーウェ、リバー、ブルート、ハリー、カーティス、レミ、ミモレ、ジャック(8名)

【泥魔沼】:クレハ=エジウス、コト=シラベ、『火樽真』イッチャ=イマース(3名)

【火鳥風】:バラン=レンホーン、コナース=イナッソ、『風実取』ハービー=キュリアス、『東風亀』ボリス=リョーツ(4名)


<公爵令嬢連合>:

【魔花】

『風華』ジャネット=リファ

『水門』ラウラ=カポーティ

『氷殻』ヒズ=ミステル

『石転』ロクサーヌ=イミューズ

『炎格』ジェシー=トライバル

『風接』ルーモ=ピアジェ

『風分』アスキー=アーチャー

(7名)


【羅雪】

『雪月』シーア=ベン

颯梟さっきょう』モナ=オウル

『静水』ジロー=チョウ

『穏陰』アッシュ=タルク

(4名)


【紅七星】

『土宮』マリー=オネット

『未魔女』ルー=ネルネ

灸寒蝶きゅうかんちょう』メラ=アババーン

光軌針こうきしん』エネ=フラーム

(4名)


◇南側本陣<ジャネット視点>◇


「くっ……あの男はどこまでも我々を愚弄しおって」


 水色髪の側近が鼻息を荒くしている。


「それがあの男の策かも知れませんよ」


「わ、分かっている」


 人の性格はそう簡単には変えられない。


 後輩に嗜められる『水門』のラウラ然り……

 嗜めつつも、その瞳をギラつかせている『炎格』ジェシー然り……


 かく言う<公爵令嬢連合>のまとめ役、『風華』ジャネット=リファも、全身の血が沸き立つ感覚を抱いていた。


「小生意気……」


「これは、千載一遇の機会では?」


「オホホ、あれでは1人寂しく繋がれた犬ですわね」


「ま、マリーしゃま、1人だけ発言がズレているでし」


 ジャネット、ラウラ、ジェシーに加え、シーア、モナ、マリー、ルー=ネルネの主力7人という編成で本陣より10メートルほど前に出た地点に陣取り、両サイドのそれぞれ『風柱』と『氷柱』を残りの各派閥混成部隊が4人ずつで押さえにかかっている。


 この布陣でいれば、敵も少人数ではなかなか攻めてこれないであろうし、こちらは相手の出方を見て中央や敵陣の『柱』を狙いに行ける……


 ……そんな考え抜かれた布陣であった。


「どうしますか、ジャネット様」


 少し落ち着いた側近ラウラが尋ねてきた。


 ジャネットは、1度、深呼吸をしながら考えを再構築していく。


 ラウラにも、ジェシーにも、そしてジャネットにも1つの共通点がある。


 それは……


 全員、対戦相手である『紫魔導師』ノーウェ=ホームや彼の側近にして参謀の『土庵深』リバー=ノセックによって手痛い敗北を喫しているという点だ。


 奇想天外で相手のまったく読めない手を繰り出す、学園において異端中の異端の魔導師と、その「異端児」が生み出す奇妙奇天烈な魔法や戦術を、100ある王道、詭道の戦術と巧妙に組み合わせて相手を罠に陥れる「大参謀」のコンビは、これまでにあらゆるタイプの「指揮官」を破ってきた。


 入学前に対戦したときよりもはるかに大きくなった相手をジャネットが警戒しないはずがない。


「悪魔小僧とその執事の最悪コンビ」……


 今では、学園でそう呼ばれる2人は、片や、北西側『火柱』の前で何もせずにつっ立っており、片や、北東側『土柱』の周囲に味方を守らせながら、何やら『土』の建造物を着々と築いている。


 まるで「寓話」のように対照的な行ないをしている2人に対し、<公爵令嬢>の面々は、誰もが当惑し、そして同時に1つの決意を持っている。


「行きましょう。まずは中央に進軍します。『水柱』を攻略しつつ、相手の出方をみますよ」


「「「「「はい(でし)!」」」」」


「分かった」


「おほほ、承知しましてよ」


 ……それでも、人の性格は簡単には直せない。


 元々、好戦的な『風使い』の公爵令嬢は、こちらに背を向けて『火柱』で暖をとっている対戦相手に対し、その心にはたぎるほどの闘志を燃やしつつ、その頭では冷静に駒を1つ進めた……!


◇「北西側『火柱』付近」<ノーウェ視点>◇


 はぁ~、あったけえ~……


 『火』の魔道具は焚火代わりになるからありがたい。


 焼き芋でも焼こうかな……?


