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6-54『飛竜襲来』

 ワイバーン……


 なんてったってワイバーン……


 なんでこんな場所にいるのか、どうしたって理由が分からない。


 岩山が好きなやつらではあるんだけどさ……

 「魔物大図鑑」の生息地情報にもこの辺は載っていないよね?


 このヤバい魔物は……!


 冒険者ギルドの規定では、Aランクの魔物という認定をされているんだが、これにはちょっと納得がいかない。


 ギルドの認定する魔物の中にはしばしばそのランクと実際の実力が一致していないことがあるが、俺が思うに、このワイバーンはその最たる例だね。


 ギルドのランクにおいては、冒険者の方は「S」があるけど、魔物の方は「S」がないんだ。


 その代わり、「A」の次は「怪物」というクラスになる。


 たしかに、ワイバーン単体の場合、「怪物」と呼ぶほどではないかもしれない。


 人を簡単に殺めることができるほどのパワーを持ち、強力なブレスを吐き、空を飛び回るので攻撃を当てづらく、そこそこの頑丈さもある。


 ……とはいえ、「怪物」ハイエロファントのように『透明化』という特殊なことができるわけではないし、街1つ潰せるかと言われると、そこまでの脅威ではない……という評価に落ち着くのも百歩譲って分からなくもない。


 ……ただ、それはあくまでも「単体」で出現した場合だ。


 そもそもなんだが、ワイバーンに限って言えば、そっちのケースの方がまず少ない。


 こいつらは、大体の場合において「群れ」で行動する。


 今も、山の頂点や岩肌に10体のワイバーンがいるのが分かる。


 Aランクか「怪物」かどうかで迷っている種が常時群れで襲ってくるんだったら、そりゃもう「怪物」とか「大怪物」のレベルじゃないかって俺は言いたいわけよ。


 ワイバーンに群れで街を襲われたら「怪物」ハイエレファントよりも厄介だと俺は思うけどね。


 対抗するには少なくとも腕利きの魔導師チーム1つは絶対に必要だから……!


「どうする?引き返すか……」


 カーティスが後ろ向きな発言をした。ここから見てまだ500キロメートル近くは離れているから、後ろを向いて逃げても大丈夫だと思っての発言なんだろう。


 だが、甘い。


「こっちを見て翼を広げている個体がいるだろ?」


「ああ……」


「あれは、こちらに気づいていて『威嚇』をしている証拠だ」


「……そうなのか?」


「ああ。もう俺たちは、あいつらの『縄張り』に侵入しているということなんだ」


 不覚だった。

「魔境」じゃあるまいし、まさか、出るとは思ってもいなかったので、ちょっと周囲の魔力探索が緩んでいた。

 深く反省。


「……覚悟を決めろ、ということか」


「まあ、そうなるな……」


 敵の群れは10体。


 これは、ワイバーンの群れとしては平均的な数だ。

「マーロック遺跡」付近の山脈で出くわしたときはもっといたからそっちの方が断然危なかった。


 究極の選択として、「1匹のドラゴン」と「20匹のワイバーン」のどっちを相手にしたいかと言われたら、正直悩む……


 うん……

 それでも、まだ「20匹のワイバーン」の方がマシと思えるのがドラゴンの凄さだな。


 とはいえ、「災厄」と悩むぐらいなので、それぐらい群れのワイバーンが危険なことには変わりない。


「まあ、予期せずして、<連合戦>の予行練習になりそうだな」


「<連合戦>の?」


「どういうこと?」


「ああ、ワイバーンの危険なところは、頭脳があるということだ。群れで襲い掛かって来るし、戦術的な動きも本能的にしてくる。ドラゴンほどじゃないけど、『ブレス』という遠距離攻撃もある」


