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ガソリン生産とオクタン価の話  作者: 有坂総一郎


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ガソリンの作り方

大日本帝国においてオクタン価100は可能かどうか。


答えは可能である。だが、そこには越えるべきハードルがいくつもある。


オクタン価100という話以前に精製されたガソリンは目標とするオクタン価へ調整するに当たっていわゆるブレンドをして作り出すものであると言える。


1,ベースガソリン

2,高オクタン価基材

3,蒸気圧調整基材

4,4エチル鉛

5,酸化防止剤


これらを適宜ブレンドして調整したモノがオクタン価87やオクタン価91と称される製品となる。


ブレンドの割合としてはベースガソリンが概ね50~60%、高オクタン価基材(オクタン価90~100のガソリン)、イソブタンやブタンなど5~10%、そして4エチル鉛を1ガロン当たり1~3cc添加して酸化防止剤を加える。


当然のことだが、ここで重要になるのがベースガソリンのオクタン価がどれだけか、4エチル鉛がどれだけ添加出来るかというところになる。


そしてベースガソリンの素性が大きく影響する。硫黄分、不飽和度が低いほど素性が良く、ブレンドによる高オクタン価につながるというものである。


では、その素性が良いベースガソリンとは何かと考えると世界の原油の素性を見ると一目瞭然と言ったところだろう。


例えば、中東油田は硫黄分が1~2%以上含まれるが、蘭印や満州油田は0.1%以下である。カリフォルニア油田が0.5~2.5%程度であるという。テキサス油田が0.3%である。


さて、そうすると満州油田は素性が良いと思うが、そうではない。満州油田は基本的に重油分が75%でガソリンに使えるのは僅か10%、蘭印は66%が重油でガソリンが12%である。


「このはと」世界では満州油田と華北油田を手に入れている関係上、満州若しくは内地における原油精製量は史実よりも遙かに大きくなっているのは間違いないが、問題はガソリンに使える分量はそれほど多くないということ。


イソオクタンの量産に欠かせない精製によって生じる分解ガスを得ることは史実よりも遙かに容易になっているとはいえども、それは単純にオクタン価を上げることが可能になったとは言い切れない。


参考にしている資料を基に考えると満州油田の直留ガソリンは恐らくオクタン価40~50程度であるだろう。仮にオクタン価45とすると4エチル鉛を1ガロン当たり6cc添加した場合、概ね72程度になる。仮にオクタン価55であれば同条件で概ねオクタン価78程度となる。


さて、では驚異の米帝スペシャルはどうかと言えば、最初からオクタン価65である。これに1ガロン当たり6ccの4エチル鉛を添加するとこの時点でオクタン価85である。よって、この時点でオクタン価が7~10も違ってくる。


これがまずは基礎となると考えて良い。


だが、これはあくまで第一段階だ。


原油1万ガロンに対して、満州油田で10%のガソリンの取り分であるため、1000ガロンがこの時点で得られるわけだ。


しかし、これはスタートラインである。


オクタン価87~92を目指すため、高オクタン価分を得るために直留分を再蒸留する必要がある。その結果、100~300ガロンにまで減るのだ。よって、航空燃料用の直留ナフサを得るためには高オクタン価原油を必要とする。その最たる例が前述の米帝スペシャルである。


さて、米帝スペシャルみたいに4エチル鉛を添加すれば実用水準のオクタン価を稼げるようなチートに頼ることが出来ない大日本帝国は地道にやるしかない。その為、直留ガソリンを熱分解することでオクタン価を上げることになる。


熱分解によって、直留でオクタン価45だったものは概ねオクタン価55程度まで品質が向上する。これに4エチル鉛を同様に添加するとオクタン価75程度まで引き上げられる。オクタン価55だったモノは概ねオクタン価78程度へと向上する。


気付いたと思うが、直留に比べると上がり幅は少なくなっている。これは熱分解ガソリンがその性質上硫黄分やオレフィン含有率が高いことで4エチル鉛の添加効果を引き下げているからだ。よって、このままではどんなに頑張っても素性が良かろうがオクタン価80が限度となる。


これを改善するには熱分解ガソリンを水添処理する必要が出てくる。


そこで、徳山燃料廠の資料が出てくるわけだ。


熱分解ガソリンオクタン価72に水添処理をしたものに4エチル鉛を1ガロン当たり4cc添加するとオクタン価87の航空ガソリンが生産されるのである。


これが1936年からの基礎燃料になったわけだ。


それと同時に軽油を原料油として水添分解し、ガソリン留分を製造し、これに4エチル鉛を1ガロン当たり4cc添加するとオクタン価92の航空ガソリンが生産される。


これが戦時中における作戦用燃料になったわけである。


ここまで見ていくと、製油所やガソリン精製生産設備の拡充さえ進めることが出来れば航空燃料のオクタン価91/92への統一規格はそれほどハードルが高くないことがわかる。


つづく

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