3-15『モモエ特派員の臨時リポート其の1』
まえがき
派閥【紫雲】は「春の選抜決闘」に向けてメンバー個々のレベルアップを図るため、派閥ポイント200を分配し、各々が「勝手に強くなる」ために模索していくことを方針とし、各自その道を模索していくこととなった……
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ど、どうも。モモエです。
ほ、本日はレミちゃんに代わって私、モモエがリポートすることになりました。
よろしくお願いいたします。
どうして私が代わりにリポートしているかというと、今、レミちゃんは大事な商談のためにこの帝都でも有数の人物と対面で交渉しているからです。
私もその場に同席していますが、記録の許可をいただいたので、こうしてオンタイムで書いています。
この場にいるのは、私、レミちゃん、ディリカちゃん、ミスティちゃん、ミモレちゃん、パルメちゃん、エメルダちゃんの女子7名です。
そ、そうです。【紫雲】の女子学生連合です。
本当は双子のシャウちゃんも加えたかったのですが、朝から出掛けていていませんでした。
夜も何かにうなされるようにして、早くに就寝しているようですし。
私たちがなぜ女子だけで行動を共にしているか……発端はレミちゃんの発言でした。
ほんの1時間前の出来事なので書き起こしたものを先に記します。
「なーんか、私たち、いいように転がされているよねー」
「えっ、転がされているって、誰に?」
レミちゃんの話に食いついたのはディリカちゃんです。
ちなみに他のメンバーはそのとき、春のスウィーツ大決闘2日目の目玉商品となっている王蜂ロイヤルゼリーのハニーパンケーキを食べていました。
場所は『ビッグエッグタイマー』内の「フードパーク」です。
「男子よ男子!派閥の今後の方針も決闘についても全部男子たちで決めているじゃない!?」
……そうでしょうか?
大事なことは幹部会で決めていますし、その幹部会には私たち女性陣も参加しています。
「たしかに。幹部会の人数も男子が5人なのに私たちは4人ね。不公平だわ」
「でしょー」
幹部の数が男女で違うのは奇数にすることで採決を取りやすくするためだと聞きました。
別に議題は男女で毎回意見が分かれるわけではないので、数が近ければ男女比についてそこまで気にしなくてもいいのでは?と思うのは私だけでしょうか。
レミちゃんとディリカちゃんが2人でどんどん盛り上がっています。
ディリカちゃんはまだわかります。
こういった食事の席でもしょっちゅうカーティス君に対する不満を口にしていますから。
本当は仲良いくせにね。
あ、パンケーキ美味しい!
ふわふわの生地に王蜂ロイヤルゼリーのまろやかな甘さがたまらないですね。
蜂蜜は生地にも混ぜ込まれ、上にかかっているシロップにも使われているんです。
パンケーキと一緒に口に入れると、生地が噛むと同時にシュワっと口の中で溶けて、その次に花のような高貴な香りが広がるんです。もう最高です。
あ、すみません。
食事のリポートになってしまいました。
ええと、レミちゃんがなんでパンケーキに勢いよくフォークを刺すくらいに怒っているかというと、どうやらリバー君になにか言われたみたいなんです。
「リバーなんてね!?『貴方は計算があまり得意ではないですから、いつでも言ってくださいね』なーんて言うのよ?失礼しちゃうよねー」
「それはひどいわね」
「うんうん。リバー君ひどい」
皆が相槌を打ちます。
私はというと、レミちゃんのリバー君のものまねがあまりにも似ていて、ツボってしまい、パンケーキのかけらが気管に入りそうでした。
危なかった。
「リバーは私のことを昔のままの子どものように見てるのよ。だから、ここらでいっちょ私の方が大人だって見せて、あいつをうまく転がしてやるんだから!」
そう言ってレミちゃんはナイフとフォークを握ってプンプンしています。
かわいいです。
「そうね、やろう!私もカーティスを転がして踏んづけてやるわよ!みんなで男子どもに目にもの見せてやる。良いわね?ミスティ?」
「うーん、面白そうだからいっか!?やろうやろう」
ミスティちゃんが賛同しました。
ミモレちゃん、パルメちゃん、エメルダちゃんも続いたので、私も成り行き上賛意を示すことになりました。
「で、でも具体的に何をするんですか?」
私はリポーターなので質問をします。
「うーん、と。まずはその道の第一人者に教わるのが1番だと思うのー。男子の転がし方を」
「大人な女性ってことね?」
なんだか話がズレている気がしますが、レミちゃんとディリカちゃんは話を続けます。
「誰か学園の先生に教わるってこと?男の転がし方を」
ミスティちゃんが割って質問をしました。
……正直、ミスティちゃんには、その教えは必要ない気がします。
少なくとも私たちの中では1番……
「あ、あのっ!集めなきゃいけない学生ポイントのことは大丈夫?」
「そうそう」
「それな」
良かった。ミモレちゃんが軌道修正してくれました。大事なのはそこです。課題を見つけポイントを持ち帰ってくるという大事な責務が私たちにはあるのです。
「ふっふっふ。大丈夫だぁー。すでに当たりはつけてあるよー」
「えっ、本当?」
レミちゃんは自信満々です。
「その人は大人な女性で、さくぼーが得意で、しかも学園に影響力を持つ人だよっ!なんたって、あのノーウェ君を手玉に取る人なんだから」
あっ……!