「連携を用いた戦術の良いデモンストレーションというわけか……」


「ああ、ただし、1発でももらったら普通に死ぬ可能性はあるけどな。大げさじゃなく、『怪物』が10体襲って来ると思ってくれ」


「「「「……っ!」」」」


「基本戦術は、専守防衛。レミ、モモエ、ディリカの『光魔法』の結界固めとリバーの『土』を中心に手堅く、だ」


「うん、りょうかいー」


「分かりました」


「分かったわ」


「畏まりました」


「カーティスは基本的にこちらの穴がないかを確認し、塞ぐことを最優先で、隙を感じたら攻撃を入れる意識で頼む」


「分かった……」


「ただし、深追いは絶対にしないように。『あともう少しで倒せそうだから少し冒険しよう』……これによって命を落とす冒険者は多い。相手には頭脳があるから、『死にかけているフリ』くらいは普通にやってくると思ってくれ」


「「「「「……っ!!」」」」」


 皆の顔が一段と厳しくなった。


 これなら大丈夫かな。


 岩山のワイバーンたちが大きく翼を広げ始めた。


 あと30秒ってとこだな……


「じゃあ、俺は少し前で待つことにするから」


「ノーウェ1人で?」


「一緒に戦わないの?」


「必ずしも、全員で固まることが最善とは限らない。危なくなったらなんとか助けるから」


「「「「……っ!!」」」」


 10体もいる以上、すべてをさばき切るのは難しいし、必ず何体かは漏れて皆のところに向かうだろう。


 それでも、10体がまとめて皆に襲い掛かるよりかははるかにマシだ。


 伝えていないことがまだ2つ、どちらからにするか……


「これも大事なことだ。『初めから本気で、でも全力は出さない』」


「「「「は?」」」」


 困惑が広がる。


 まあ、仕方ない。

 一見するとトンチみたいな話だから。


「なるほど……相手も思考をしてくる強敵だから、初めからすべてを出し切るのではなく、しっかりと対峙しながらも手札を出すときを熟慮しろ、というわけですね……?」


「ああ。もちろん、死んだら元も子もないから、きっちり身を守り切らないといけない。でも、相手は学習する化け物だ。手は抜かずに戦いながらも、最後の切り札は「出しどき」が来るまでしっかり握っていろ、という話だ」


「そ、そうか……」


「き、気をつけるわ」


「それと……」


「まだあるの?」


 ディリカの表情が一層こわばっている。


 悪いけど、一応伝えないといけないからね。


「これが最後だ。相手は「番」が集まっている可能性がある。その場合、1体を倒すともう1体がより凶暴になるから、気をつけてくれ」


「……分かったわ」


 全員頷いた。

 皆に言っているが、自分に再度言い聞かせるためだ。

 ……焦らないように。


「よし。じゃあ、ピギー、モモエたちを守っていてくれな」


 俺が、首に巻いていたピギーに諭すように伝えるとピギーは、理解したのか「なうっ」と返事をした……ような気がした。


 ……動物的な勘でなんとなくこうなることを予期していたのかな?


 ……いや、それだったらわざわざ付いてこないか。


 ……謎だ。


 俺は、歩き出し、皆の立ち位置よりも30、40メートル先に進んだ。


 なるべく、この先は通らせない。


 さあ、来るなら来い!

 飛竜野郎。


 バサッ、バサッ、バササッ……


 バサバサバサバサバサッ……ヒューーーーーーーン!!


 一斉に山を飛び立った。


 10体全部。


 言い出しっぺの俺が、率先して実践して皆に見せていかなければいけないね。


 本気だが全力ではないというのが、どういうことなのか。


 できれば、半数以上は俺1人で狩っておきたい。


 先行して2体がまずやって来た。


 やはり、あいつらは頭が切れる。


 今回に限ってはそっちの方が好都合だけどさ。


 ギャーーオーー……


 グワーーオーー……


 ワイバーン狩りのエキスパートともなれば、声だけでオスかメスかを判断できるんだ。


 最初のがメスで、次のがオスだね。


 ……まあ、2頭とも仲良く逝ってもらうけどね。


「『グラビティアーム−スカイフォール』」


 ジジジ……ヒューーーン、ドッサーーン!


 連なって飛ぶワイバーン2体を地面に叩き落とす。


「『メージスタッフ』、『ハイウインドーエアサイス』」


 ヒューーーン……シュルシュルシュル……シュッパーーーン!