 そんな気分になってくる。


 ……おっと、ちゃんと仕事はしておりますよ。

 『暖』をとるのもれっきとした仕事の内なんです。


 何もしていないようでいて、実はしている仕事というものも世の中にはあるものだ。

 たしかに、前回の決闘は開始数十秒で交代したし、その前の決闘は途中寝入ってしまった。


 だが、今回はなんといってもあのジャネット先輩との戦いだ。

 俺が張り切らないわけがない……!


 ふうっ、手はだいぶあったまってきたな。

 向き直るか……


 何もしていないように見えて実はしている仕事と……


 何もしていないことが仕事になっている……ということは違う。


 後者は「無策の策」というそうだ。

 リバーが教えてくれたんだよ。


 まあ、今回に限っていえば、俺のしていることは、両方の性質を持っているといえる。


 何もしていないように見えて俺はちゃんと準備をしているし、同時に、相手には何もしていないように見えているから「無策の策」ともいえる。


 しかも、これは「連携戦術」だ。


 俺がしていることは「無策の策」のように見えている。

 一方で、リバーは『土の柱』(北東)側で着々と1メートル四方の『土の立方体』を『土柱』付近に積み上げている。


 ……城でも建てる勢いで!


 これを相手のジャネット先輩がどう見ているか……

 そこが重要。


 ちなみに、俺のサイドも、リバーのサイドも『柱』を囲んではいるが、中の「色変えの魔道具」には一切手を触れていない。

 つまり、俺たちはまだ1つも宝具を自分たちの「色」にしていない状態。


 優秀な指揮官であるジャネット先輩はおそらくこのことにも気づいているだろう。

 そして、その理由も必死になって考えているはずだ。


 ……それこそがリバーの狙いなんだ。


 この数日間、俺とリバーはあの数字の書かれたカードとサイコロを使った「駒取りのボードゲーム」をずっとしていた。


 俺は単に、リバーと勝負をしながら戦略上の話をしていただけだけど、リバーの方には明確な理由があったそう。


 1つは、俺から何か突拍子のないアイデアや策が出てこないか期待していた……

 これに関してはなんとなくそうなんじゃないかとはやりながら思っていた。


 もう1つは、俺と戦うことでジャネット先輩の見ている景色から指揮を取っていたのだという。


 優秀な指揮官が、どうしたら惑わされ、どうしたら迷いが生じるか……


 そして……


 ……

 …………

 ………………


 ……おっ!


 事態が動き出したな。


 ジャネット先輩、シーア先輩、マリー先輩といった主力の7人が中央の『水柱』に近付いていく。


 <公爵令嬢連合>における主力の7人が舞台中央に陣取って「積極的な守り」をすることで、こちらは容易に攻めづらくなるし、中央の「宝具」を獲ることで、少なくとも彼女たちは「宝具」を3つ常に押さえている有利な状況になる。


 ジャネット先輩らしい詰め方だ。


 そして、俺たちの狙いに少し近付いた。


 だが、まだ足りない。


 今はまだ、魚が釣り餌に近づいて来ただけの状態。

 しっかりと餌に食いついた状態になるまでは、まだまだ忍耐を擁する……


 ……ということで、再び、向き直って腹側を温める。


 片方を温めると片方が冷えてしまうのが問題だ。

 座って足の裏を温めた方が効率がいいかな?


 さあ、先輩。

 いつまで我慢ができますかね?


 ここまで挑発されれば、逆に攻めづらくなると一見思うかもしれない。

 俺が何か「策」を持っているんじゃないかってね。


 実際に、持ってはいるんだけど、同時に彼女の中には「迷い」も生じているはずだ。


 本当に何もないのではないか……ってね。


 先輩と初めての決闘をしてからもうすぐ1年になる。

 あのときは、とにかく先に動いた方が「勝ち」となる勝負だった。


 だが、今度は逆の勝負。

 「我慢比べ」だ。


 先に動いた方が相手の思惑に乗ることになる。


 ……おっ!


 敵さんはどうやら『水柱』の宝具に触れたようだ。

 見ていなくても、分かるよん。


 ジャネット先輩が『風』で『水柱』を吹き飛ばしている間に、シーア先輩が属性魔道具付近に『氷』を張り、再び水が噴き上がるのを遅らせた。


 その隙に、ジェシーが中心の「宝具」に触れて「色」を緑色に変えた。


 こちらから見てさらに後方の『風柱』と『氷柱』もすでに「色変え」の作業を終えたようだから、これで先輩たちの「宝具」は「3」となった。


 ……そして、そのタイミングでジェシーがそのままジャネット先輩とともに空中に飛び上がった。


 ようやく動き出してくれたようだ。


 こちらも、次の「戦術」に移行できる。


「行くぞぉーーー、ノーウェ=ホーム!『炎足鞭投えんそくべんとう』」


 ボボボボボボボボボボボボ……


 ゴオッ、ゴオッ、ゴオ、ゴオッ、ゴオッ、ゴオ、ゴオッ、ゴオッ、ゴオ……


「『風波かざなみ』」


 ブオーーーン、ブオンッ、ブオンッ、ブオンッ、ブオンッ、ゴォーーーーーーー!!


