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3-47『阻害』

 絶対絶命のピンチ……


 レミから「花」を受け取ったミモレは、敵のチームリーダーである『土宮』のマリー=オネットの生み出した4体の土人形に四方を取り囲まれてしまった。


「オホホホ!哀れな袋小路のねずみね!?これでおしまいですわ」


「『サープラス-グルー』!!」


 敵が攻撃に入ろうかという土壇場で、味方のミスティの魔法が土人形の内、1体に振りかかる。


「ミモレちゃんっ!」


 咄嗟に放たれたミスティの魔法によって、1体の土人形が融解し、泥となってできた突破口に、レミが飛び込み、ミモレの腕を掴んで思い切り引っ張ると、さらには、その身を唯一の出口の方へと押し出した。


 ドンッ……


「きゃー」


 ドンッ……ドンッ……ドドドドドド……ボガガガガガガガ……


「レミちゃんっ!?」


「ううっ……」


 「花」を所持するミモレを間一髪救出したレミであったが、残る3体の土人形が変化し、無数の土塊になって襲いかかるその攻撃に耐えきれず、敢え無く地面に伏して気絶してしまった。


「あら?上手く逃げましたわね?流石にすばしっこいこと」


「でも、面は割れたのでし」


 ……そう。


 自分が犠牲になってまで、味方を守る戦略上の理由は、この決闘において1つしかない。


 その守った人物がキーアイテムである「花」を所持しているということである。


 この時点において、この決闘のプレイヤーである全メンバーも、いや、おそらくこの決闘を観ているすべての観客達にとっても、【紫雲】側のそれが誰であるかは、一目瞭然であった。


「全員で、あのオレンジ髪の新入生を狙いなさい」


「「「「「はいっ!」」」」」


「くっ、みんな!ここは1分間、何がなんでも死守よっ!?」


「「「「「う、うんっ!」」」」」


 一気に形勢が変わる。


「『サステイン-ハイアイス』」


「『サープラス-プロテクト』」



 ガンッ……ガンッ……ガガガガガガ……


 ボアッ……ボアッ……ゴオォォォーーー


 ビュー……ビュー……ビュー……シュゴァーーー


 ザバーン……シューーーー……ゴゴゴゴ……


 モモエとミスティによる再度の防御壁の造成により、敵の前線4人の魔法攻撃になんとか耐え忍ぶ……


 しかし……


「来るわよっ。『土身殴打ドミノック』」


「きゃー、『スプラッシュ-グルー』」


「もうっ、『グルー-アロー』」


 土の地面により自由に動き回る土人形がミモレの周囲に再び出現する。

 そんなミモレを3方から守るディリカ、パルメ、エメルダの3人が必死に応戦し、土の人形をなんとか1体ずつ破壊する。


 それでも、ジリ貧……


 形勢は刻一刻と【紅七星】の有利に傾いており、【紫雲】の6人は、苦しい戦いを強いられていた。


 それにしても、不思議なのは、メンバー間の完璧な連携によって、上手く相手の視界から覗けないように「花」を送ったはずなのに、レミからミモレに渡ったそのバトンワークが、相手に筒抜けであったことだ。


 相手陣営は、ミモレに「花」が渡ったことを完全に察知していた。


 このバトンワークは、前日にカーティスやリバーといった男子のメンバーに相手役を担ってもらいながらの実戦訓練で何度も練習し、あらゆるケースを想定して、どんな状況でも、属性と生育者のルールを守りつつ、相手に悟られずに渡し合えるようにと編み出した自信の戦術であった。


 それなのに、相手は、まるで事前に知っていたかのように、ピンポイントにミモレ狙いで土人形を配置してきた。


「やっぱりあの子の言うことは本当だったのね……」


「そのようですね……『魔女』の見通す力……」


 思い返すように呟くディリカに対し、前方で返答するモモエ。


 彼女たちに【紅七星】のメンバーであるルー=ネルネの称号の力を教えてくれたのも、同じく魔女と呼ばれる魔導師だった。


◇回想『フードパーク内』◇


「私の『小魔女』の力は、物質を細部まで見通す力だけど~、同じ『魔女』の称号でも見通す力が違うと言われているんだよね~」


 ダンジョン講義の授業でノーウェやモモエと一緒にグループワークを行なったサワーが、両肘をテーブルに置き、その両手で顔を支えながらレモン炭酸水をストローで吸っている。


