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3ー10『光と影』

派閥【紫雲】は「春の選抜決闘」に向けてメンバー個々のレベルアップを図るため、派閥ポイント200を分配し、各々が「勝手に強くなる」ために模索していくことを方針とし、各自その道を模索していくこととなった……

「はっはーーー。素晴らしい仕上がりだろうーーー?私の作ったクローニマムンクルスはーーー!?」


 おう!?


 漆黒のローブを羽織ったクローニ先生は、クローニ先生ではなく、ダメ教授の作成したクローンのクローニ先生マムンクルスだったのか!?


「すごいですね!?こんなに細部までそっくりに作れるなんて」


 何なら先生の無精髭の濃さまで一致してるまである!?


「はっはっはーーー!私は天才だからなーーー」


「違うよ。称号の力によるものだろう?」


 横やりが入った。


 本物のクローニ先生だ。


 偽物のクローン先生は、絶賛ヘンテコなタコ踊りをしている。


「このクソ教授の称号は『透影とうえい』。光と闇の魔法を駆使して物体の造形をコピーした上で、土魔法を使って魔石と魔道具を組み込んだ土人形に投影させるんだよ。親子揃ってふざけた力だよね」


 本物のクローニ先生は、ダメ教授がその両手に持つ、魔道具だろうか、レバー付きの四角い箱のようなものを奪おうとしているが、激しい抵抗に遭っている。


 偽物のクローン先生は、片足を上げながら両腕をぐるんぐるん回す。

 今度は、もう片方の足を上げながら再度両腕をぐるんぐるん回す。

 

 なんだ、このカオス!


「クローニ先生、マーゴット教授、ちゃんと仕事をしてください。俺たち学生の時間は有限なんですからね」


「「む……」」


 とりあえずカーティスが興奮するクローニ先生を取り押さえ、勝ち誇っている教授とまとめて諭す。


 生徒にたしなめられるダメな大人たちの図の完成だ。


 俺も真面目に実験の準備をしよう。


「それじゃーーーいくぞーーー!?こっちのアホマムンクルスの攻撃は基本的には『グランアース』や『グランストーン』だーーー!本当はエクス級にしたかったけどーーーどっかのアホが協力してくれなかったからなーーー」


「ぐぬぬっ……」


 無視、無視。


 俺は本物ではなく、偽物の方に神経を集中させる。


 ◇実験開始◇


「ワガ名ハ、クローニ。シッコクノツバサデ、ヤミヨノソラヲ、カケルオトコ……」


 はいー?


 偽物が何か訳のわからないことを宣っている。


 いくらマムンクルスだからって、言ってて恥ずかしくないんだろうか……?


「ヤミヨ、ワガモトニ!『グランアース』」


 いや、土魔法だから頼む相手が違うだろう。

 頼むなら土に頼め、土に!


