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3-67『地力の差』

 『石嶺せきれい』のコイン=ドイル。

 3年生(17才)。

 入学時に派閥【堅切鋼】を結成し、数々の決闘を戦い抜き、140の勝利回数に対して、敗北は僅か7回。


 その堅実な戦いぶりと強力な土魔法によって現在の地位を確固たるものにしているわけだが、7度の敗北の内、現役(同学年以下)で彼を破ったことのある人間は、たった3人しかいないそうだ。


 派閥ランク……


 第1位、『迅雷じんらい』のイクス=トスト……

 第2位、『光厳こうごん』のメーネス=アンフェ……

 第3位、『焔海えんかい』のパージ=ジョート―……の3人。


 他の上位ランクの人は、派閥間決闘はともかく、個人の「戦闘方式」での直接対決においては、最高でも引き分けまでのようだ。

 つまり、コイン先輩は、下級生に1度も負けていない……


 ここまで、俺のマスボから洗い出した情報。


 今回の決闘に挑むにあたって、俺は先輩の過去の決闘を観察して分析をすることはしなかった。


 戦歴のような情報はともかく、実際の決闘での戦術や戦法のビジュアルイメージによる先入観を持ちたくなかったからだ。


 べつに、公平さを重視しようなどという、先輩のような奢った考え方をしているわけじゃない。


 直に得られる肌感覚を重視したいから、というのがその理由だ。


 結果、想像どおり……いや、想像をかなり上回る形で、コイン先輩の魔導師としてのその実力を肌で感じることはできた。


 堅く、重く、隙が無い……三拍子揃った印象というのが率直な感想。


 過去に、先輩を下した他の人たちは、どうやってこの鉄壁さを攻略できたのか、気になる。


 その魔法の性質と、決闘中の先輩の発言から鑑みるに、おそらく、攻略法として考えられるのは……第一に「速さ」。あとは、「広域」に「高火力」だろうかね。


 先輩は、さっき、石のブロックを積み上げながら、俺に言った。

「なぜ手を打とうとしないのか?」と。


 裏を返せば、その言葉は、先輩自身、そこにしか攻略法がないと思っている証左だ。


 先手必勝。

 先輩が、自陣を固めながらの洞察と分析を終える前に倒すのが1番確率の高い倒し方ということなんだろう。


 つまり、1度、その防御体制が整ってしまったあとでは、時間内に倒すことがさらに困難になるということを意味する。


 それほどに、先輩は隙を見せない男だともいえるわけだ。


 それに対抗する俺の手札はそう多くはない。


 鉄壁の守りを破る手段として用いることができる魔法(青魔法の中で)は、現状、考え付く限りで……


 『スプラッシュマジック』-無属性の散弾。

 『マジックボム』-魔力を分解する爆弾。

 『コルナード』-小さな竜巻(複数同時発動可能)。

 『モスケンストロー』-物質に風穴を開ける。


 威力があって、この場で使えるものはこんなところか?


 威力のある魔法はまだまだあるんだけど、現状この場で、使用するのは憚れるものばかりだし、この戦いでは極力、頼りたくはない。


 ……そう考えると、俺もまた傲慢だな。

 魔導師の性ともいえる。


 あとは……

 

 『フロート(ステップ)』-範囲指定した物質を浮かせる魔法。

 『メクルメクレオニクル』-自然物と同化する魔法。

 『シェル』-見えない防御膜を任意に張る。

 『身代わり』-物質と自分を入れ替える。


 ……このあたりかな。


 おそらく、『マジックパフ』や『壁ぬい』は使いどころがなさそう……


 いや、工夫すればあるかな。


『王手待ち』は……もしものときにとっておこうか。


 ……なんか、忘れている気がする。


 ……ああ、そうだ。

 せっかくだから、あいつらのためにも、あの銭ゲバが教えた『結界魔法』に似たものを1つ使うとしようか……


 べつに、張り合っているわけじゃないんだからねっ!


 さて、ギャップの修正とシミュレーションは終わった。


 いざ、実践!