「興味深い話ね。他にはどんな力があるの?」


 ディリカがサワーに尋ねた。


 若干の慣れ慣れしさはあるものの。

 その天真爛漫なサワーの話しぶりには嘘偽りはなさそうで、竹を割ったようにさっぱりした性格のディリカにとっても親しみやすいものであった。


「えっとね~。例えば『人の心を見通す力』、『遠くにあるものを見通す力』、『人の能力を見通す力』なんかは有名だよ~。私も修行を重ねたら見えないものも見えるようになるのかな〜って」


 その場にいる他の「アンバスターズ」たちも興味深々に聞いている。


 モモエだけは、ただニコニコしているだけであったが……


「それで〜、その【紅七星】に加入したルーセンパイはね?『未魔女』って称号なんだよ〜」


「へえ?あなたの称号とも呼び名がまた違うのね?じゃあその先輩は何を見通す能力なの?」


「え〜?それはなんか身内を売るみたいだからな〜」


「あー、やっぱり同じ『魔術協会』のー?」


 代わってレミが質問する。

 『魔女』は将来的に「魔術協会』に所属するのが一般的な進路なので、称号を同じくする者同士の仲間意識も強いようだ。


「うんっ。でも、ヒントだけなら教えてあげるね〜。センパイは『先を読む』力がすごいらしいよ?」


「「「「「先を読む力?」」」」」


◇回想終了◇


 ヒントという割にほぼ答えのような気がしたから半分疑っていたが、サワーの助言は正しかった。


 相手の参謀役であるルー=ネルネは先を見通す……つまり、未来が見えている。


 それがどの程度の範囲で、どの程度の解像度で見通しているのかはわからないが、1つだけ分かっていることは、このまま対策をできないでいるとずっと劣勢でい続けるということだ。


「しょうがない……予定よりだいぶ早いけどやるわよ!?」


「大丈夫!?まだ2分経ってないよっ!?」


 ミスティ始め、他のメンバーもディリカの提案に驚いている。


 ガンッ……ガンッ……ガガガガガガ……


 ボアッ……ボアッ……ゴオォォォーーー


 ビュー……ビュー……ビュー……シュゴァーーー


 ザバーン……シューーーー……ゴゴゴゴ……


 議論する間にも、敵の攻撃は続いている。


 もう少し工夫を凝らした攻撃に転じてきてもおかしくはなさそうだが、直線的な攻撃に終始しているのが逆に不気味だ。


 まだ序盤ということで、ある程度の力業によって、こちらを圧迫し、心理的な動揺を誘うのが、敵の前線部隊の目的なのかもしれない。


 そして、この単調な攻撃が今後も続くという保証はないのだ。


「このまま、手をこまねいていても仕方ないじゃない。私たちらしくないわっ」


「うーん、それもそっか!じゃあ、やろっ!」


「「「さんせー」」」


 6人は機を窺う。


 次の変わり目がチャンスだ。


 相手の攻撃に耐え忍びながら、ディリカたちは適切なタイミングを待った……


「2分経過ぁーー!」


 立会人の大声が霧の中にも響き渡る。


「行くわよっ!?」


「「「「「ファイッ!おーー!」」」」」


 再度、バトンワークを試みるメンバーたち……

 ミモレが手に持っていた水色の花は、他のメンバーの手に渡る。


「見えたでし!何をしようと無駄なのでし」


 手の位置だけでなく、今度は立ち位置も入れ替えて、流れるようなバトンワークを見せる。


「オーッホホホ!そろそろおしまいのようね」


 今度こそ絶対に相手からは見えない「花」のバトンワーク……


 しかし……


 手を握り込むディリカの周囲に先程と同じように土人形が現れる。


「『溌合上手ポップアイジョウズ』」


「ど、どういうことでしっ?」


 ディリカは自分を囲う土人形に対し、右左それぞれの手に平べったい水の魔法を発動させ、弾き飛ばすように思い切り平手で放った。


 土人形の上半身が一瞬にして泥状化し、飛び散る。


 そして、そんなディリカの手の中には……「花」はなかった。


「やったぁ!成功だねっ!」


「一気に行くわよっ」


「『ハイファイア』」「『ハイストーン』」「『ハイアイス』」


 ゴオォーーーー!!ボワッ……!!


 ブーン……ドゴーーーン……!!


 シューーーー……ピキピキピキッ……!!


「きゃーーー」「うわーーー」「ひーーーー」


 敵の『未魔女』による先読みを見事に阻害した【紫雲】チームは、さらなる反撃の狼煙を上げた。

ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。

もしこの物語を面白い!と気に入っていただけたら、どうか、いいね、評価、ブクマ登録をよろしくお願いいたします。今後の執筆の励みになります。


「アンバスターズ」の秘策発動!


次回、会場で彼女たちを見守る人物とは……?


ノーウェと仲間たち(とブルート)の活躍に乞うご期待!


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