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3-32『風水師』

◇『紫雲城』リビングルーム◇


 あっという間に、「春の選抜決闘」の予選ブロック組み合わせ抽選会の日が迫ってきた。

 あと2日。


 俺たち【紫雲】メンバーは全員集合し、この場で今後の方針を確認する。


 まだ、ここに来ていないメンバーが1名いるので、今はそいつの到着を皆で待っているところだ。


「春の選抜決闘」への出場自体は無事決定の正式通知が来た。


 中間報告時に内定通知があったので決まりかと思っていたのだが、何やら直前で、「正式決定を一旦保留にする」というおかしな動きがあったらしい……


 ひょっとして、俺のやらかしが影響していたのかな……


 そのような不安定な状況下でポイント的に遅れを取ってはまずいということで、俺たちは、急遽その対応に迫られた。


 具体的には、リバーとレミが協力して取りつけてきた、「射的方式」の派閥間決闘に無事勝利したおかげで、なんとか順位変わらずで今日を迎えることができた。


 俺?

 もちろん参加したよ。

 責任を感じたし。

 それに、魔法の精密発動には自信があるからね。


 まあ、そんなわけで、懸念事項も解決し、無事、選抜の参戦を決めることができた。


 あとは抽選会でどんな派閥を相手に、予選を戦い抜くか……ということと、それに向けた精神状態のピーキングだな。


 先だって巡回して見てきたメンバーたちは良い状態で本番を迎えられそうだ。


 ……ダイゴの風邪も少しは良くなったみたいだし。


 心配なのは、中間報告会のときにわりと順調そうだった7人……


 レミ、モモエ、ディリカ、ミスティ、ミモレ、パルメ、エメルダの女性メンバーたちだ。


 相変わらず変なゴーグルを装着しているが、今日はあごを上げながら足を組んだりせずに、ただ机に突っ伏していたり、顔だけ下にカクッと向けている。


 寝てんのか?

 ……疲労困憊って感じ。


 ……大丈夫か?

 ポイントも結局、中間報告会以降、増えなかったみたいだし。

 あれほど、順調そうな感じで、最初の2週間で60ポイントを荒稼ぎしていたのに、後半まったく伸びなかったということは……やはり、どこかで「やりがい搾取」や「やるやる詐欺」にあっていたのではなかろうか……


 心配だ……


 最終的には、双子たちや黒魔導師たちなど、中間報告会の時にあまりポイントを取れていなかったメンバーたちが後半しっかり稼いで、彼女たちと同じ、ノルマの60ポイントまで到達した。


 勢いも大事だけど、先を見据えてコツコツと1つ1つこなしていくことも大事だよね。何事も……


 まあ、疲労だけなら、休めば回復するから、当日までに万全にしておいて欲しい。


 風邪からの回復途上のダイゴも含めて……


 ガチャ……


 お、ようやく最後のメンバーが戻ってきたようだ。


「玄関に水の入った花瓶を置くのは感心しないな」


 ……?


 ガチャリ……


「ふうっ、空気が澱んでいる。部屋に植物を置かないからだ。それに風の通り道には障害物を置かないようにしないと……」


 なんだこいつ?

 集合時間に遅刻しておいて、なにを偉そうに振る舞っているんだ!?


 新調の、水色のローブを羽織る青髪の魔導師はため息をつきながらゆっくりと部屋の中に入った。


 魔法を磨きに行くと言っていたが、むしろ絶妙なウザさに磨きがかかっている。


 お前はどこぞの占い師かなんかか?

 本当に魔法の訓練をしてきたんだろうな?


