主人公さんに落とされてなるものか、私はモブだ
どうやら異世界転生をしているぞ、と気付いたのは果たしていつだっただろうか。
詳しくは知らない。気づいたら「おや?」という感じだった。
それだけなら別に何も問題なかった。
ただ、私の周囲ではなんだか色々な事件が多発していたのである。前世でこんなしょっちゅう何事か起きるような事がなかったけど、これが異世界……!
なんて恐れおののいていたのだけれど、どうやらそれも違った。
多分、もしかしたらだけど。
私が転生した世界は前世で言うところの何らかのゲームとか、そういう感じの世界だったのである。
いやだって、気付いたらループしてるの。
あれこれ前にも……って思ってさ、なんか既視感あるなって思ってたの。
そこから次はああなってこうなって……って感じで記憶が掘り起こされてってさ。
すっかりこの後に何があるかっていうのを把握しちゃって。
でも、だからって展開の先を見越して自分が何かをしようとは思わなかった。
だって私モブだもの。
事件解決のために何やら戦闘とかあるっぽいのに、そんなところに非戦闘員が行ってどうなるっていうの。怪我して終わり。違う?
最悪死ぬかもしれないんだよ?
嫌だよそれは流石にさ。だから私はループしている事に気付いたからといって、イベントが起きてるであろう場所に率先して近づく事はなかった。むしろそれとなく距離をとっていた。安全第一。
それに私はその渦中の人物でもないから、何も知らない振りをして、毎日を過ごしていれば平穏な日々はそれだけで続いていく。
まぁ、ある時を境に気付いたら時間が巻き戻ってるんだけど。
えぇ~? これいつまで繰り返すの……?
そんな風にうんざりしたところで、私はあまり行動を起こしたくなかった。
バグか何かだと思われて、世界の修正力みたいなものがあったらって考えると私はなるべく同じように過ごすのが無難。
だってどう考えても、モブに何かが成せるとは思えないし。
多分主人公なんだろうなーって思う人の周りには、気付けばたくさんの人がいる。
ここは魔法学園で、そこに隣国から留学してきたのがきっと主人公さん。
彼は多分だけど、身分の高い人。表立って公表していないけれど、でも雰囲気からそれとなく感じられる。
そんな相手にロクに身分があるでもない一般生徒モブが気安く近づいて声なんてかけられるわけがない。
いやだよスクールカースト上の人たちに睨まれるようなの。死ぬじゃんそんなん。
私はここで魔法を学んで将来そこそこ安定した職に就くのが目標なんだから、余計な事に首突っ込む気なんて全然ない。
多分だけど、ループが始まるのは主人公さんが留学してくるところが起点なんだと思う。
既に何度も繰り返しているけれど、それ以前に巻き戻る事は今まで一度もなかった気がするしそこは確定でいいと思っている。
そうして、巻き戻るタイミングは卒業間近のとある日。
多分、彼らは何か……そう、大きな何かを成し遂げたんだと思う。ゲームで言うならラスボス倒したとか。
で、きっとエンディングを迎えてるんだと思う。
そして終わったらまたループ。
……いやなんでやねん。
卒業後の生活をさせてほしい。
いや、ずっと学生してるから前より成績がじわじわ上がってはいるけれども。でも学年トップには流石にいけない。目立ったらなんかさ、怖いじゃん。
もし私以外の人もループしてたとして、こいつもループしてんな、って思われたら面倒な予感しかしないじゃん。
だから程々を維持している。
結果として何度かループしていっても、私の評価は座学はそこそこの本番に強いタイプ、みたいになっちゃった。実戦だけは手を抜いたら死ぬかもしれないので。
もしかしたら、それで目をつけられたのかなぁ……?
