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3-13『用心棒』

まえがき

 

派閥【紫雲】は「春の選抜決闘」に向けてメンバー個々のレベルアップを図るため、派閥ポイント200を分配し、各々が「勝手に強くなる」ことを方針とし、各自その道を模索していくこととなった……


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



◇授業後◇


「大変申し訳ござらん!」


 帰り道でダイゴがひたすら謝ってくる。


「いや、別にダイゴは間違ったことを言っていなかったんだから謝る必要はないんじゃないかな?」


 明らかに論理破綻していたのはあのヤキソバまんの外側先生の方だし。

 2文字の称号がすごいのはわかるが、いくら称号に優れているからといって、人の上に無条件で立てる手形にはならない。


 そんなことがまかり通るなら、そもそも決闘なんて必要なくなるし。


 せめて、彼らが優れている理由をもう少し事細かに説明してくれていたら、こちらにとっても学びになっただろうに。


 もちろん、攻略するための、ね。


「拙者はいつもこうなのでござるよ。自制しようと思いながらも1度思い立ったら口をついて出てしまったり、行動に移してしまうのでござる」


「まあ、それだと生きづらいこともあるよな」


「その通りでござる」


 個人的には「ござる」口調の方がよっぽど気になるのだが、個性といえばそれまでだし、仕方ない。


 ただ、件の勇者は一人称が「俺」なんだよね。

 記録を見た限りだと……


 誰譲りなんだろうか……


 ま、一旦置いておこう。


「はーはっは!ここで会ったが100年目!今度こそこの私と決闘をしたまえ、このボン魔帝国男爵であるこの私と!」


 教室のある学術棟から教授のいる研究室への道のりを歩く俺たちの前に1人の男子学生が立ち塞がった。


 やたらと長い前髪を横になびかせながら、腰に手を当てて居丈高に振る舞う、いかにも貴族の学生。


 ……魔帝国ってどこだっけ?

 ……あ、シナイ湖の先だっけか。


 ところで、ここで会ったが100年と言われたが、俺はこの前髪貴族に会った覚えがないんだが、誰だっけ?


 それ以前に100年も生きてないしな。


「知り合いでござるか?」


「いや、記憶にない」


 本当に、誰だっけ?


「くっ、貴様。生意気にも心理戦を仕掛けているつもりか?小癪な。そもそも、3日前に会ったばかりだぞ!?」


 3日前?

 何してたっけ?


 ……ああ、ダメ教授の研究に付き合っていた日か。


「うーん、あの日誰かと会ったっけ?」


 ダメ教授が大騒ぎしていたのと、クローニ先生が台詞のような恥ずかしいこと言っていたのと、それをカーティスが嗜めていた記憶しかないぞ……?


「ほ、ほら!?『魔物学』の授業で……」


「あっ……?」


「魔物学」の授業も同じ日だったか、そういえば!


 ……でも、五平餅とヤキソバまんの具の印象しかないや……残念ながら。


「……主殿は相変わらずでござるな」


 なんだよ、相変わらずって。


「ぐっ、まあいい!とにかく、そこの『色付き』。この私と決闘しろ!交渉条件や勝者の権利などどうでも良い。真っ向勝負だ!私にとっては戦績こそすべて!貴様に勝つことこそ我が望み。この決闘に勝ってシーア嬢に振り向いてもらうのだ。さあ、魔帝国男爵家嫡男であるこの私と今すぐ決闘するのだ」


「あい分かった!承知仕ったでござる」


「「え?」」


「しからば、御免!『魔棒刀舞まぼうとうぶ』」


 声をかける間もなく、また相手の男爵子息の名を聞く間もなく、隣にいたダイゴが、前方にかっ飛んで、相手との距離を一気に詰めながら肩に担いでいた魔棒を振り抜き、まるで小枝でも振るうかのように縦横無尽に空気に向かって乱れ打つ。


 ビュンッ、ビュンッ、ビュビュンッ、ヒュンッ、シュパパパパ……


 刹那、魔棒から強力な魔力の刃が生み出され、いくつもの細長い魔力の斬撃が男爵子息を強襲する。


「ちょっ、まっ、グボエッ、ゲフッ、ゴヘッ、ケピッ、ダパパパパ……」


 魔力の刃で切り刻まれた男爵子息は白目をむいてそのまま地面に仰向けに倒れた。


 ……

 …………

 ………………


 あーあ……

 やっちまったな……


「はっ、いかん、いかん。身体がつい反応してしまい申した拙者、どうも刀を持つと……」


 ……でも、一応決闘の流儀には則っていたし。

 ま、いっか!結果オーライ。

 この際、開き直ろう。

 俺は知らない。


「ま、いいんじゃね?相手も『色付き』としか言っていなかったし、決闘したかったみたいだし」


「そ、そうでござろうか……」


「今すぐって言っていたし、きっと本望だよ……んっ?」


 俺は後ろに振り向いた。


 誰もいないが……

 強い魔力の反応が……


 まいっか。あまり深く考えない。


「どうしたのでござるか?」


「いや、何でもない。それより、どうしようこの人……」


 白目を向いてる男爵子息。

 決闘で倒したとはいえ、なかなか不憫な感じ。


 いや、そもそも決闘は成立するのだろうか?