「……終わったか?」


「わざわざ、待ってくれていたんですか?」


 思考の間、俺は『ウインド-フロート』を使って、先輩の頭上、舞台中央の周囲を飛び回っていた。


「一応、先輩だからな。それに、俺もお前の『魔導師』としての底の深さを見極めなきゃいけねえんだ。下手に攻撃してあっさり倒れてもらっても困るんでな」


 俺が周囲をぐるぐると回っていても、まったく意に介さないコイン先輩。

 先輩の中では、俺は、さしずめ、大きな牛の周囲を飛び回る蝿……って感じかな。

 尻尾でビタンッでやられてしまう程度なんだろう。


「先輩ね……」


 思わず笑みがこぼれてしまう。


「……どうした?」


 俺の周回のスピードが弱まったのを見てか、コイン先輩は、四方体のブロックを2、3個浮かせて、その周囲に漂わせている。


「俺の底は深くないですよ。むしろ浅い……ただ」


「……ただ?」


「……無限に広いですけどねっ!『ファイア-スプラッシュマジック』」


 ゴオッ……バヒュンッ……ババババババ……


「深み」という言葉は、むしろ先輩たちのような、属性魔法のスペシャリストのためにあるような言葉だ。


 たとえ、1つの属性魔法であっても、その魔法の威力、形状、効果の限界ギリギリまで追求できるのであれば、それこそが「深み」と呼ぶべきものだろう。


 対して、俺の魔法は、『赤』にしても、『青』にしても、大した深みはない。

 威力に限りがあるからね。


 だが、その組み合わせは無限にある。


 この決闘は、それを証明する場所だ。


「その技はもう十分に見たと思うがな『嶺護れご』」


 バババババ……


 避けるまでもないと言わんばかりに、コイン先輩は、石のカーテンによって、俺の放った炎の散弾を事も無げに防ぐ。


 一応、Cランクの魔物の魔法なんだけどな……よほどの固さらしい。


「『武石ブロック』」


 ゴオッ……


 お返しとばかりに、巨石が飛んでくる。

 俺は『ウインド-ステップ』を用いて、それを躱す。


 相手の攻撃のすべてを反撃して壊さなければいけないわけではない。


 それをしていると、こちらの攻める機会が極端に減ってしまう。

 かわせるものは、かわして攻撃することも大事。

 まあ、相手にとっての布石になってしまうから、リスキーではあるけど。


「『スプラッシュ-マジック』」


 ひと呼吸置いて……


「『ハイウインド(風矢)』『れんぞくま』」


 手数を増やす。


 限界まで……


 放射状に放たれた無属性の散弾に加え、風の矢を数発、上下に曲がりを加えて、一か所に集中した守りでは防げないように放つ。


 どれか1つだけでも、当たれば儲けものだけど……


「……『嶺御武石れごブロック』」


 ズズズ……


 ババババババババ…………


 コイン先輩は、先ほどの固い石のカーテンに加えて、周囲のブロック壁を操作して、自身の前に動かし、防ぐ。


「『武石ブロック』」


 その目の前で自身を守ったブロックを今度は攻撃に転用。


 俺の元に飛んでくる。


「『ウインド-ステップ』」


 こちらも再度躱す。


「『ハイウインド(風矢)』」


 矢を3本、さっきと同じように……


「……『嶺御武石れごブロック』」


「『マジックボム』、『ハイファイア(火矢)』」


 バーーーン……ボボボボアッ……


 ……行ったか?


「……悪いな。それも対策済みだ。『嶺御衣れごい』」


 もう1段階、守れるのかよっ!?


 本当に隙がないな……


 第2戦でリバーとハリーたちの相手をした2年生の先輩方がやっていた『領域支配』の発展版をコイン先輩も当然のように使えるみたいだ。


 彼らに比べて、先輩の纏い方は、より自然に発動しているように見える。


 石の壁やカーテンを破ったその先に、さらに鎧を纏っているんじゃ、本当に攻略に難儀する。


 攻撃は防御にして、防御は攻撃。


 それを体現する隙のない先輩のことだから、ここから数秒、本当に気を引き締めないといけない。


「『武石ブロック』、『武石降離ブロックコーリ』」


 ……ほら来た!

 連発。


 普通は、攻撃の切れ目、防御の切れ目に最大のチャンスがやってくる。


 だから、俺も、コイン先輩の放った巨石攻撃を避けた直後に、こちらの魔法を数発放っている。


 それに対し、先輩は、身に纏わせた石で防いだ直後に、すでに積み上げている巨石を操作して、攻撃を繰り出してくるんだ。


 その間、まったく澱みがない。


 彼が忠告していたとおり、この石のコンビネーションの準備が整う前に手を打つのが、本当は定石なんだろう。


 自然に纏った魔法の衣をどうやって剥がすかということと、離れた場所に用意してある操作可能な魔法の攻撃にどう対処するかということの攻守両面を求められる


 そして、その対抗策を考えている間にも、相手はどんどんとその術中にハマっていく……


「『ウインド』、『ハイウインド-コルナード』」


 ブワーーーン……スタッ……


 俺は、堪らず、その身を空中から地上へと移し、巨石から逃げ、追手として分裂して襲ってくる小さなブロックを風の旋風によって防ぐ。


 想定内といえば想定内……


 だが、それは向こうも同じ……


 中央でどっしりと構える先輩は、大技と小技を交互に繰り出して、俺の空中での行き場を奪い、地上に降りるように仕向けることで、狙った場所に降り立つように誘導していた。


 中央に移る前、最初の打ち合いのときから、打たれていた布石……


 ブワーーーン……


 地上に降りた俺の周りをびっしりと取り囲むたくさんのレンガサイズのブロックが、魔力を帯びて急に浮き上がり、中央の要塞内で指示を出す土(石)魔法使いの次の合図を待っていた。


 距離としては、ここまでで1番、先輩に接近しているんだけどな。

 おそらく、10メートルに満たない、正面の姿を確認できる。

 残念ながら、目の前には何個ものブロックが浮いて通せんぼしているけど。


「さて、頃合いか……そろそろ本気の総攻撃に入るとしようか。お前に耐えられるかな?ノーウェ=ホーム」


 ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ……


 縦20センチ、横10センチ、厚さ10センチほどの、石のブロックによる怒涛の総攻撃ラッシュが始まる……


 浮かぶ無数のブロックは、コイン先輩の魔力によって、我先にと一斉に俺の元に向かって攻撃を開始した……

ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。

もしこの物語を面白い!と気に入っていただけたら、どうか、いいね、評価、ブクマ登録をよろしくお願いいたします。今後の執筆の励みになります。


一気に大ピンチ……


次回、ノーウェはこの窮地をどうやって切り抜けるのか?


ノーウェと仲間たち(とブルート)の活躍に乞うご期待!


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