実のところ、何回目のループからかはもう忘れたけどここ最近ずっと主人公さんが私に関わろうとしてくるんだよね。最初はあまり気にしてなかった。
ゲームでもたまにモブに意味もなく話しかけたりすることってあるから。
モブから有力な情報は聞き取れなくても、日常の雰囲気とか、周囲でのあれこれとか、そういうのを感じとるくらいはできるからさ。
だから最初のうちは気にしてなかったの。
けれども、その回数がじわじわと増えてきた以上、気にしないわけにもいかなくなってきた。
私が勝手に主人公だと思ってるこの人が本当に主人公かどうかはわからない。けれどもきっとそうだと思うから、今後も私の中で主人公さんと呼ばせていただく。
主人公さんは、留学してきたばかりでループ最初の頃はそこまで注目を集めていなかった。
確かに留学生って事でちょっと珍しげな目を向けられたりはしてたけど、そこまで話題になってたりしてなかったはずだ。
確か、最初の頃はそうだったと思う。
けれども何度目かのループからは最初から成績優秀で、テストの後の成績上位者が貼りだされたあたりから、彼は有名になりつつあった。クラスの中でも目立つ子たちは皆主人公さんの周りに集まってたし、最初の頃はそうじゃなくても気付いたら仲間入りしてた人もいた。
多分、何らかのイベントをクリアして仲間に入ったんだなって勝手に思ってた。
もしかしてだけど、主人公さんもループのたびに色々と引き継いでるんじゃないだろうか。ステータスとか。
でもきっとそうなのよ。
学園で噂になってたあれこれが知らぬ間に解決していたりして、その後で主人公さんの周りに集まる人が増えてってるもの。
完全によくあるゲームの流れだもの。
ただ違うのは。
主人公さんの隣にいる人が変わるのである。
最初は確か、ヒロインって言われたら皆が納得しそうな令嬢が隣にいたの。
でも次のループでは、その令嬢の友人の女騎士を目指してる子だった。
次が始まったら、隣のクラスの優等生。
次のループではしばらくそういった相手がいないなと思ってたけど、学年が上がった後で気付けば後輩の子が隣にいた。
主人公さんはループのたびに恋人が変わっている……!
多分他のお仲間さんはループしてないのかな。だってループした記憶があったら、流石にねぇ……?
私は下手な事に巻き込まれたくないから、何も知らない振りをし続けた。
このループがいつまで続くかわかんないけど、でも前の記憶を持ってるって事は、前回躓いたところも今回は上手くいくかもしれない。散々頭を悩ませてようやく覚えた公式も、今回はわかってるから他の事を学べる。
本当だったら学園に通ってる間にここまでできるはずがなかった私は、しかしそのループを有効活用して沢山学ぶ事ができている。
卒業した後はお仕事に追われて自由に学ぶ事ができなくなるかもしれないから、そう考えたらもうちょっとループしててもいいかも……なーんて。
いや実際永遠にこのループから抜け出せなかったら困るからそろそろ終わらないかなって思ってるんだけどさ。
どうしよ、前世の日曜の夕方にやってた海産物が名前のご長寿アニメ並みのループ時空だったら。あと何十年ループするのってなっちゃう。
いやまぁ、そうなったらいっそさっさとお金貯めて学園を出て好きに生きるっていうのもありかもしれないけど。でもそこは流石に無謀だから、最後の手段かな……
ところである程度の攻略を終えたからなのか、主人公さんは最近のループではもっぱら色んなモブに声をかけたりしている。そして私がその中でも特に関わられている。
以前のループだったら目をつけられたかもしれないけれど、以前熱々の恋人状態だったお仲間とは今はそれなりの距離感で恋人でもないから、嫉妬でどうこうはならんと思うけど、それでもやっぱ内心気まずい。
何度か声をかけられて、話が盛り上がったりして、学園の中でなら同じクラスの知り合いから友人くらいになったと思うけれど、私はそれ以上を望んでいない。
だって、主人公さんは毎回違う恋人を作ってるわけで。
見境なくハーレム作ってるわけじゃないけど、でもやろうと思えばできちゃうんだろうなって思えるくらいに魅力的な人で。
誰が隣にいてもラブラブとか凄いな主人公さんって思ったりもしたけれど。
私は怖かった。
主人公さんは、ループのたびに違う人を恋人にしたりしてるし、それだけ魅力的な人だってわかってるからこそ、私は怖かった。
もし何かの拍子に主人公さんが私と恋人になったとして。
そうして次のループに移ったら?
そしたら、私は主人公さんに対する恋心を持ったまま次のループを過ごすけど、主人公さんは?
彼はループしてるって自覚があるのだろうか?
あったら、あんな風に恋人が変わったりしてないのかも。
でも、一度恋人になった人がまた別のループでなった、って記憶はないから、もし私が恋人になったら、その先のループで私と主人公さんがその関係になる事はないって言っても過言ではない。
穏便にお別れして、とかであればまだいい。
でも、別れるどころか次のループがやってきて強制的に別れた挙句、主人公さんが私との事を忘れて次のループで違う人と恋愛関係になったら。
私、きっと耐えられない。
嫉妬して、それだけならまだいいけど、もし主人公さんの新しい恋人に嫌がらせとかしちゃったら?