1人の人物が思い浮かびました。
きっとあの人ですね。
「へー、あのノーウェ君を?それはすごい人ね」
「うんうん」
「よっしゃー、じゃあ早速、次行ってみよ〜」
「「「「「おーー!!」」」」」
……なんだか、これもリバー君の掌の上のような気がするんですが……気のせいでしょうか。さすがに、疑い過ぎですかね……?
こうして、私たちはやって来ました。
帝都の大聖堂に……
「頼もーーーー」
「ちょっと、レミちゃん!?教会では静かにした方が……」
「やあやあ、よく来たね。ちょっとみんなに美味しい話があるんだ」
奥にある教壇で頬杖をついていたアルテさんが、私たちを見るや否や、ガバッと立ち上がり、ブワッと教壇を飛び越えて、シュタタッとこちらに駆け寄っていきなり話し始めました。
ガチャリ……
背後で扉の鍵が閉まる音がしました。
どうやらアルテさんも私たちに用事があるらしく、商談が終わるまでは帰してくれそうにありません。
こうして、私たちは、事ここに至ったというわけです。
「君があのラッフマーの言っていたレミちゃんか。なかなか見所がありそうじゃないか。ふーん、なるほどねー。『男の転がし方』を学びたいというわけだ?」
「はいっ!」
「よしっ、それなら私にいいアイデアがある!」
「本当?」
「もちろん」
なんか、あっという間に話が進んでいきます。
そわそわしているのは私だけでしょうか?
大丈夫かな?
自分から美味しい話があるなんて言う人初めて見たんですけど……
信じていいのでしょうか?
怪しい宗教勧誘じゃないですよね?
「この帝都から西に進んだ森の外れにとある金持ちの豪邸がある」
「えっ?」
「なんだい?モモエちゃん」
「え、いえ。続けてください」
すっ、すみません。
ちょっと先走ってしまいました。
「そうかい。じゃあ、続けるけど、そこが豪邸だったのは昔の話でね。そこは今ではアンデッドの巣窟……つまり『ダンジョンハウス』になっているんだ」
「「「「「『ダンジョンハウス』!!」」」」」
「そう『ダンジョンハウス』」
よかった……
私が危惧した予想は外れました。
はじめ、お金持ちの家と聞いたときに、何かメイドの仕事でも依頼されるかと思ったのです。私は、ちょっとお金持ちの家が苦手なもので……
……でも、よかったのでしょうか?
「続けるよ。その『ダンジョンハウス』にはそこに住んでいた資産家の隠し財宝が入れられている『リッチマンズチェスト』と呼ばれる宝箱があるらしいんだ」
「「「「「『リッチマンズチェスト』!!」」」」」
な、なんだか話が急激にきな臭くなってきました……
私たちはすでに目の前の大人な女性の手の平に転がされているような気がします。
「あ、あのー。ひょっとして、私たちにその『ダンジョンハウス』に行って、その隠し財宝を見つけてこい……と?」
「おおっ、察しがいいね。モモエちゃん」
「で、でも……それと男を転がすとどう関係が……」
「うんうん、そう思うのも無理はないよ、モモエちゃん。でもねっ、男を転がすためには色んな事を経験して君たち自身がもっと強くならなければいけないんだ。そのためにはアンデッドという存在は打ってつけなんだよ?」
「え?そうなのっ?」
レミちゃんが身を乗り出して聞いています。
「そうさ。あいつらは浄化するまでいくらでも動き回るし、絶えず攻撃を続けてくるんだから、転がすためのいい実験体になるはずだよ」
「実験体……」
その言葉に反応したメンバーがいました。
そうです。ミスティちゃんです。
これはまずい流れですね……
「で、でも……危険なんじゃ」
ありがとう。ミモレちゃん。私も同じことをすごく思っていました。
「もちろんだよ。そこでみんなには強力な援軍と安全な防具を用意している。援軍はアンデッド退治におけるその道のプロだよ。一応、依頼としてはその人物のアシスタントということになるかな。もちろん、最初に言っていた学園の評定ポイントの件も私がなんとかしよう。60ポイントが必要と言ったね?じゃあ、依頼達成の暁には60ポイントまるまる全員に配布しようじゃないか」
「ほ、本当ですかっ!?それなら」
ああ。ディリカちゃんも食いついたようです。
まだ少し躊躇しているのは、私以外にはミモレちゃんとパルメちゃん、エメルダちゃんだけのようです。
そんな私たち7人の前にアルテさんはあるものを置きました。
「まあまあ。これでも食べてゆっくり考えなよ」
目の前に置かれた木彫りのボウルのようなものに入っていたものは……
お煎餅です。
それを見て、レミちゃんとミスティちゃんは固まりました。
2人はお煎餅にトラウマがあるのです。
しかもその原因は、話を聞く限りでは、目の前で煎餅を出してくれた人物その人にあるとのことですので余計に固まるでしょうね。
……でも、なにやら甘く香ばしい良い匂い……?