 地に堕ちた2体の首を、強化した『風の鎌』で切り落とす。


 首尾よく倒せた。


 さて、次は……


 ……4体で来た。


 こちらを警戒してか、今度は空中で互いの位置を入れ替えたり、横一列にはならずに左手前を先頭に少しずつ時間差で向かってくる。


 下から見ると斜めに線を引くように並んでいる……

 いわゆる「雁行の陣」というやつだ。


 こうやって、相手の動きに応じて戦術を変えてくるのがこのワイバーンという魔物のいやらしさだ。


 実にいやらしい。


 その恵まれた体躯と魔力だけで満足していればいいものの……

 知恵までついていたらただの「怪物」だよ。


 俺はギリギリまで敵が近付いてくるのを待った。


 グワーーオーー……ブバァーーーーーーーーーーー!!


 4体の内、1体がブレスを吐いてきた。


 ワイバーンのブレスって生息地によって違っていてなかなか興味深いんだ。

 例えば、岩山だったら『土』属性、海の近くだったら『水』属性、火山だったら『火』属性みたいに、ね。


「『ハイストーン-シェル』」


 ガガガガガガガガガ……ボロボロボロボロ……


 どうやら、今回は、1番一般的な『風』属性らしい。


 そして、そんな分析をしている暇はない。


 ブレスを吐いた個体以外の3体が左右を旋回してこちらに向かってくる。


「『ボイスバッグ』」


 グワッ……


 ギャワッ……


 グワッ……


 ……ちっ、1体逃したか、後ろのみんなの方へ向かってしまった。


 でも、まずはとにかくこの3体を確実に仕留めなければならない。


『ボイスバッグ』は範囲内の声を消す魔法だけど、同時に俺以外は『風』も使えなくなる。


 普段から『風魔法』を使って移動の速度を高めているこいつらには効果的な魔法だ。


 一気に飛行のスピードが鈍くなった。


「『ニードルラッシュ』-『プロテクト』」


 シュパパパパパパパパパパ……ズガガガガガガガ……


 ギャーオーーーーーーーーーー!!


 右から回ってきた1体の両目に『硬化』させた『針』の連撃。


「『ステップ』」


 数歩分、後ろに下がって……


「『ガンランサー』、『プロテクト』」


 ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ……ガンッ、ガンッ、ガンッ、ガンッ!!


 グワォーーーーーーーーーーーーー!!


 左から迂回してきた1体の両翼目掛け、今度は無属性の『槍玉』を確実に当てる。


 右から飛んできた1体は視力を奪われて目標を失い、左からきた別の1体は翼の付け根を破壊されて地に堕ちた。


 このタイミングで、当然もう1体迫ってくる。


 知恵があるからね……


 だからこそ、読みやすくもある。


 グワーーオーー……


 正面から、その巨大な足とその先端に付いた鋭い爪を見せて、猛禽類の魔獣がネズミ型の魔獣を捕らえるかのように襲い掛かってきた。


 だから、十分に引きつけて……


「『オニヒトデ』」


 ドォーーーーーーーーーーーーン!!


 グギャーーーーーーーーーー!!


 両爪、両足を粉砕する。


「『ハイウインド-エアサイス』」


 ズバッシャーーーーーーーーーー……!!


 失明して宛てもなく飛び回っていた別個体の首を切断……


「『エンジェルウイング(レフト)』」


 魔力を強化した上で……


「『ハイストーン(石槍)』、『れんぞくま』」


 ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ……


 グサッ、グサッ、グサッ、グサッ、グサッ、グサッ!!


 グワォーーーーーーーーーーーー!!


 ギャォーーーーーーーーーーーー!!


 俺は、翼にダメージを負ったことで、地面に仰向けになってもがいていた2体の息の根を止めた。


 ワイバーンがドラゴンよりもまだマシだと思うのはこの点だ。


 前足を持たず、飛行能力を失うとただのトカゲ以下になってくれるところ。


 さて、後ろは……


「「『ハイライト』、『プロテクト』」」


「『立方釜蔵漠布りっぽうかまくらばくふ』」


「『サステイン-プロテクト』」


 ガンッ、ガンッ、ガシガシッ!!


