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3-4『変数』

「先生……どういうことですか?」


 俺は斡旋元のクローニ先生を凝視する。

 実験体とか、踏み台とか、なかなか穏やかじゃない。


「まあまあ、一緒に話を聞こうじゃないか。マーゴット、椅子を借りるぞ」


 そう言ってクローニ先生は奥にあった丸椅子をふたつ持ち上げると、足場に困りながら恐る恐る歩いて戻って来た。


 邪魔だから散らかっているものを片付けるか。


「『ウインドーコルナード』」


「おおっ!!それが例の不思議な魔法かーーー」


「威力も調整できるのだね」


 巻き上げた本や実験道具を今度は『フロート』で浮かせる。

 クローニ先生と2人で手分けして種類ごとにまとめて奥のテーブルに載せていく。


 この惨状を招いた首謀者は浮いている本や実験器具をじっくり観察している。


 ……手伝えよっ!?


「こいつ、見ての通り研究以外には何もできないダメ人間だからさ。構うだけ無駄だよ」


 クローニ先生は生温かい目でダメ教授を見つめている。

 詳しい話を聞くと、先生と教授、それと透明マスクは同期の花なのだそうだ。

 

 実に濃いというか、変人の集まりというか……

 あと、俺は先生ほどこのダメな大人とのつき合いが長くはないから、そうやすやすとは達観できませんよ。


 結局、俺たちで本や器具を片付けて回り、室内を整理した。

 さすがに、酒臭い空き瓶と納豆のねばねばが残ったビーカーは自分で片付けてくれ。


「ありがとーーー!君のその不思議な魔法には【魔転牢】との決闘のときから注目していたんだよーーー」


「……そうですか」


 映像で観ていたということかな?

 それとも開発者だから何か特別な方法で決闘が観れたのだろうか。


「マーゴット、君、その【紫雲】対【魔転牢】の決闘のとき、あの第3の部屋のマムンクルスから何かおかしなことをしていただろう?」


「んーーー?」


「とぼけるんじゃない。一角馬の形態から羽を生やすなんて、君自身が操作していないと無理だろう?それに、明らかに【紫雲】の攻撃を受けての対応だったからね。しかもあの学園長マムンクルスときたら……」


「ふっ、バレたかーーー」


「バレたか、じゃないっ!!」


 なんか、クローニ先生ってこういう女性に対して振り回されている感じだよね。

 ジャネット先輩の派閥の顧問の先生といい……難儀な人だ……


「まったく、【紫雲】が勝ったから良いものの、もしあれで何かあったら君の責任になっていたところだよ」


「んーーー?でも、おあいこだしなーーー。だから、まいっかーーーってことで」


「「おあいこ??」」


 いかん、先生とハモってしまった……

 苦労体質が移ってしまう。


「そうさーーー、その前の部屋で私が心血注いで開発した『結界変動プログラム』を誤作動させやがったからねーーー。まさか、暗転時に穴に落ちるなんて『変数』をいったい誰が考慮できるんだよっ、て感じだよねーーー。だよねーーー」


 ん?

 ああ、ブルートが落ちたアレか……

 あれは、こちらとしても、まったくの不測の事態だったんだけど……


「やれやれ。この負けず嫌いが……」


 クローニ先生がため息を吐いている……

 ま、それはいつものことだから、まいっか!


「それにしても、君たちの戦い方は本当に面白かったぞーーー!まさか、あのキャリーの持っていたマスボを使ってこちらの予測をしてくるなんてねーーー!?あれどうやったの?」


「ああ、それは先生も気になったな」


「ああ、あれですか……」


 まあ、隠しておく必要もないかなと思ったので、俺は背嚢から大辞典サイズのマスボを取り出して実演してみせた。


 実演してみせたが……立体映像上でクローニ先生が隕石を落としている……何これ?


 2人は、食い入るように俺のマスボの映像を観ていた。


「ほっほおーーーなんと興味深い!」


「驚いたね……」


 いや、驚いているのはこっちなんだけど。


 先生、隕石を落とせるの?

 やっぱり、決闘で一戦交えてみたいなあ……


 目を輝かせて訴えたけど「やらないからね」と一蹴された……無念。


「なるへそーーー。君のその特異な称号の力によるものなのかなーーー。うん、きっとそうだ。それがこのマスボに左右してとんでもない機能になっているんだねーーー」


「恐ろしいね、まったく。あの白鼠しろねずみもとんだ代物をとんだ人物に渡したものだよ」


 ……あっ!自分を貶されたと勘違いしたのか、マスボが立体像のクローニ先生に恥ずかしい恰好をさせて挑発している。先生、赤面。


「わかった、わかったから!!君は大陸一の素晴らしいマスボだから!!」


「ふーーーむ、実に興味深い」


 そして、立体像のクローニ先生を食い入るように見つめるダメ教授……

 ……なんなの?