 見たことのある技……


 第3戦の冒頭に使った合わせ技だな。


 先手を奪うために、敢えて様子見の『炎の球』を大量に放ち、後手に回ったところで、「次の手」が控えている。


 シンプルだけどかなり効果的な初手の牽制技だ。


 ブルートの兄ちゃんとやったときは、全体に満遍なく放っていたが、今回は俺の方だけに集中して放っている。


 さて、防ぐか……!


「『ハイアイス-シェル(氷板)』、『れんぞくま』」


「『プロテクト』、『れんぞくま』」


 ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ……!


 ジュッ、ジュッ、ジュッ、ジューーーーーーーーーーーーー……!


 空中から飛来する無数の『炎の玉』に対し、薄く引き延ばして表面積を増やした『氷の板』の『魔法バリア(シェル)』で対抗する。


『プロテクト』で固めてあるから、早々割れることはないよ。


 ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ……!


 ジュッ、ジュッ、ジュッ、ジューーーーーーーーーーーーー……!


 尚も続く『炎の玉』攻撃……


 そのときであった……


「お命ちょうだ……」


 ボォーーーーーン、ドォーーーーーン、ブバーーーーーン!!


「「「うわぁーーーーー」」」


 ……気づいていたよ。


 別に、見えなくても微細な魔力を張り巡らせていれば分かるからね。

 以前にもこんなことがあったような気がするけど……


 ……忘れた。


 ようやく、敵の部隊がこちらの「罠」に掛かってくれた。


 だから言ったじゃん!?


 俺は何もしていないように見えて実は仕事をしていたんだって……!


 『ジェリーマジック』に包んだ各種『属性魔法爆弾』に、『シュラトラーント』という、物質に『認識阻害』効果を与える魔法を俺は丁寧に1つ1つ掛けていたんだよ。


 だから、「無策の策」ではなく、「無色の策」だった、というわけだな……!


 敵方3人の魔導師が盛大に後方へと弾き飛ばされて行った……


「モナ……!許さない」


 そして、次の来客があったようだ。


 せっかく温まってきたところなのに、一気に冷え込んで来たね。


 おそらく、これまで対峙した学生の中で最強の相手……


 学生ランク4位の『殿上人』の3年生、『雪月』シーア=ベンが次の相手のようだ……!


 ◇「北東側『土柱』付近」<リバー視点>◇


 ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ……!


 ジュッ、ジュッ、ジュッ、ジューーーーーーーーーーーーー……!


 ……

 …………

 ………………


 ボォーーーーーン、ドォーーーーーン、ブバーーーーーン!!


「リバー、始まったよ~」


 焼き固めた『土の立方体』が丁寧に積まれ、塔のような高い建造物が作られたその頂上で<無法者連合>総参謀リバー=ノセックは事態の推移をじっと見守っていた。


 地上(舞台上)でレミが呼んでいる。


 北東で、状況が動いたことを知らせる派手な狼煙が上がったので、全体を俯瞰して見ているリバーも当然把握している。


 リバーは何も言わずにそっと手を挙げた。


「行くぞ~!」


 レミがリバーを見て黙って頷き、仲間メンバーに号令をかけた。


「「「「「おーーーー!!」」」」」


 ドドドドドドドドドドドッ……!


 それは、次なる一手……


 「学園の異端児」、「決闘の破壊者」と巷で噂される男、『紫魔導師』ノーウェ=ホームがチームに授けた、この決闘における「真の戦術」の始まりを意味する。


 ここに、『土庵深』()()()()()()()()()()()()()北東の『土柱』に残し、<無法者連合>の精鋭13人が一斉に敵陣地に向かって突撃を始めた……!

ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。

もしこの物語を面白い!と気に入っていただけたら、どうか、いいね、評価、ブクマ登録をよろしくお願いいたします。今後の執筆の励みになります。


総攻撃……?

……さあ、どうなるでしょうか?


次回、13人の「ELEMENTS団」の思惑は……?


ノーウェと仲間たち(とブルート)の活躍に乞うご期待!


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