ループしてるのが私だけなら、主人公さんから見たら大して仲の良くないクラスメイトが突然自分の恋人に嫌がらせをしたとしか思えないわけで。
そうなったら、きっととことんまで嫌われるのは明らかだ。
次のループで私の方から積極的に主人公さんに迫ったとしても、上手くいかなきゃ私って留学生にはしたなくも言い寄った挙句相手にされなかった惨めな女のレッテルが貼られてしまう。
ループした事で得た主人公さんの情報を使ったとして、それって主人公さんから見たら突然自分の事にやたら詳しいモブが近づいてきた、っていう警戒すべき状況なわけで。
主人公さんの本当の身分とか私知らないけど、もし向こうの国のお偉いさんだったら最悪私の人生が終わってしまう。下手すると私の家族にまで迷惑がかかってしまう。
主人公さんが私と同じくらいの身分であったならそこまでいかないかもしれないけれど、でも立ち居振る舞いを見る限り大分高貴な方な気がするのよね……
だから主人公さんの方から近づいてきても、私は絶対に主人公さんに靡いてはいけないのだ。
だって、次のループがきたら私捨てられちゃうようなものだもの。
恋人になった時は幸せかもしれないけれど、次のループがきたらその幸福はどん底に落ちるってわかってて、それでも彼の手を取るなんてできるはずもない。
私は臆病で、そんな勇気も度胸もないのだから。
これがループもない状態で、他の相手に目移りして捨てられたっていうのなら、私だってまだ気持ちの整理とかできるかもしれない。
でもループしたら私との関係もすっぱり忘れてる相手に捨てられたなんて言ったところで、その時の主人公さんからしたら完全なる言いがかり。
頭の中で付き合ってるって思い込んでる痛々しい女として私の学園内での立場も終わる。
やだ、怖い。
けれども、主人公さんが私と関わる時の私を見る目には、穏やかで、でも激しい熱が含まれていて。
うああ、ぐらっときそう。いやだめだ。
何があったってこれから先、私は絶対に主人公さんにときめいて恋をしてはいけないのだ。
己の人生の平穏のために!!
――あと一回、もう一回。
そんな風に何度もやり直してきた。
時を操る秘宝、なんて御大層な名前のついたアーティファクトは、しかし細かな調整はできないもので。
隣国の魔法学園に留学するところから、卒業前の自分がこの国に一時的に身を寄せる事になった原因でもある黒幕の企みを暴いて解決したところまでが時を繰り返す事ができる限界だった。
最初の頃は自分も未熟で、学園の成績だっていまいちの落ちこぼれと言えなくもなかった。
そのせいで、相手の策に翻弄された事だってある。危険に陥った事もあった。
最初の頃は、この学園で友人どころか仲間と呼べる存在もいなくて、まさに孤立無援の状態だった。
けれども、何度も繰り返していけば流石に関わる人物がどういう相手か、くらい把握できてくる。
相手が好む立ち居振る舞いでもって相手の心に入り込み、そうして不快にならないよう話術でもって相手の信頼を勝ち取っていく。
そうやって、何度か繰り返していくうちに自分の国とこの国を巻き込んだ上でやらかそうとしていた相手の企みを少しずつ暴いていって。
もっと自由に動ければ。もっと自分に権力があれば。
ここまで苦労する事もなかっただろうに。
そう思ったところで、繰り返す事で得た力をもってしても留学する以前までには戻れないから、結局は学生として過ごしながら相手の企みを暴いたり妨害したりするしかなくて。
今回知るはずのない情報をぽろっと漏らした事で不信感を持たれて……なんて事になれば無駄死にするかもしれない。いくらやり直せるとはいっても、だからといって軽率に命を捨てるような真似はしたくなかった。
それでも、最初の頃は本当に大変で、途中で死を覚悟するような事だって何度もあったから。
いっそ諦めてしまえば楽になれるのではないか。
そんな風にも考えた。
けれどその時たまたま遭遇したクラスメイトに、自分は救われたのだ。
自分の存在は無駄で、生きていても意味も価値もないんじゃないか。
そんな風に思いつめていた時だった。
向こうにとっては、授業の提出物の回収にきただけにすぎなくても。
それでも、その時に交わした他愛のない会話で確かに自分は救われたのだ。
