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ガソリン生産とオクタン価の話  作者: 有坂総一郎


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製油時に想定される収量とオクタン価予測ー満州原油ー

製油時に想定される収量とオクタン価予測ー満州原油ー


参考文献として、「ガソリンの政治経済学(第1編)‐歴史篇:航空ガソリンとオクタン価100の戦い(1935年)‐」を活用しているのだが、図示されている図2-18のケットルマン原油におけるガソリン最大収量をモデルに想定する限りという話で考えていきたいのだが・・・・・・計算式などがもう少しわかりやすければエクセルとかでなんとかするのだが・・・・・・以下の分量になるのではないかと思う。


ガソリン(オクタン価問わず)30%、重油40%、灯油15%、軽油8%という数字が直留分の分布となる。なおこの際のガソリンのオクタン価は70が27%、87が3%となる。※1


重油40%を熱分解すると直留分のパーセンテージで換算し直すと、重油21.1%、軽油8.5%、分解ガソリン7.2%が得られる。※2


※1と※2の収量を再計算すると、重油21.1%、軽油16.5%、灯油15%、ガソリン(オクタン価70)34.2%(分解ガソリン含む)、ガソリン(オクタン価87)3%となる。※3


※2で得られた分解ガソリンは水素添加処理によって直留分換算で6.5%のガソリン(オクタン価87)となる。※4


※3の段階で軽油16.5%、灯油15%あるうち、軽油10%、灯油15%合わせて25%分を水素分解処理するとガソリン(オクタン価92)18.9%と灯油4.7%が得られる。※5


※3、※4、※5を再建算すると、最終的に重油21.1%、軽油11.8%、ガソリン(オクタン価70)27%、ガソリン(オクタン価87)9.5%、ガソリン(オクタン価92)18.9%となる。


ただし、これは先述している通り、ガソリンの最大収量である為、実際はガソリン収量は下方修正すべきものとなる。


よく原油からの製油段階でガソリン収量が概ね3割というのはこの直留分(※1)の段階を指していると考えても良いだろう。しかし、そこには但し書きが付き、オクタン価を問わなければというモノになる。


上記の数字を見てもらえばわかるが、オクタン価70というのは戦前における自動車用のガソリンに用いる程度のモノで航空機用としてはとてもじゃないが使える代物ではない。よって、2割から3割近い数字があっても使い物にはならない。


そこで出てくるのが4エチル鉛の添加である。


上記文献の図2-17を参照するとわかるが、図2-18における直留分オクタン価70に近いオクタン価64(無鉛)に4エチル鉛を添加すると添加量にもよるがオクタン価80-85付近に達する。


しかし、これはガソリンに適した原油を用いた場合である。ケットルマン原油はまさにそういった理想的な原油である。


しかし、満州の大慶油田や蘭印のミナス油田などはパラフィン系基油であり、これらの場合、直留ガソリンのオクタン価は概ね40-50くらいであり、図2-17で示される通り、4エチル鉛の添加をもってしてもオクタン価70程度までしか向上させることが出来ない。


つまり、単純に製油して4エチル鉛の添加をしただけでは自動車用のガソリンしか手に入らないわけだ。しかも、米帝が用いる自動車用はそれ以上の数字であり、パワー負けするのは当たり前の状態であると言える。


オクタン価をあげるためには再蒸留する必要があるが、その場合、直留で得られた収量の1-3割程度になる。よって、効率的であるとは言えない。


そこで目をつけるのが重油や軽油を熱分解して精製する分解ガソリンである。これは直留ガソリンに比べると概ねオクタン価が5-10高くなる。よって、満州原油で想定する内容としては直留45-50:分解50-55と換算出来るだろう。


図2-17ではオクタン価57.5が参考値としては適当であろうから、これに4エチル鉛の添加することでオクタン価76まで引き上げられる。だが、これも問題点があり、見て貰えばわかるが、4エチル鉛添加の効果は限定的である。これは硫黄分などが原因であるという。


これが※3でオクタン価70の枠に含まれている理由になる。


さて、そこで※4における水素添加の話が出てくる。熱分解時点でオクタン価50-55付近だったものが65-70付近に上がる。これに4エチル鉛の添加することで80-85付近にすることが可能となる。これが九六式水添装置プラントの役割となる。


次に※5で軽油と灯油を水素化分解することでオクタン価75付近の水素化分解ガソリンを精製し、4エチル鉛を添加し、オクタン価92を精製する。これが九八式水添装置プラントの役割となる。ただし、オクタン価75付近はナフテン系基油を基礎にしているから満州原油ではもう少し下がるだろうからオクタン価70付近と想定すべきで、そこから考えると4エチル鉛添加済みでオクタン価87-90付近と考えるべきだろう。


さて、ここまで見てきたが、フードリー法やUOP法などを抜きに考えるのであれば、この九八式水添装置プラントの大量配備が望ましく実現性が高いと判断出来る。


しかし、それではガソリンの総生産量では史実を覆すことが可能であるとしても、質的な問題はやはり覆しづらい状況であるのは変わらないと言えるだろう。


だが、そこで悲観することはない。日本窒素肥料と関連企業の朝鮮窒素がイソオクタンの製造を行っていること、それが史実では39年に工場建設開始、42年に操業しているからだ。


この日本窒素肥料は作中にも登場していて有坂コンツェルンと関わりがあることで、これによって、不足するオクタン価をいくらか補正することが可能である。仮に※5における九八式水添装置プラントで4エチル鉛添加済みでオクタン価87と仮定してだが、イソオクタンによるブーストでオクタン価92-95付近に持ち上げることは可能だ。まぁ、問題は無鉛ガソリン6:イソオクタン4という配合率であるが・・・・・・それでもこれでなんとか出来るなら大分状況としてはマシになるんだが。

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― 新着の感想 ―
[一言] つまりは史実通りの品質のガソリンなら割とどうにかなるということですね。問題は更にその上を目指すには山よりも高い壁を越えなければならないということと同義ということなのですが。
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