 青髪の男は、ソファの空いているスペース……俺の隣まで進むと、膝近くまである水色のローブの裾を摘み上げながら、もったいぶった感じにゆっくりと腰を下ろした。


「風が揺れている……」


「ん?」


「波が歌っている……」


「……」


 なに言っているんだ?こいつは……


 ……いや、さっきからずっとだけど。


「変わらずに流れていく時は止められないんだな……」


「……さっきから何言ってんだ?お前は」


「ふっ、お前には分からないか?そこら中から感じることができる、性格の違う風の鼓動が……」


「知らねえよ。それよりお前、ちゃんと『風魔法』を単独発動できるようになったんだろうな?」


「ふっ、よくぞ聞いてくれた。そうだな、あれは白い雲が風によって、勢いよく流されていた日だった。俺は空を見上げて……」


「あ、できるようになったんなら、もういいや。分かった、分かった」


「おいっ!聞けよ!?俺の血のにじむような試練の日々をっ!」


 やっと戻ってきたようだ。

 おかえり。

 前置きが長かったな。


「なんで遅刻してきたお前の苦労話をみんなで聞かなきゃならんのだ!?他のみんなもここまで苦労と努力を重ねてんだよ。ってか、まずは遅刻を謝れ」


 全員頷いている。


「ぐっ……なんて薄情なやつらだ」


 まあ、一応、レミが調べ上げた情報を得たリバーから、ブルートのこれまでのいきさつについては聞いている。

 ジャネット先輩と幼馴染のジェシーに土下座して訓練を頼み込んだんだってな。


 それ自体は、十分に認められる立派な行いだろうと思うよ。

 強くなるために因縁ある相手に頭を下げる、なんてな。

 ただ……


「……で?ポイントの方も大丈夫なんだろうな?」


「……ポイント?」


「そうだよ。ノルマとして全員に出されただろ?評定60ポイントか200の派閥ポイントだよ。まさか忘れていたわけじゃないよな?」


 青髪の男は急に顔を青ざめさせている。


「……まさか本当に忘れていたのか?」


「……忘れた」


「「「「「……」」」」」


 全員唖然としている。


「……俺は俺を騙すことなく生きている」


「話を誤魔化すなっ!……はあ~、リバー、こいつどうする?」


「……そうですね。まあ、他のメンバーに示しが付かないので、ペナルティとしてブルートだけ『選抜』不参加が妥当ですかね?」


「お、おいっ!ちょ、ちょっと待ってくれよ!?」


「そうだな。ノルマの60ポイントを達成できなかったんだから仕方ないな」


「「「「「異議なし!」」」」」


 全員、再び強く頷いている。


「待て、待ってくれって!俺はこの『選抜』のために必死に『風』を鍛えてきたんだよ!?なあっ、頼むよ!」


 入室時とは打って変わって、まったく余裕のない様子の青髪の風水師……もとい、ポンコツ魔導師ブルート。


「それも若干怪しいんだよなあ。本当に習得できたのか、大将?」


「俺もそこを結構疑っている」


 ハリーとカーティスが疑惑の目をブルートに向けている。

 俺も同感だ。


「したよっ!本当に俺の中に『風』はあるんだよっ!信じてくれよっ!」


 いや、「風魔法」があるのは知っていたし。

 問題はそれを「水魔法」とは別で、単独で使えるようになったかどうかだから。


 この絶妙にうざいポエマーじみたところが抜けきらない限りは到底信用できないな。


 そういう台詞を吐けるのは精悍な顔つきの海の男と決まっている。

 間違ってもお前じゃない。


「ブルートは忘れん坊なのデス。その上、約束破りなのデス」


「ボクたち『カルボナーラまん』の恨みは忘れてないのデス」


「「『ラグーパスタまん』も!」」


「……なんの話だ?」


「「「「ぶっコロ(デス)!!」」」」


 双子たちからもかなり強めの反対票が投じられた。

 そして、彼らと何らかの約束をしたようだが、あのアホは、それもすっかり忘れているらしい。


「貴族たるもの、約束を破ってはいけませんなあ」


「然り」


 レヴェックとジャックもそんなブルートの振舞いに呆れている。


「これで、再投票もめでたく過半数ですね。では、ブルートは『選抜』不参加ということで……」


「ま、待ってくれ!俺が悪かった!頼む、頼むよ!!仲間外れにしないでくれ~」


 ブルートは顔をくしゃくしゃにしながら、土下座をし始めた。

 ……まったく。

 手のかかるやつだな、本当に。


「……どうしましょうかね?」


 リバーが俺の方を見る。


「まあ、まずは試してみればいいんじゃない?本当に『風』を自由に使えるようになったのかを」


「なるほど……『派閥内決闘』ですか」


「ああ。1人ずつ交代しながら、ブルートと決闘をするっていうのはどうだ?ただし、ブルートは『風』しか使わないという条件で」


「えっ、俺だけ?」


「勝てば、派閥からポイント獲得、負ければ0。60ポイント貯まるまで無制限決闘……これで行こうか」


「それは名案ですね。『封じ手』用の魔導具を用意しましょうか?」


「いや、この条件にピッタリの魔法がある。俺が立会人役で、その魔法をブルートに掛けているから、みんな、心置きなく戦ってくれ。絶対に手を抜くなよ」


「えっ?えっ?」


「こいつは面白くなってきたな、大将。たしか、負けたら副将交代だったっけ?」


「自分がどれだけ成長したのかも測れるし、ちょうど良いな。わざわざすまないな」


「ブルート、覚悟するデス」


「そーデスね」


「がるるる~」


「うるるる~」


「はっはっは、では、心置きなく胸を借りるとしましょうぞ」


「某も!」


 こうして、ここまで1ポイントも稼いでこなかったブルートのために、皆が一肌脱ぐ形で、俺たちは「春の選抜決闘」に向けた最後の調整を行なうこととなった。


 準備は……万全だ!


ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。

もしこの物語を面白い!と気に入っていただけたら、どうか、いいね、評価、ブクマ登録をよろしくお願いいたします。今後の執筆の励みになります。


ナレ死ならぬナレ決闘……笑


いつか、閑話か回想で出すかもしれません……


ノーウェと仲間たち(とブルート)の活躍に乞うご期待!


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