「これはね、卵と小麦粉と油に加えて『皇帝ゼリー』を混ぜて焼き固めた『瓦煎餅』だよ。甘くて美味しいよ?」
なんと!
王蜂ロイヤルゼリーよりさらに稀少な皇帝ゼリーを混ぜ込んだ甘い煎餅……
これには私たち全員の食指が動かないわけありません。
その1枚を手に取り……
カキッ……
ああ、堅い!
なんて堅さなのでしょう。カチンカチンにギュッと固まっています。
でも……
ああ、なんということでしょう!?
先ほど「フードパーク」で食べたパンケーキよりもさらに上質な甘味と花の香り、砂糖菓子を焼いた香ばしさが三位一体となって口腔内をこれでもかというくらいに刺激します。
「商談成立だね……まいどありっ!!」
こうして、私たちはお菓子を食べて以降、ほぼなし崩しに依頼を引き受けることになりました。
そして、今私たちは聖堂内の更衣室で専用の服に着替えています。
「私は黄色ーー」
「じゃあ、私は赤で」
「わ、私は桃にしますっ」
7種類に色分けされたシスター服を。
服だけではなく、シスターたちが頭から被るヴェールや手袋までそれぞれに色が割り振られている。
「これ、なにかしら?」
「暗視用ゴーグルだよー。洞窟や暗い場所で探索者が放つライトに目をやられないように装着するんだーアンデッド対策には必須のアイテムだねー」
暗視用ゴーグルも縁部分が色分けされています。
シスター服を着て、ピンクのゴーグルを装着すると、なんだか恥ずかしいですが、同時にカッコいいヒーローになった気がしてきます。
「きゃー、はずかしー!けどなんか楽しい!せっかくだから何かチーム名付けない?」
白シスター、ミスティちゃんが提案します。
「お、いいねー。盛り上がっていこー」
「そうね……じゃあ、『アンデッドバスターシスターズ』はどうかしら」
「いいねっ、それにしよー。それじゃ、行くよー?私たち……」
「「「「「『アンデッドバスターシスターズ』!」」」」」
黄色がレミちゃん。
赤色がディリカちゃん。
桃色が私。
白色がミスティちゃん。
橙色がミモレちゃん。
緑色がエメルダちゃん。
水色がパルメちゃん。
私たち、「アンデッドバスターシスターズ」。
……ちょっと長いかな?
「おっ、決まってるね~。それじゃあ、頼んだよ!現地に腕利きのプロハンターが待っているからね。しっかりと勉強するんだよ」
こうして、私たちは西の森にあると言われている「ダンジョンハウス」に向かいました。
薄暗い森は濃霧が立ち込めていて、早速、ゴーグルが役に立っています。
「ふむふむ。この大岩は使えるね」
先頭を歩くレミちゃんが途中、目印になるような自然物をチェックしています。
魔物が生息する森では地形が変わることもあるので、目印に選ぶものも吟味しないといけないんだと教えてくれました。
木とかを選んでもなぎ倒されたら目印にならなくなってしまうそうです。
さすがレミちゃん。頼もしいです。
「あ、あれだー」
2時間ほど歩くと、私たちはついに目的地である「ダンジョンハウス」に辿り着きました。
「おっ、やっと来たな!?」
「「「「「え?」」」」」
なんということでしょう!?
蔦の生い茂る廃墟のような豪邸の門の前に1人の女性が立っています。
紺のシスター服を着て、濃い灰色の色合いのレンズが目元一帯を覆い隠している、特徴的な逆三角形に近い形の斜光眼鏡を掛けており、口にイカゲソをくわえた女性が私たちを出迎えました。
……って、どう見ても絶対にアルテさんですよね?
彼女は何をやっているのでしょうか?
「違う。私は一介の放浪シスター、ニーゼ=ヨコーセだ!」
……だそうです。
現場のモモエからは以上です……!
ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。
もしこの物語を面白い!と気に入っていただけたら、どうか、いいね、評価、ブクマ登録をよろしくお願いいたします。今後の執筆の励みになります。
※メンバー7人ですが作者の志向により「」は5重までとさせていただいておりますm(_ _)m
聖女様はいろいろと行動に制約があるようです。
次回、「ダンジョンハウス」攻略!もう1人、助っ人も追加!
ノーウェと仲間たち(とブルート)の活躍に乞うご期待!




