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3-34『ジョーカー』

 気まずい沈黙……


 俺は間違ってはいないはず。


 面識のない相手には、まず挨拶をして名前を伺うのが礼儀のはず。


 どっかで会った気がしないこともないけど、少なくとも名前を確認し合うほど話し込んだ覚えはない。よっぽどのクズでなければ、俺は名前を覚えるから。


「クックック……クーックック!そうか。あくまでも僕を道化扱いしてくるか。それもいいだろう」


 ……え?


 どうしよう?


 会話が成立しない。


 話が明後日どころか、30年後ぐらいの方向にすっ飛んで行ってしまっている。


「まあ、いい。そのうち分かるだろう……」 


 えっ?今教えてくれないの?

 お名前は?


「じきに、こう言われるようになる。『僕あっての君』だってね。この選抜で輝くのは僕の方だから!そうなっても仕方ないね。挑発した君が悪い」


「……」


 気味が悪いんですけど!?


 なぜ初対面の人間に、セットのように語られなきゃいけないのか……


 俺は、俺以外、俺じゃないんだけど!?


 当たり前だけどね!?


「一応、教えておくが……あいつは、グレイ=ゾーエンスという1年生だ。学年ランクでは、俺とお前の間に位置する、学年2位の男だ」


 左隣の席に座るブルートがこっそり耳打ちしてきた。


「なるほど……やけに詳しいな」


「1年生で、入学式に出ていた者ならだいたい知っていると思うぞ。その場にいなかった誰かさんの代わりに、首席(代理)として壇上でスピーチをしていたからな」


「……」


 白い目でこちらを見るブルートの視線を躱す俺。


 いなかったんなら仕方ないじゃんね。


 なるほど……

 それでさっき、君と僕、みたいなことを言っていたのか。それはちょっと悪かったので謝ろうかな。


「クックック……クックック……」


 ……うん、あとにしよう。


 そろそろ会が始まりそうだし。


「レ〜ディーースゥ、エーン……ジェントルメーンヌゥー!これよりぃー、『春の選抜決闘』のぉー予選抽選会を始めまーすぅ!!」


 そして、当たり前のように進行役をしている透明マスクの人……


 こんなところまで出張ってくるとは。

 あの人、偉い人なんじゃないのか?


「それではぁ〜早速、抽選を始めますぅー!第1巡の派閥の長はぁ〜、壇上にぃーお上がりくださいぃーー」


 司会のキャリーさんに促され、最前列の通路側の学生から順に8名、立ち上がり、壇上に向かった。


 この予選の抽選会は、第1巡……つまり、ランクが上の派閥からくじを引いていく。


 『殿上人』たちからすれば、予選は勝って当たり前だからな。

 彼らのほとんどは、自分のくじだけさっさと引いたら、その場に数人残して退席してしまうらしい。


 予選の2位までに入れば、本選のトーナメント進出となる。

 その段階で抽選をやり直すので、リーグ戦の結果は特に考慮する必要がない。


「それでゅはー、メーネス=アンフェ殿ぉー。マジックポッドの前にぃーー」


 何人かの事務員の手によって、巨大な魔道具の鍋?のような、鉢?のようなものが壇上に用意された。中には色のついた小さな小鳥や魚や虫のような物体が、その容器の中で、飛び回ったり、泳ぎ回ったりしている。


「あれはマムンクルスですね。くじ引き専用のミニマムンクルスです」


 ブルートの隣に座っていたリバーが説明してくれた。

 あれがマムンクルスということは……その開発者は言わずもがなであろう。


 ……大丈夫かな!?

 ちょっと心配になる。


 続いて、事務員の人たちは、壇上の奥に引かれていた大きな幕を外側に引っ張るようにして開けた。


 幕の裏には巨大なマスボの画面が壁に取り付けられている。

 アリーナのものと同じくらいの大きさだろうか。


 キャリーさんが声掛けした、金髪イケメンの煌びやかな男子学生は、透明な魔道具の鉢の中に、指定された穴から手を入れ、魔力を集めている。


 すると……1匹の鳥が男子学生の手の中に入り、光の粒子となって霧散し、直後、後ろの巨大画面に「C」という文字が映し出された。


「出ましたぁ~!派閥【蘭光らんこう】は『Cブロック』ですぅー!