 リバーが左右後方と天井に分厚い『土の壁』を作り、ディリカとレミが正面に透明の『光の壁』を作っている。


 モモエは全体の補強役だ。


 ワイバーンの個体が爪の強襲で彼らが建てた簡易的な「箱」をこじ開けようとしているが、今のところ強度は十分のようだ。


 俺はカーティスに目配せをした。


「『ハイファイア』、『ジェリーマジック』」


「『ハイストーン』、『ジェリーマジック』」


「『ハイファイア』、『ジェリーマジック』」


「『ハイストーン』、『ジェリーマジック』」


「『ハイファイア』、『ジェリーマジック』」


「『ハイストーン』、『ジェリーマジック』」


「『ハイファイア』、『ジェリーマジック』」


「『ハイストーン』、『ジェリーマジック』」


 赤色と黄色のゼリー玉を作りながら……


「『グランウインド』」


 ブワンッ、ビュオォーーーーーーーーーー!!


 ギャォーーーーーーーーーー!!


 ……理解が早くて助かる!


 後方を攻撃していた個体は、カーティスの『グランウインド』によってこちらの方へと戻ってきた。


「『ローリン』、『ローリン』、『ローリン』……」


 ゼリー玉を回しながら、ワイバーンを迎えに行かせる……


 ボボボボボボ、ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボボァッ!!


 ズガガガガガガガ……ガンッ、ガンッ、ガンッ!!


 ギャーーーーーーーーーオォ……


 2色のゼリー玉の爆発により、無事、仕留められたのを確認し……


「『ハイウインド-エアサイス』、『れんぞくま』」


 ヒュンッ、ヒュンッ……ズバッシュッ、ズバッシャーーーー!!


 地面に転がっていた2体の息の根も止めた。


 これで6体……


 残り4体だ。


 ここまでは順調ではあるけど、不安もある。


 残る4体の内、2体はこれまで倒した奴らと見た目はそんなに変わらないように思えるが、もう2体の方は、明らかに他のワイバーンたちよりも身体が大きい。


 それに、ワイバーンにはドラゴンの角の真似をしているのか、その額に突起がついているんだけど、遠目に見て、それも明らかに大きいんだよね……


 群れのリーダー格かね。


 さあ、正念場だ。


 相手はどのような手を打ってくるか……


 グゴゴゴァーーーーーーーーーーー!!


 ギュラララァーーーーーーーーーー!!


 ……しかも、あいつらも「番」かよ。


 ヒューーーーーーー……バサッ、バサッ、バサッ……!!


 ヒューーーーーーー……バサッ、バサッ、バサッ……!!


 リーダー格の2体はこちらまで100メートルほどのあたりでさらに上空に飛び上がった……


 ヒューーーーーーーーー……


 ヒューーーーーーーーー……


 他の2体は左右を迂回する。


 ……嫌な予感がするな。


 グゴゴゴァーーーーー……ブババババァーーーーーーーーーーー!!


 ……特大の『風のブレス』が向かってきた。


「『ハイストーン-シェル』、『れんぞくま』」


 こっちは2重だ……!


 ズガガガガガガガガ……!!


 ……どうせ、もう1回来るんだろ?

 「番」なんだから……


 ギュラララァーーーー……ブババババァーーーーーーーーーーー!!


 予想どおりではあった……


 ところが……


「くっ、まさかっ!?」


 別のブレスの向かった先が違った……


 ボンッ!!ズガガガガガ!!ピキピキピキッ……!!


「ぐぅ」


「きゃーーーー」


 パリィーーーーーーン!!


 「番」のリーダー格の、メスの方が放った『風のブレス』は、後方のカーティスたちの方を狙って放たれ、正面の『光の壁』を粉砕してしまった。


 ギュラララァーーーー……!


 しまった……!


 グワーーオーー……ブバァーーーーーーーーーーー!!

 ギャーーオーー……ブバァーーーーーーーーーーー!!


 迂回していた別の2体が、がら空きになった「箱の要塞」の正面に向かって、ブレスを放った……!

ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。

もしこの物語を面白い!と気に入っていただけたら、どうか、いいね、評価、ブクマ登録をよろしくお願いいたします。今後の執筆の励みになります。


大ピンチ……!

誰か、この状況を救えるのか……!?


次回、神秘体験……!


ノーウェと仲間たち(とブルート)の活躍に乞うご期待!


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