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3-70『絶対絶命』

ぐはっ……


 かなり効いた。


 俺の放った『ハイアイス(氷槍)』を食らって倒れたコイン先輩は、ゆっくりと立ち上がると、こちらが相手の魔法の判別と思考をする間を奪うように、種類の違う魔法の連撃を繰り出してきた。


 ……のみならず、それまでに放って散らばった数種類の大きさの石をすべてごちゃ混ぜにして再利用してきた。


 それはさすがに予期できなかったよ。


 1番でかいのが脇腹から腰にかけて、中くらいのは肩と両足に、小さな硬貨サイズはもうあらゆる場所に当たったが咄嗟に『シェル』で頭だけは守れたのは救い。


 さて、回復……と思っても。


「『武石集中射ブロックチューシャ』」


 ……ほらね?


 起き上がってからのコイン先輩は、まったくの別人かっていうくらい、情け容赦なくなっている。


 倒れる以前に感じていた傲慢さが「サヨナラ」とばかりに先輩と喧嘩別れしてしまったようだ。


「『ハイウインド』『れんぞくま(ハイヒール)」


 それはつまり、正真正銘、一分の隙もなくなったということになる。


 さっき、一太刀……いや、氷の槍を一突き入れられたのは、その防御体制にまったく隙がなくても、心理的な隙があったからだ。

 俺はその一点を文字通り突いた。


 でも、今はそれがまったくない。

 見える限りでは。


 さて、どうするか……


「『ハイウインド-ステップ』」


 脇腹の痛みは治まった。

 他の部位はズキズキするが仕方がない。


 これは、虎の尾を踏んじゃった、というやつかな?

 いや、竜の逆鱗に触れる、だっけか?


 ……どっちも、ちょっと違うかな。


 あれだ。

 魔物の中で、突然ブチ切れて1段階強くなるやつ。


 狂気を伴って、それまでよりも、攻撃に至るまでのスピードが速くなり、火力も増したりしてくる。

 そういや、ドラゴンもその類だな。


 その類の魔物の場合、スピードや攻撃力は上がっても、戦法自体は却って単調になるので、やりやすくもあるのだけれど、先輩の場合は、その思考もどんどん冴えてきているように感じる。


「『武石集中射ブロックチューシャ』」


 戦術でも、こちらを惑わせるような攻撃を仕掛けている。


 今、俺が1番警戒しているのは、最後に使った、あの大中小の石をごちゃまぜにかき混ぜて放ってくる魔法だ。


 それを警戒するがゆえに、的を絞らせないように舞台の周りを飛んでいるのだが、それに対して、先輩は周囲に積んでいたブロックを崩しながら放ってきている。


 それが悩ましい。


 防御から攻撃のスタイルだったのが、ニュートラルになっているような気がする。

 その方が、こちらも攻め手が増えるので歓迎だけど。


 だが、却って不気味さは増した。


 せっかく積んでいた防護壁を崩し始めている理由。


 攻撃がその大ブロック一辺倒になりつつある理由。


 どこかのタイミングで、あの大技を繰り出してくるのか……?


 それとも、まったくべつの……さらに1段上の秘策があるのか……?


 両方を考慮して戦わなければならない。


 当たった瞬間に決着がついてしまいそうなブロックを避けながら。


「『流通貨幣投ぜになげ』」


 かと思えば、こうやって小技も混ぜてくる。

 ホント、やんなっちゃう。


「『ハイファイア-スプラッシュマジック』」


 ボボボボボ……ビュンッ、ビュンッ、ビュンッ、ビュンッ…………


 逃げ回ってばかりもいられないが、近づこうにも近づけない。


 あの『邪愚鍋ジャックポット』とかいう大技をやられると困る。

 やられるにしても、こちらも決めるつもりでいかないと次がなくなるから。


 誘い込んでいるのか、もう少し情報が欲しい。


 ……気づいた。


 スタイルを少し変更したが、先輩はまだまだ防御から攻撃という基本戦術を忠実に維持している。

 巨石攻撃を放つことでこちらに心理的な動揺を与えつつ、さっき放った大技をちらつかせて、懐に入っても大惨事になるぞ、と牽制する。


 これまでのスタイルに心理戦が加わる分、さらにこちらが攻め辛くなっている。


「『ハイファイア(火矢)』、『フロート』」


「『武石集中射ブロックチューシャ』」


 ビュンッ、ビュンッ、ビュンッ……


 ブオッ、ブオーッ、ブオーーーン……


 バァーーン、バァーーン!


 爆発音……


 でも、当然相殺はされてくれない。


 迂闊に攻められないのであれば、ここは1つ……


「『壁ぬい』」


 ペタリッ……!


「……?」


 ズッ、ズッ、ズズッ、ズズズッ……


 ……

 …………

 ………………


 ……意味ねえっ!


