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幕間⑱『エピローグ』

 カーン……カーン……カーン……


 カンカンカンッ……カンカンカンッ……シューシューシューシュー……


「えらっしゃあー、えらっしゃあー」


「「「えらっしゃあー、えらっしゃあー」」」


 鳴り響く大聖堂の鐘の音に対抗するような金属音……

 そして、麺を炒めてこの道30年の男とその弟子たちの威勢のいい声……


 人々が行き交う盛況な祭り会場の新設大通りの中でも、とりわけ多くの客が集まる屋台料理の店。


 屋台馬車総勢10台を並べた30メートルほどの区間に人の波が常に流動しながら集中し続けている。


 並ぶ客はまだか、まだかと期待感を顔ににじませ、目的のものを手に入れた客はほくほく顔で、その手にホッカホカの白い饅頭や茶褐色の液体が入っている瓶を持ってその場を離れる。


「「「「えらっしゃあー、えらっしゃあー」」」」


「「「「とったどー、とったどー」」」」


 時折、野太い声に続くように、甲高い声が4つ、相槌を打っている。


 3人は、小さい修道服を着た少年少女。

 残る1人は、冒険者風の服を着た少し年上の、もうすぐ女学生。


 掛け声の意味は分からないが、その2種類の面白い調子に引き寄せられるかのように、街中の子どもたちが、この地に集まっている。


 いまだかつて食べたことのない形、食べたことのない味の食べ物は強い。


 湯気を立てて存分に蒸された白い饅頭は、1個、また1個とひっきりなしに売れ、従業員が次々と補充分を蒸し器に入れている。


 子どもにせがまれる親には、家庭の料理の手助けとなる特別なソースのセールスが、美男美女な風貌だが、少し顔色が悪くも見える……目の部分に仮面を付けた、やたら口が上手い集団によって行われ、茶褐色の液体の入った瓶も飛ぶように売れていく。


「坊ちゃん、どうやら大成功みたいですね!?」


「ふふっ、貴方が意を決して空を飛んだ甲斐がありましたね」


「それを言われるとちょっと複雑ですが……」


「ふふふっ、貴方の突飛な発想力には感服致しました。脱帽ですよ。今日は1つの出発点として記念すべき日になりそうですね」


 主人にからかわれるワイズマン。魔法を持たない人族最初の栄誉かもしれないとフォローされたが、少しも嬉しくはなかった……


「その通りだよ、リバー殿。今日は記念すべき日だと思うのだがな、ムッシュワイズマン!どうだい?その鞄の中身をここで開けてみるというのは?」


 ワイズマンは、肌身離さず握っている長方形の鞄の持ち手を強く握った。


「……お断りだ。こいつは、まだまだ熟成が必要だからな」


 空を飛んでいる最中も決してその手を離さなかったんだ。

 今この場で明け渡してなるものか!


「そんなあ……もう十分だと思うがねえ?」


「貴方の大仕事もこれからですよ!?ミスターアプス」


「ふむ、これも自前のワイン畑のためか……仕方ないな、自分で醸造して50年待つとしよう……我々は寿命も気も長いからな」


「アプス、友としてあんただけに教えるが……北の山脈には、岩鬼族でも辿り着けない場所に成る山ぶどうがある。もちろん、俺も行けないが、空を飛べる者ならきっと届くだろう」


「それは本当かい?早速教えてくれたまえ!いやあ、それは、楽しみだなあ……」


「まあ、味はわからないけどな。ひょっとしたら、とんでもなく酸っぱいかもしれないぞ?」


「ははっ、その味を知ることができるのも、空を飛べる私だけだ。これは特権だな、実に楽しみだ~」


 笑顔の客を見ながら会話は弾む。


 いても立ってもいられなくなった客が饅頭にかぶりつき、中から茶色い麺が出てきて驚く顔、そして、それをさらに食べ進めてから見せる笑顔は、何にも代えがたい商売の対価だ。


「これはデモンストレーションですが、本番も上手く行くでしょうか、坊ちゃん?」


「ええ。そう確信しています。この『ヤキソバまん』は、きっとプラハ学園の名物になるでしょう。学生たちがこれを片手に笑い合う姿が思い浮かびますよ」


「それはよかった……」


 ワイズマンの夢……料理を前にして誰もが平等になる世界。

 タイガの夢……その料理で誰もが笑顔になる世界。

 リバーの夢……誰もが平等に笑い合える世界。


 それが交差し、1つの空間と名物料理によって体現される。


 そんな夢みたいな絵図がいよいよ実現に向けて動き出す……

 今回の「祭り」はその予兆を感じるには十分な盛況ぶりであった。


「私も微力ながら手伝わせてもらうとするよ~。まずは、大陸中の祭りに乱入して、このソースや『ソースヤキソバ』を売り捌くとしようじゃないか」


「ふふふ、よろしくお願いしますよ、ムッシュアプス」


「任せてくれたまえよ!」


 実際に彼の眷属がどのくらいの人数いるのかはわからない。

 だが、彼の鼻息の荒さから言って、ソースの普及事業はきっと成功することだろう。

 そうなると、ソースも大量生産を行う必要があり、原料となる食材の確保もひいては必須となってくる。


 まだまだ、課題は山積みだ。


「「「「えらっしゃー、えらっしゃー」」」」


「「「「とったどー、とったどー」」」」


「「「えいさー、ほいさー」」」


「「「「「あーーらよっとーー」」」」」


 野太い声と、さらに増えた甲高い声に続いて、酸いも甘いも噛みしめた老人の男女2人と初老の男、そして若い男女の声も加わる。


 屋敷、フードパークの職員、その家族総出の賑わいだ。


 ……それでも、この寒空ではまだ、蕾が花開くのには時期が早い。


 これはまだまだデモンストレーション……

 本番の大仕事は、『フードパーク』がオープンする春だ……


 カンカンカンッ……カンカンカンッ……シューシュー……ピーーーー……


「えらっしゃあ、えらっしゃあ、この大通りから生まれた帝都の新しい名物、『ヤキソバまん』新発売だよーーー」


 この地で生まれた男の、誇り高き大声が帝都の空に響く。


 きっと、鐘の音よりも大きな音で……


 2人の料理人が出会うことによって生まれたこの物語もまだ途中……


 そう、これはまだ、その後に『プラハ学園』で……そして、帝都全域で巻き起こる若い魔導師たちの伝説に欠かすことのできない名物料理の前日譚なのである。


ー幕間 おしまいー

ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。

もしこの物語を面白い!と気に入っていただけたら、どうか、いいね、評価、ブクマ登録をよろしくお願いいたします。今後の執筆の励みになります。


ここまでお読みいただきありがとうございました

幕間はこれにて終了となります


明日、21時10分より本編再開です


再開1発目はノーウェの決闘回!

決闘前交渉を行います。


はたしてノーウェの決闘相手は?


ノーウェと仲間たち(とブルート)の活躍に乞うご期待!


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