 ちょっと微妙なところだ。

 条件と勝者の権利はどうでもいいと言っていたよね。誰かを貰いうけるだとか言ってたけど、俺たちには関係なさそうだし。

 

 問題は、立会人だ……


「事務棟の治療院に連れていきましょうか……」


「やっぱ、そうなるよね……」


 あまり、気が進まないけどしょうがない。


「あいや、待たれよ」


「「え?」」


 急に、道の影から人の姿が見えた。

 姿を現したと思ったら、なんか全身黒ずくめの服装をしている。

 その恰好は、却って目立つ気がするんだ。


 さっきの反応はこの人だったのか?

 いや、違うな。手練れではあるけど、魔力はそこまででもない。


「私が、決闘の一部始終を見ておりました。記録も出来ています。そこで倒れている学生は我が国の要人ゆえ、その身柄は我らに預からせていただきたい」


「え?それはちょっと……」


 いきなり相手のホームの人間に仲裁に入られてもな。


「ご安心なされよ。決闘自体はそちらの学生の勝利に間違いございません。私が立会人を務めていました。あとで揉め事にならないように、強く言い含めて、我らが処理しますので……勝者の権利は相場より高めの評定50ポイントを裁定委員に進言する……でいかがだろうか?ちなみに、我らはこれでもこの学園に嘱託職員として席を置いておりますので」


 そういうと、黒ずくめの人たちは1人から5人に増えていた。

 気配を隠すのがうまいね。

 君たちにはとっくに気づいていたけど。


「うーん、ダイゴはそれでいいのか?」


「拙者は構いませぬ」


「だったら、ならいいけど」


「感謝する」


 そういうと、黒ずくめの人たちは、名もなき男爵子息をひょいっと担いで再び雑踏の中へと姿を消した。


 いきなり喧嘩を売られ、いきなり隣にいたダイゴが剣を振るい、いきなり黒ずくめの人たちが現れ、去っていたが、結果としてダイゴが50ポイント稼いだのであれば、それはそれでいいんじゃ、なかろうか。


 立会人が薦めると評定が上がるのかは分からないけど、少なくとも勝負自体はダイゴの圧勝ではあったしな。


「まあ、そんなことよりも昼飯だ。『フードパーク』に行こう」


「お、それはいいでござるな。お供いたします。そういえば、新作のヤキソバまんであるイカスミパスタまんが発売されるらしいでござるよ」


「イカスミかあ……それはちょっと微妙だな」


「そうでござるか?拙者は海に近い街生まれなので楽しみでござる。あとは、堅ヤキソバまんも新発売でござる。麺をパリパリに揚げて、饅頭の中でトロトロの旨味あんと絡めているらしいでござるよ」


「ほう!それは美味そうだな!?」


 今度から、ダイゴがお供をする場合、手に持った棒(とダイゴ本人)に用心しなければいけないなと思いつつ、今はまだ見ぬ新作のヤキソバまんに心を躍らせる俺であった。


 ◇学術棟路地の一角◇


「気づいた……?まさか……」


 建物の高さのせいで陽の光の差し込まない路地はひんやりとしている。


 だが、その理由は日照の問題だけではない。


「やはり、あの男の子は侮れない……『バブル斜光クラブ』を倒しただけのことはある」


「ここにおられましたか、お嬢様」


「モナ。やっと見つけられた……」


「お嬢様は気配を消すのが上手すぎます。いい加減護衛を撒くのはおやめください。皆、困っておりますよ」


「でも、あの子はすぐに気づいた……」


「えっ、あの子?……そ、それより、ま、まさか!?お嬢様の『雪影』にですか?」


「そう……」


 従者であり国の暗部を担っているモナが驚くのも無理はない。


 魔帝国公爵家令嬢であり、『雪月』の称号持ちである『殿上人』シーア=ベンの使う「雪影」は、何年も特殊訓練を受けてきたモナでさえも察知するのが困難な魔法だ。


 察知できないがために、従者でありながら、こうして主人に何度も撒かれているのだ。


 モナに限らず、シーアには常時5人以上の従者が行動を共にしている。


 その全員を一瞬で見失わせるほどの魔法に気づくとは、彼女の言う「あの子」とはいったい誰のことなのだろうか。


「ふふっ、『選抜戦』楽しみになってきた……」


「シ、シーア様。興味がわいてこられましたか!?」


「うん。頑張る、頑張る。これから特訓、特訓」


 従者モナは未だわからぬ「あの子」に感謝した。


 彼女の主人がここまで何かにやる気を見せるのは久しぶりのことである。


 祖国のためにも、願わくば、そのやる気が「春の選抜戦」、いや「皇師宴」まで続くことを、信仰する氷の女神にそっと祈るモナであった。


ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。

もしこの物語を面白い!と気に入っていただけたら、どうか、いいね、評価、ブクマ登録をよろしくお願いいたします。今後の執筆の励みになります。


今更ですが……『ボン魔帝国』というのは魔族の国ではありません。

ちょっとした由来があるのですが、いずれどこかで触れるかもしれません……

今はそんな国があるんだなーと思っていただければm(_ _)m


次回、第3章は初登場。あの女性キャラの回です。


ノーウェと仲間たち(とブルート)の活躍に乞うご期待!



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