「フンッ……」


 ……理解した。


 どうやら、あのマジックポッドの中に手を入れ、微量の魔力を放出すると、中で動いているくじの1つが引き寄せられ、それがブロック名を表すようだ。


 面白い演出だな。

 特に意味があるようには思えないけど、絵的には盛り上がるのだろうな。


 事実、金髪男子学生が鳥のくじを掴んで、それが文字となって画面に出たとき、場が大いに沸いた。

 学生ランク上位からくじを引く形だから、それもまあ当然か。


 金髪男子学生は、くじを引いたあと、席に戻るかと思いきや、そのまま何人かのメンバーたちを引き連れて、通路を通って、出ていってしまった。


 なんか、こっちの方を何人かにちらっと見られた気がする。

 ブルートやリバーの知り合いかなんかだろうか……


「続いてぃーーーページ=ジョート殿、お願いしますぅーーー!」


「ヒーハー!」


 次にマジックポッドの前に立った学生は、だいぶテンションが高い。

 燃えるように真っ赤な髪の毛をまっすぐに逆立てている。

 直立した髪が顔と同じくらいの長さで、だいぶ気合の入った髪型だ。

 寝癖じゃないよね?


 うーん。

 さすが、魔法学園のトップに位置する人たちだ。


 何かを極めようとするとどこか頭のおかしい人になっていくと村長の奥さんが言っていたけれど、あの髪型がきっとそうなんだろうな。


 気合の入った先輩のかざした手には、真っ赤な犬のような姿のミニマムンクルスが駆け寄って行った。


「おっとぉーーー、派閥【炎城桜えんじょうおう】は『A』を引きましたぁー!『Aブロック』ぅーーー!!」


 この先輩たちの派閥も、くじを終えると早々に会場をあとにしていた。

 なぜか走って……


 着々とくじが引かれていく。

『殿上人』の先輩たちがくじを手にする度に、会場から歓声やどよめきが起こる。


 ジャネット先輩は緑の蝶の形をしたミニマムンクルスを引き当てていた。

【魔花】はEブロックか……


 あと、青い髪のメガネの男子学生が魚のくじを引き当てたとき、ブルートの表情と姿勢が若干強張っていた。

 あれが、ブルートの兄なのだろうか。

 カシウって名前だったっけ?


 それ以外は淡々とくじ引きを眺めていた。


 皆が『殿上人』の動向を伺いながら、一喜一憂している様子だが、俺たちは第4巡の最後から2番目なので、どうにも盛り上がりようがない。


 俺がくじを引く頃には、あらかたブロックは埋まってしまい、残されたくじは二者択一となるのだから……まあ、決闘本番に期待だな。


「あのくじ用のマムンクルスは、単に『運』を試すものではありません。『運命』を引き寄せると言われています」


「え?」


 リバーがおもむろに解説をし始めた。

 俺があくびをしかかっていることに気づいたのだろうか?


 くじは第1巡の『殿上人』を終えて、第2巡に移ろうとしていた。

 ……そういえば、最初の金髪オールバック先輩と赤髪逆立ち先輩以外の『殿上人』の人たちは帰らずに会場に残ったままだな。


 第2巡で有力な派閥が残っていて、そのくじの結果待ちだったりするのかな。

 その辺りの実力者の動向が直接見られるのもなかなか興味深い。


「事前に学生の情報をすべて網羅しつつ、現在の状況の最終的なアップデートを行ないます。ほら?あそこで、手をかざしているでしょう?」


 よくみると、壇上に上がる前に、事務員さんが用意したマスボに、これからくじを引く派閥の長の人たちが、1人、1人、手をかざしている。


「ポッドの中のくじは、第1巡の結果を踏まえ、第2巡のくじをあのミニマムンクルス自身が自動的に考えて、最適なくじがかざした手に向かうのです」


「マムンクルス自身が考える?」


「ええ、そういう動作がインプットされているといいますか……例えば、同じ予選のすべての長が『火魔法』ですと、見ていて退屈になるでしょう?」


 たしかに……


 せっかくなら違った属性同士がぶつかり合うようにした方が楽しいだろうな。

 そういう要素が考慮されるというわけか。


「今のはあくまでも一例ですが、そういった属性や相性、直接の決闘回数、勝負論などをある程度考慮した形で決まるみたいですね。あとは、手をかざしたときの心理状態も……ですか」