 このカオスは……


 とりあえず、事態の収拾をつけるために、ダメ教授に決闘戦での話を詳細に聞くことにした。


 教授曰く、彼女が結界を操作し、手を加えていたのは第3部屋の第1形態であったドラゴンフォームからだそう。

 はじめは、少々悪戯してやろう、ぐらいの心づもりだったらしいが、第2形態の羽人間フォームでこちらが作戦「ブランク」を発動させたあたりから驚きのあまり、ついつい勝負に熱中してしまい、あれこれ手動で操作をしたのだと自白した。


 一応、クローニ先生が愚痴のようなお説教をしていたので不問にすることにする。

 馬耳東風な気もするけどね。


「それで本題なのだけれどね、彼女からあの結界を改良したい、そしてそのサンプルを取るために腕利きの対戦相手が欲しいってことで誰かいないかという相談を受けていたんだよ。いつもはこの手の実験には彼女の娘と彼女の派閥の学生たちが協力しているのだけれどね、あいにく今、遠出をしていて不在なのだよ。そこで君に白羽の矢が立ったというわけだね」


「え?娘さんは派閥の長なんですか?」


 そいつは初耳だ。


「ん?言っていなかったかね?このマーゴット教授の娘はクレハ=エジウス。現在、2年生の首席で学生ランク4位の実力者だよ」


「ああ、以前先生が話していた、俺の村に向かったっていう……」


「そうそう」


 そういえば、入学式あたりで話を聞いていた気がするな。

 ダンジョン研究をしている学生がどうとか……


「そのクレハ先輩は、ちゃんと村に辿り着けたんですかね?」


「それは確認しているよ。私の古い知り合いの冒険者が後を追ったからね。ただ、村でやることが山のようにあるとかでまだ出立できないらしい」


「ああ……」


 なるほど……

 察してしまった。

 これは、きっと捕まってしまったな……

 ……あの鬼に……


「早く帰ってきてほしいのだが、こればかりは仕方ないなーーー。私も研究となったら、やりたいことが山のようにあるからなーーー」


「まあ、母親からしてこんなだからね……」


「よく許可出せましたね、こんなんで」


 白い目を向ける俺と先生。

 今日はやたら気が合う。


「学年1位になったからなーーー。娘と約束したんだ。2位じゃダメだよーーーって!」


 ダメなのはあんただ、と口まで出かかったけどなんとか堪えた。


「ダメなのは君だよ……」


 先生は堪えられなかった。


「まあ、そんなわけでクレハ君たちが戻ってくるまでの間、彼女のお守り……いや、研究に協力してほしいのだよ。短期の助手アルバイトってところかな」


「……つまり、あのマムンクルスの相手をするってことですか?」


「そうだーーー!最近、ゲームなんぞ作って私のROOMを攻略した気になっている不届き者が出てきたからなーーー。ここらで、さらに進化させて奴らの及ばない領域まで達してやるーーー!そのためには、君みたいな存在そのものが『変数』なやつは打ってつけの人材だーーー」


「まあ、そういうわけだよ」


 なるほど。「変数」はよくわからんが、俺は例のマムンクルス相手に色々と魔法を駆使して戦っていけばいいらしい。


 あのマムンクルスなら、決闘時のルール無視で戦えるのであればなかなか歯応えのある相手になりそうだしね。

 何より面白そうだ。


「それとーーー、もし可能なら他にも君の派閥から何人か協力者を募って欲しいーーー。改良版を試す役もほしいからねーーー」


「おおっ、それは良いですね。皆もバイト代と評点もらえますか?」


「もちろんだともーーー」


「ありがとうございます!ダメ教授」


「おーーー!?」


「クローニ先生もありがとうございました」


「うむ。うまくまとまったようでよかったよ」


 瓢箪ひょうたんから駒というべきか、思いがけず効果的な訓練方法を手に入れてしまったようだ。


 詳細を詰め、俺が3日に1度の間隔で半日手伝いを行い、残りの2日を半日ずつ他のメンバーが行うことに決まった。メンバーも複数OKで、しかも都度変えていいそう。


 皆の分の報酬は、1回協力するごとに評定ポイントを3付与してくれるらしい。

 なかなかの好条件だな。

 10回参加すれば30ずつもらえるんだから。

 しかもバイト代として学生ポイントも一律で5ポイントくれるって。


 俺の分の報酬は提供するサンプルの魔法によるそうなので別途相談。


 他のメンバーの選考については公平を期すためにも、1度リバーに話して決めていくことにしよう。


 通い続けることできっと俺とメンバーたちの能力の向上につながることを期待したい。


「ところでーーー、クローニとノーウェ君に1つ言いたいのだがーーー」


「何かね?」


「何でしょう?」


 もったいぶったような仕草で、ホウキのようなボサボサの髪の前髪部分をかき上げ、腰に手をあてるダメ教授。


「私はダメ教授じゃないぞーーー。私ほど優秀な研究者は他にいないんだからなーーー!?私はまごうことなき天才マーゴット教授だーーー!私がいちばーーーん!娘はにばーーーん!!」


「……はあ、そういうところだよ。アホ教授……」


「納豆臭いビーカーを自分できれいに洗って片付けてから言ってください……」


 とりあえず、ツッコミの能力は、多少は向上した気がする……

ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。

もしこの物語を面白い!と気に入っていただけたら、どうか、いいね、評価、ブクマ登録をよろしくお願いいたします。今後の執筆の励みになります。


ノーウェもたまには苦労人サイドに回った方がいいですよね。笑


次回、あのキャラの別視点になります。


ノーウェと仲間たち(とブルート)の活躍に乞うご期待!


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