 おっと、ツッコミ入れてる場合じゃないな。


 大きな土の塊が飛んでくる。


「『マジックボム』」


 俺が魔法を放つと、拳大の魔力の玉が土塊に向かう。


 次の瞬間、魔力玉は土塊の中にめり込んでいき、程なくしてカッと光を放射状に発しながら、細かい土の粒子とともに爆散した。


「なんだそれはーーー?」


『マジックボム』はその名のとおり、魔力の塊を爆発させる技。


 物資などにはまったく効果がないが、魔力に対しては爆発時に一緒に爆散させてしまう効果から、かなりの威力を持つ。


 魔法、魔道具などはもちろんのこと、魔物や人間に対しても、標的の魔力次第では有効なので、使い方次第でかなり危険な魔法になる。


「潜り込んで中で弾けた感じだったね」


 さすが、本物はお目が高い。


 偽物が放った土塊は、外殻は魔力を帯びておらず、内側に、魔力を内包している。


 均一に配置されているからこそ、この魔法に誘発されて中の魔力が四方八方に分散し、結果、土塊の内部組織をばらばらにしてしまうのだ。


 人間や魔物であれば、無意識に魔力による防衛反応が働くらしく、爆散するかどうかは使用者と受ける者の魔力に依存する。


 そう考えるとこの魔法は本質的には対魔法用で、迎撃に特化した魔法なんだろうと思う。


 ……本質的には、ね……


「あんなん使う魔物がいるってことですよね?絶対に出くわしたくないな……」


 その意見には同意する。

 もっとも、カーティスとは違った理由だが。


 この『マジックボム』を使用してくる魔物は「シットモンキー」。


 木の枝の上に座って、威嚇しながら攻撃してくる猿型の魔物だが、魔力自体はさほど高くはなく、ある意味宝の持ち腐れといえる。


 魔物の魔法には往々にしてこのようなことがあるんだよな。


 弱い魔物が使いこなせない強力な魔法を持っていたり、逆に、強い魔物が低威力の魔法を使ってきたり。


 もっとも、後者の場合、それはそれで困るんだけど。


 例えば、いくら低威力でも魔力量が尋常じゃない竜にずっと炎を吐き続けられるのは、高威力の魔法を1発放たれるよりもよっぽど厄介だ。


 話が逸れた。


 シットモンキーが、もし単純に『マジックボム』を放ってくるだけなら、単に宝の持ち腐れ攻撃なだけであって、そこまでの脅威ではない。


 受ける側の魔力が高ければ、ゴブリンの『マジックパフ』よりも弱いまである。


 でも、場合によっては宝の持ち腐れどころか、本当に腐ったクソみたいに邪悪な攻撃に変わるんだよ。


 特に食後は要注意ね。


 シットモンキーは、自身の糞に包んでこの魔法を放ってくるからね……


 しかも、なぜかやつらの糞は魔力を帯びているんだよ。


 あの時ばかりは『シェル』を覚えていてよかったと心底ホッとしたよ。


「ヤミヨ、インセキヲハナテ」


 おっと、次なる攻撃が飛来したぞ。


 まずいな……あれでいくか。


「『王手待ち』」


「何をしたんだーーー」


「魔法を消した?」


「マジかよ……」


 おう、ごっそり魔力量が減った気がする。

 やっぱ、この魔法は、1日1回が限度だな。


 これこそ魔法専用の魔法。

 相手の発動した魔法に「待った」をかけ、1つ手前の状況に戻すふざけた魔法がこれ。


 「森の賢者」と呼ばれる魔物の専用魔法だ。


 森は変な魔法を使う魔物の宝庫だからな。


 さて、手番が変わったので、今度はこっちが先手を取らせてもらおうか。


「『アース・メクルメクレオニクル』」


「消えたーーー??」


「ヤミニ、マギレタ?」


 いや、紛れたのは土に、だ。


 これは、カメレオン型の魔物であるレオレオニーズの固有魔法。


 近くの物資に擬態する魔法だが、これに属性をつけることによってその属性に擬態する……というよりしているように相手が錯覚する。


 せっかく土がたくさん散らばっているしね。


 そっとクローン先生マムンクルスに近づく。


 闇が好きならお望み通り閉じ込めてあげよう。


「『シャドープリズン』」


「お、出てきたよ」


「何だーーー?動けーーー、動けーーー!」


 マーゴット教授が必死に魔道具のレバーを動かしている。


 無理だよ。


 俺の影の中にいるからね。


 減った魔力量を回復させてもらうまでは。


 こいつを習得するのはかなり苦労したんだわ……


「マイリマシタ」


「「「終わったーーー!?」」」


 ……


 ………


 …………あっ!


 いかん、吸い取り過ぎた……!


 そして、『スプラッシュマジック』使い忘れた!


 ◇実験終了◇


「なるほどーーー」


 実験終了後、マーゴット教授に1つ1つの魔法の解説をする。

 使わなかった『スプラッシュマジック』も含めて。


「説明を聞いたところで、応用できるのかね?」


 クローニ先生が尋ねる。


「いや、できないなーーー!説明を聞いてもさっぱりわからんーーー」


 だろうね。

 俺も現象や作用、あるいはその魔法がどの属性の範疇なのかは話せるが、原理は説明できない。


「でも、似たような魔法を生み出すことはできるかもしれないからねーーー。実に興味深いーーー」


 まあ、『スプラッシュマジック』や『マジックボム』なんかは似たものができるかもしれないし、『メクルメクレオニクル』もダメ教授の称号とは相性が良い気がするからひょっとしたらいけるかもしれない。


『王手待ち』と『シャドープリズン』は、どうやっても難しい気がするけどな。


「ピコーーーン!ふっふっふーーー良いことをおもいついたぞーーー『マジックボム』と『スプラッシュマジック』」


 あ……


「何か嫌な予感がするね」


「奇遇ですね……俺もです」


 ……うん。俺も……


 だって……


 ……ダメ教授、今あのシットモンキーが魔法を放ったときと同じ顔しているもん。


「早速、開発だーーー!魔法は爆発だーーー」


「この2人の組み合わせは1番危険なんじゃないですかね?先生、これはノーウェを教授の実験に誘った先生の責任だと思いますよ!?先生には失望しましたよ」


「え、私?私のせいなの?」


 カーティスに反撃されるクローニ先生。

 なんか、俺がまた危険物扱いされている気がするし、ダメ教授と一緒にされるのは甚だ遺憾ではあるけど……


 ……まっ、俺のせいじゃないな。


 あと、余談だが……


『スプラッシュマジック』の使用者であるスプラッシュフォックスの生息地と使用魔法の属性について、後日『情報通』なる人物の冒険者ギルドにおける調査報告のスクープ発信と、とある研究者の疑義により、これまで砂漠のみに生息する魔物であり、砂属性の魔法を使うという論文は全面的に見直されることになったそうだ。


 ……まっ、どうでもいいな……!


◇帰り道◇


 ダメ教授の実験に付き合い、外に出たら、すっかり夕暮れとなっていた。


 俺は、マスボの画面を確認しながら焦った顔でいそいそと商業施設エリアの方に走り出すカーティスを温かい目で見送り、たまには1人で寮のご飯でも食べようかと歩き出した。


 学術棟を過ぎたあたり。

 どこからともなく聴こえたカラスの鳴き声に1度空を見上げたまま歩いていると……


「初めて会ったな……ノーウェ=ホーム」


 反対方向からやって来た灰色の髪の学生が、すれ違いざまに声をかけてきた。

 その男子学生は前髪を目が隠れるくらいまで伸ばしている。


「初めまして。あんたは?」


「クックック……あくまで上から見るか……いいだろう」


「え?」


 上を見ていたけど、上からは見ていない。

 身長も見た感じ同じくらいだし。


「今に僕が君のことを見下ろしてやるさ……次会うときまでに僕の名前をしっかり覚えて胸に刻みつけておくがいい!」


「え?」


「クックック……クークック……クハッ……クハッ……クフッ……」


 そう言って、灰色髪の男子学生は笑いながらその場を去った……


 ……

 …………

 ………………


 ……で、誰?

 お名前は???


ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。

もしこの物語を面白い!と気に入っていただけたら、どうか、いいね、評価、ブクマ登録をよろしくお願いいたします。今後の執筆の励みになります。


ノーウェのマムンクルスもいずれできるんですかね……


次回、ハリーサイド!久々にかわいいあの子たちも出るよっ!


ノーウェと仲間たち(とブルート)の活躍に乞うご期待!


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