 なるほどな。


 一瞬、それなら八百長とかもあり得るのでは?と思ってしまったが、よく考えたら、実際にその可能性は薄いだろう。


 理由は、あのミニマムンクルスの開発者が例のダメ教授……マーゴット=エジウス教授その人だからだ。


 あの教授は、自分が主体的に八百長をし出すことはあっても、他人が自分の開発したものを使って八百長をすることは絶対に許さない、タチの悪い性格だ。


 負けず嫌いでだいぶ独善的ではあるが、それも、あくまでも自分が主体的に動いた場合だけだからな。本人が絡んでいなければ、むしろ公平性は担保される。


 運命のくじ……ちょっと大げさな言葉かもしれないが、そう聞くと、残りものでも少し楽しい心持ちがしてくるから不思議だ。


 第2巡、第3巡が終わり、あっという間に俺たちの番が近づいてきた。


「それではぁーーー最後の第4巡となりまーーーすぅ!!なんとぉーーー今大会では2人の新入生が、今学期に結成された前代未聞の派閥の長としてぇーーー参加しまーーーすぅーーーー!」


 あ、俺のことだ……


「クックック……」


 あと、彼のことだね……


 俺と灰色髪の学生は、並んで、先を行く先輩方のあとに続いた。

 あ、見慣れた人が前列にいるぞ……

 あの人たちも通過したのか……


「こちらに手をかざしてください」


 事務員さんが見せてきたマスボの画面に手を置く。


「ありがとうございましたー。壇上にどうぞ」


 最終登録?を終え、壇上に。


 俺がくじを引く順番は、壇上に上がった学生の8人中7番目だ。


 次、また次とくじが進んでいく。


 あっ、金髪オールバック先輩の場所が埋まった……


 あっ、赤髪逆立ち気合先輩のところも……


 ああっ、ジャネット先輩も……


 1つ、また1つとブロックが埋まっていく。


 会場の反応も、歓声よりもどことなくため息のような気がする。


 俺の前の人がくじを引き終えた。


 残るブロックは……


 Fブロック……あと、Hブロック……


 おっ!Hブロックになったらブルートの兄ちゃんの派閥と同じ予選リーグになるな。


「それではぁーーーー今大会のぉーーー台風の目ぇーーーー会場中の注目をあつめるぅーーーノーウェ=ホーム君ーーー!さあっ、マジックポットの前にぃーーーー」


 あのー……


 過剰な演出はお控えいただきたいのですが……

 他の人と同じように紹介してください……


 俺は、マジックポットの前に立ち、穴の中に手を入れて、魔力を掌に集中させる。


 さあ、Fが来るか?

 それとも、Hが来るか?


 ……どっちだか、見た目には分からないけどね。


 ……

 …………

 ………………


 ……あれ?


 ……どっちも寄って来ないんですけどっ!?


 これ、何かの冗談ジョークですか?


※追記:これまで予選を「リーグ」と表記していましたが、呼び名の都合上、『ブロック』に変更します。後日、以前の話の表記もすべて「ブロック」に統一いたします。

ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。

もしこの物語を面白い!と気に入っていただけたら、どうか、いいね、評価、ブクマ登録をよろしくお願いいたします。今後の執筆の励みになります。


ババ抜きの最後の2枚って嫌ですよね……笑


次回、組み合わせ決定と各チームの動向……

……そして、早速嫌がらせ発動!


ノーウェと仲間たち(とブルート)の活躍に乞うご期待!


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