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1-20『窮鼠、ゴミを片付ける』

「ぐはぁっ、な、なんで?どうなってやがる?」


 ガンッガンッガンッ……

 石の塊が次々とゴミクズに襲い掛かる。


「ゴホッ、ガフッ、ゲヘッ……ぎひぃーーーいでぇ、いでぇよーーー」


 先ほどまで操っていた石たちからの思わぬ反逆に遭い、困惑し、わめき、泣き叫ぶゴミクズ。


「おいっ、おいっ、どうしたんだよ、トラスカム!」


「ちょっとーー!?一体何っ!?」


「キャー」


「おいっ、やめろっ!」


「黙れ」


「「「「……っ!!」」」」


「次、決闘中に声を発したら、お前たちの貴族籍と歯を根こそぎ全部引っこ抜いて、今後一切何も喋れなくしてやる……もちろん、『決闘』でな!?」


「「「「……っ!!」」」」


 顔を青くして黙るゴミの取り巻きのクズ共。


「うぐぅ……お前、な、何をじたんだぁ……」


 右腕で左肩を抑えるゴミクズ。その肩からは血がドクドクと流れ出ている。


「お前のしたことを返しているだけだ」


「な、なんだとっ?」


「お前にドブねずみの俺くらいの体力があるといいな」


 そう言ってニッコリ笑ってゴミクズ男を見つめる。

 青ざめるゴミ。

 自分が俺にした攻撃がどれほどのものだったか、想像がついたかな?


 その周囲に血まみれの石塊が3つ、4つ、5つ集まっていく。


「ひいっ!『土塁甲どるいこう』」


 ゴミは自身の周囲に土の壁を作って囲った。

 堅固な防護によってこの場をやり過ごすつもりなのだろう。

 そのまま一生出てこなければいいのに。


「無駄だぞ」


 ガガガガガッ……ガガガガガッ……ガリッガリッ……


「ひいいっ!!」


 ガンッガンッガンッガンッドガガッ……


 土の壁を作ろうが、火柱を立てようが、水の中に逃げ込もうが、たとえ風で追い返そうが……

 一切が無駄。


 射程内であれば、発動者が受けたダメージ分をそっくりそのまま返す。

 それが、この魔法『ブラッドバイト』


 元々は森に住むねずみ型の魔物である「ブラッドラット」の専用魔法だ。


 ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!


「ぐひっ、がふっ、げほっ、ぎへっ、ごはぁっ」


 ブラットラットはあの森の中でも最弱の魔獣(獣系の魔物)。

 肉食系魔獣の餌となり、大きな草食系魔物に踏みつけられれば簡単に絶命してしまう。森の中でもカーストの最下層に位置する部類だが、この魔物を中途半端に痛めつけると手痛い反撃を受けることがある。


 ブラッドラットは、攻撃を受けて血を流すと、自身の魔力のこもった血がべったりとついた物資を乗っ取り(『血塗られた支配』)、攻撃した相手に向かって反撃(『しっぺ返し』)を行う。

 血を流した分、ダメージを受けた分だけ攻撃を返すので、相手はブラッドラットのダメージ分、傷つくことになる。


 ガガガガンッ!


「ごぶばべびべしっ……ぐひゅーぐひゅー」


 と、言ってもそこはねずみ。実際には、ダメージを返すと言っても、体力が大幅に上回る相手にとっては微々たるもので、ふいの反撃によって驚いた相手が撤退する程度が関の山な魔法でしかないのだが、これが人間同士の戦いの場合、話が大きく変わる。


「射程から外れたか……」


 再び吹っ飛ぶゴミクズ男を観察する。

 この魔法の欠点は『しっぺ返し』を行う際、射程距離があること。


 血まみれの石塊攻撃により対象が後方に吹っ飛んでしまったおかげで、さらに追撃していた血まみれの砂利の方は射程範囲外となり、地面に寝転がるゴミクズの手前で落ちてしまった。


『血塗られた支配』の方には射程がなく、その効果は続いているので、近づいて射程範囲に入れば、攻撃を再開できるのだが、思ったより足が動かず、前に進めない。

 