 やっていて自分が恥ずかしくなった。

 飛んでくる四方体の石に張り付いたところで、何ができるわけでもなし。


 まあ、一瞬の時間稼ぎにはなったけど。


「『武石集中射ブロックチューシャ』」


「『ハイストーン(石矢)』」


 ブンッ、ブンッ、ブンッ……


 ブオッ、ブオーッ、ブオーーーン……


 ガンッ、ガンッ、ガンッ……


 俺の方の『石矢』は当然弾かれて粉砕される。


 ……あっ、なんかアイデアが浮かんできそう。


「『壁ぬい』」


 ペタリッ……!


 面白いからもう1回やってみる。


 ……

 …………

 ………………


 ブオーーーーン……!


 バーーーン……!


「『身代わり』」


 寸前で飛んできた石と入れ替わる。


 うおおっ、危ねえっ!

 巨石のサンドイッチ。


 危うく潰されてペシャンコになるところだった。

 勢いよく開けられた家の扉と壁に挟まれたヌメリトカゲじゃあるまいし……


「『ハイストーン(石槍)』、『れんぞくま』」


 ブンッ、ブンッ、ブンッ……


 ブンッ、ブンッ、ブンッ……


「『流通貨幣投ぜになげ』、『武石降離ブロックコーリ』」


 中小の散弾で対応してきたか……


 ズッ、ズッ、ズズッ、ズズズッ……


 ……まただ。


 折を見て、防御壁を動かしている。


 少なくとも俺にその距離を近づけているから、何か意図があってのことなのは確か。


 ここまでの、俺の攻撃に対する反撃をみても、先輩は特段守備を固める意識はない。

 むしろ、強い攻撃を放ち、絶えずこちらにそれを意識させつつ、懐に入れば何かあるぞ、と思わせることで、こちらの攻撃を絞ったものに誘導している。


 では、あの防御壁の移動は……


 答えは割とすぐに出た……


「『ウインド-ステップ』」


「『武石浮遊ブロックレビィ』」


 ブワッ、ブワッ、ブワッ、ブワッ、ブワッ、ブワッ……


 4、5、6、7、8……


 四方体の巨石がいくつも空中に浮かぶ。


 ……マジかよ。


 空中も塞がれるか……


 ……結局、判断は一か八かになるな。

 迷っていても仕方がない。


「『フロート(解除)』」


 このまま、巨石に囲まれて空中で逃げ場を失う前に、俺は自ら地上に降りる。

 ちょっとあのサイズの石を複数『フロート』書き換えするのは困難だし。


 先輩の立つ地点から30メートルくらい離れた距離。

 その間に石の壁が両サイド、ご丁寧にも道を作ってくれている。


 コイン先輩も、ここまでの俺の動きについては、想定しているだろう。


 そこから先、どちらの選択肢を選ぶのか?

 その判断を、俺と先輩、双方が迫られる。


「『ハイウインド』」


 思い切りが肝心。

 虎穴に入らずんば虎子を得ず。

 もうすでに、虎の尾を踏んじゃっているしね……


 ズズズズズ……


 壁が一気に狭まる。


 そっちで来たか……ならば!


「『ハイウインド-フロート』」


 とりあえず、上空に逃げる。


 ブワッ……ブワッ……ギュイ―――――ン!


 おいおい……


 追ってこれるのかよ!?

 しかも、後ろで浮いていた10個ばかりの巨石もついでに……!?


 ガチッ、ガチッ、ガチッ……ガチッ、ガチッ、ガチッ……


 ……ああ、最悪の一手だ。


 浮かんだ巨石がその並びを変えながらこちらに迫ってくる。


 空中だから逃げられると思いきや、そうはさせじと、石と石が結合し始めて、空中で壁を作り、俺の退路を1つずつ潰していく。

 空中、前後左右に石壁の面が造られ、こちらの行く手を阻む。


「『フロート(解除)』


 なので、再度、地上に降りる。


 ギュイ―――――ン……ギュイ―――――ン……バンッ、バンッ……


 当然追ってくる……


 そして、真上からも、その天井部分が組み上がって……


 会場の光が巨石の壁によってどんどんその線の数を減らしていき、最後にはまったく通らなくなって、俺は上下左右、四方八方を壁に阻まれることになった。


「『立方体巨石打運キューブロックダウン』」


 ギュイッ、ギュイッ、ギュイッ、ギュイーーーン……


 そして、暗闇の中、とどめを刺そうというのか、巨石の壁は俺を挟まんと全方向から迫って来た……


ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。

もしこの物語を面白い!と気に入っていただけたら、どうか、いいね、評価、ブクマ登録をよろしくお願いいたします。今後の執筆の励みになります。


ノーウェ、危うし……!

石のCUBEからの脱出はできるのでしょうか?


次回、強い魔法……とは?


ノーウェと仲間たち(とブルート)の活躍に乞うご期待!


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