1-29『連座』(前編)
「それでは、決闘交渉です。進行はこのまま貴方にお任せしてもよろしいですか?」
ジャネット先輩はリバーに尋ねる。
「はい。ですが、その前にもう3点確認させて下さい」
リバーは指で3を作った。
「なんでしょう?」
リバーは中指と薬指を折りたたむ。
「まず、1つ目。ここからは決闘条件の確認交渉になりますので撮影させていただいてもよろしいですか?」
「もちろんよ。立会人に確認してもらわなければいけないですもの」
「ありがとうございます」
リバーが一礼したあと、レミが自身のマスボと三脚を取り出した。
一度ソファから立ち上がり、全体が映る場所に設置してから再び腰を下ろす。
「2つ目は、今話題に挙がった立会人についてですが……」
「あら、私たちの顧問の先生ではいけないのですか?」
「はい。先ほど、ジェシーさんや幹部の方々の動きについて、ジャネット様は元より、顧問の先生も『監督責任』があるとこちらが言及致しました所、お認めいただきました。で、あるならば、今回の決闘においても、皆様方を監督する役割に徹していただきたく存じます。立会人はこちらで別の方をお連れしてもよろしいでしょうか。そもそもの経緯から考えて、打ってつけの方がおられるでしょう?」
「……そう来ましたか……ですが、筋は通っていますわね。私に異存はありませんが、貴方たちもよろしいかしら?」
「「「「「はい……」」」」」
顧問の先生を決闘の場に召喚し、別で立会人を設ける提案をしたのは前回の決闘後のひと悶着を考慮してのことだ。
こういうことがあったよ、とリバーに話したら、上手く交渉に盛り込んで肉付けしてくれた。よくそこまで機転が利くものだなと感心する。
「ありがとうございます。最後に3つ目。今回の決闘は非公開とのことですが、私共、ノーウェ様の友人の観戦を許可していただいても?」
「もちろんですわ。撮影することは認めませんが、観る分には構いません。どちらにせよ、人の口に戸は建てられないものですし」
「ありがとうございます。確認は以上です。それでは、これより決闘で対戦されるお2人の直接交渉に移らせていただきます」
何か、やたら畏まった場になってしまったな。
先輩とリバーだからなのか、それともこれが本来の決闘の交渉なのか。
「わ、私は!『戦闘方式』を望みます!!」
「ジェシーさんは『戦闘方式』をお望みとのことで了承致しました。いかがでしょうか?ノーウェ様のご希望は」
「良いけど、条件がある」
「は、条件だと!?相変わらず小賢しい……」
「これ、条件設定の場じゃなかったっけ?」
俺は首を傾げてリバーの方に向く。
「その通りですね。その様子だとジェシーさんは特に条件を選ばないようですので、自由に決めてよろしいのでは?」
「な、そんなことは言っていない!!」
「けど、『戦闘方式』としか言ってないじゃん。それならなんでも良いんだろ?それとも得意な条件でなければ俺に勝てないということかな?」
「そんなことあるわけないだろう!それなら、そちらの条件を言ってみろ!?」
「じゃあ、お言葉に甘えて。『戦闘方式』を選ぶってことは、あんたは俺を今すぐにでも徹底的にボコボコにしたいんだろう?」
「ああ、無論だ!二度と卑怯な真似ができないように、その性根を徹底的に叩きのめしてやる」
どうやら、相手も乗って来たようだな。隣に公爵令嬢である派閥の長がいることもすっかり忘れているようだ。
「なら希望通りにしてやるよ。条件は『魔法をより多く相手に打ち当てた方が勝ち』というのはどうだい?」
「……それは魔法を使っていればなんでもよいのだな」
「もちろん。魔法の種類や質や行使の仕方は問わない。仮に杖で直接相手を叩いたとしても魔法を発動させて杖に付与させているならそれも認める」
「なら、こちらも同意する」
「ただし、制限時間を短く設けたい。この決闘をだらだら長引かせたくないしね。あんた弱そうだし、どちらにしてもすぐ終わるだろうけど」
「な、何だと!?ふざけるなっ!」
俺は指で3を作る。
「3分。あんたを打ちのめすにはそれだけあれば十分だ。どうだい?」
「わかった。吠え面かくなよ」
「わんわん」
「貴様……」
「それでは、決闘条件は決まったようですね。決闘方式は『戦闘方式』、条件は『制限時間3分以内に、相手に対して魔法の発動による攻撃をより多く当てた方が勝ち』ということでよろしいですか?お二方とも」
「うん」
「同意する」
ジャネット先輩は少し思案顔な気がするけど、特に口を挟む気はないようだ。
ひょっとしたら、この決闘の勝敗自体に彼女は拘っていないのかもしれないな。
「承知致しました。では、次に勝者の権利についてですが、まず、ジェシー様のご希望をお聞かせください」
決闘は持ち掛けた方が先に勝者の権利を希望するのが通例だそうな。
個人同士で話が進んでいる場合はその限りではないが、今回はリバーの進行だからその辺りも作法に則っているのだろう。
「私は、そこの男がジャネット様から奪った寮部屋の返還と先の決闘の無効を要求する」
まあ、予想通りだな。
まるで再決闘をするときのような要求だ。
この辺りは、事前に示し合わせていたのだろう。
証拠に後ろにいる幹部たちが笑みを浮かべている。
反対に、ジャネット様は額に手を当てているけど。
「それは、かなり大掛かりな要求ですね。ノーウェ様はいかがですか?」
「断る。俺にメリットがない」
「な、なぜだ?貴様が勝てば500ポイントが手に入るのだぞ!?」
なぜと言われてもな。なぜそんな要求を相手が呑むと思うのか理解に苦しむ。
決闘の無効を掛けるということは、俺が勝てば、前回の決闘分の利益を俺が得られるということだ。500ポイントが追加で俺に入ると言いたいのだろうが、もう1つの豪華な部屋は別途くれるつもりなのかな?
「別にそんなに生き急いでいないのでね」
「ジェシー、貴方、500ポイントが手に入ると言っていますが、もし仮にノーウェ君が勝った場合、決闘を行った貴方にマイナス500ポイントがついてしまうのよ?それを分かって話しているのですか?」
「覚悟の上です」
「はあ……」
頭を抱えるジャネット先輩。
覚悟だって。言ったね、覚悟って。
「どうしましょうか?ノーウェ様。このままだと交渉が決裂となります。よろしければ、ジェシーさんの提示した500ポイントと現在お使いになられている部屋に見合う限りのものをノーウェ様の方からも提示してみる、というのではいかがでしょうか?」
「それでいいよ」
「ありがとうございます。ジェシー様はいかがでしょうか」
「……無理な要求でなければ認める」
「ありがとうございます。では、ノーウェ様。まずは500ポイント分に代わる要求をお願いいたします」
「じゃあ、俺が決闘に勝った場合、ジェシーは翌日から1か月間、フードパークの給仕として働くということで。もちろんメイド服でね」
「「「「「!!!!」」」」」
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次回、21:10より後編です。
ノーウェと仲間たち(とブルート)の活躍に乞うご期待!