 回復が少し甘かったか、それとも血を流し過ぎたか……


「ぐぼぇ、ぐぶぃー。ゆるざんっ、ゆるざないじょぉーーー」


 ゴミクズらしくなったトラスカムが地面でもがきながら、何とか立ち上がろうとしている。

 その汚らしい茶髪の長毛は、泥と砂と血にまみれたおかげで一層汚れ、ぐしゃぐしゃになっている。

 口の中に血が溜まっているのか、それとも砂利が舌や粘膜にまとわりついているのか、濁音ばかりで、ちょっと何を言っているのかわからない。


 もう、今さら許しは乞わないけどな。


 必死の形相で上半身だけ起き上がり、立ち膝となったゴミクズが周囲の砂利を集め始める。

 魔力を振り絞っているのだろう。周囲にもやがかかったかのように、砂利はゴミクズを包み込んでいる。


 戦ってみて分かったけれど、この男は見た目や言動ほど軽率ではない。戦いにおいては冷静に戦局を判断する賢さを持っている。クズかつゴミではあるけど。

 次で勝負を決めるために砂利を鋭利で角ばったものに変えつつ、自分の周囲から離さないで浮かせている。


 次の攻撃への備えであると同時に、「血まみれの砂利」対策でもあるのだろう。


「だが、却って助かる」


 俺は右を向く。

 目に映るのはブルートとモモエの姿。


 ブルートは、いかにも「え、俺?」という表情をしながら、自分の右手の人差し指で顔を指差している。おっと、ローブは落とすなよ。


 ブラットラットは、森でその命を最も狙われやすい魔物ではあるが、仲良しの魔物もいる。別に会話をしているわけではなく、共生しているだけだが。


 木の葉舞う秋、茸と一緒に地面に落ちている木の実を狙って、ねずみは豚の足跡を追っていく。互いを守り合い、寄り添うように。

 そうやって賢く生きているから、今もまだ絶滅せずに()()()で繁栄しているのだ。

 仲間や家族を増やしながら。


「『血風小竜巻(ブラッドウィンド-コルナード)』」


 昨晩、ブルートに見せた魔法『コルナード』は『ブラッドバイト』の『しっぺ返し』よりも射程が格段に長い。

 小さな旋風つむじかぜがひとつ、またひとつとできあがり、血塗られた砂利を巻き込んで赤い小竜巻となる。『ウインド』の支援を受け、トラスカムが張るもやの方に上昇しながら向かうと、もやの砂をも巻き込んで、その勢力を増していく。


「ぐ、ぐるなぁ……ごないでぐでぇーー」


 赤い小さな竜巻はゆっくり、ゆっくりと近づいていく。


「ゆるじでぇ、なんでもずるがら、ゆるじでぐでぇーーー」


 許さないよ。これは狩りでも、相手をなぶるショーでもないからな。

 正当な決闘だから。


 ズガッ……ズガガガガガッ……ジュリジャガガガガガガ……ババジジガガガガガガ……

 ガガガガッガガガガガガッガガガガガガガガッガガガガガガッガガガガガガ…………


「あばばばばばいびびびびびうぶぶぶぶぶえべべべべべおぼぼぼぼぼぉっ!!」


 血の砂嵐は、勢力を増してゴミクズの身体に上陸し、その身の表面をズタズタに切り刻んでいく。

 血と砂の雨を周囲にまき散らしたゴミクズ男のトラスカムは、まるで土下座をし、これまでの所業のすべての許しを乞うかのように、俺のいる方に向かって脱力しながら顔から地面へと倒れこんだ。


 許さないけどな。


「そこまでぃーーー勝者、ノーーーウェエエイィイイーーー!!」


 立会人のキャリーさんが高らかに宣言をする。


 2人で俺のローブを抱えながらこちらに駆け寄るブルートとモモエ。


「な?ゴミ掃除にはちょうど良い魔法だったろ?」


 第3決闘 VS『土屑』のトラスカム戦 結果『勝利』

 ノーウェ=ホーム 通算2勝0敗



ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。

もしこの物語を面白い!と気に入っていただけたら、どうか、いいね、評価、ブクマ登録をよろしくお願いいたします。今後の執筆の励みになります。


ノーウェと仲間たち(とブルート)の活躍に乞うご期待!


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