それと同時に、彼女の事が気になり始めた。
距離を縮めて仲良くなりたい、という気持ちは確かにあった。
けれどそうやって自分が近づいた事で彼女を危険に巻き込みたくはなかった。
あらゆるものから守る事ができるくらいに自分に力があったならそんな風に考えなくても良かったのかもしれない。けれども、前よりは多少使えるようになってきても、自分はまだまだ未熟であると痛感するばかりで。
それに、彼女とはそこまで親しくもない。ただ同じクラスというだけの、友人どころか顔見知りが精々だ。
いきなり距離を詰めて向こうに気持ち悪い、とか思われたら流石に本気で心が折れるかもしれないので、まずは情報を集めようと思った、仲良くなれる切っ掛けがほしい。
自分が何度も時を戻して解決に導こうとしている件の完全解決もそうだけど、それと同じくして彼女と仲良くなる、というのも目標に加わってしまった。
学園で探偵団まがいのものを作って活動する事になるとは思わなかったけれど、これが案外上手くいくようになってきた。
留学してから最初に起きた事件に巻き込まれたクラスメイトを助けたら、こちらが何かを背負っていると察してくれて、詳しくは聞かないがそれでも力を貸してくれると言ってくれたのだ。
あの時はいいのかそんな軽率に、と思ったけれど、何度も繰り返していくうちにあの事件と自分が抱えた案件とは繋がりがあったので、すっかり相棒と思っている友の勘はすごかったんだな……と思っている。
他にも、本当に最初期の頃の無力すぎて助けられなかった相手も助けられるようになってきて、そうして彼らが、彼女たちが、仲間になってくれた。
自分一人では何もできなかったが、頼もしい仲間たちとの協力で事件を一応解決できるところまでやって来た時は、やっとたどり着いたのだ……! という気持ちにもなった。
けれども、解決はしたが完全解決とはならず、だからこそよりよい終わりを迎えるためにと更に繰り返した。
彼女とも親しくはなれていない。
彼女はクラスの中で孤立しているというわけではないが、どこか壁のようなものがあって、やんわりと相手と一線を引いている人だった。
仲間たちから彼女の事が知れないかと思って聞いても、皆会話をしないわけではないが、そこまで親しくはないと言う。
繰り返すうちに、仲間の一人が恋人のような関係になった事もあるけれど、決して彼女の事を諦めたわけではなかった。仲間としての絆を紡いでいくうちに、何故だかそういう風になってしまったのである。
あれには自分もわけがわからなかった。
こちらから告白したわけではない。
ただ、仲間との関係は良好にしておくべきだろう、と最初期の頃を思えばそう考えるのも当然で、だからこそ皆と友好的な関係に努めていただけなのに。
前回なかった出来事に、あぁ、まぁ、今回は前と違って大分仲良くなったもんなぁ、と思ってただけなのに。
何故だか知らぬ間にお付き合いが始まっていたのである。
すぐさまやり直したい衝動に駆られた。
けれども、もしこの件が、事件解決のために必要なピースの一つだとしたら?
そんな風に考えてしまって、ともあれまずは卒業間近の運命の日まではどうにかやっていったのだ。
恋人になったからといっても、こっちとしては望んだ展開でもない。
だから、接触は必要最低限にしておいた。エスコートするくらいはしたけど、キスだとか、それ以上の行為をした事は一度だってない。
自分の気持ちが彼女にあると、きっと彼女は知らないだろうけれど、それでも彼女に申し訳なかったし、好きな相手がいるのに何故か流れで付き合う事になってしまった仲間にも申し訳なかったからだ。
やり直して時を戻せばこの関係はなかった事になるとはいえ、流石に良心にくるものがある。
ただ、それと同時に他の仲間とももっと仲良くなった場合、今まで知らなかった情報とかを知る切っ掛けになるのではないか? とも思えてしまったのだ。
実際恋人になってしまった彼女と一緒に行動するうちに、魔法の鍛錬にとても打ってつけの修練場に行く事ができるようになったし、結果的に自分の能力を高める事にも繋がったから。
やり直した時にその修練場の場所は憶えていたし、そうなれば次のやり直しの時は他の仲間たちとも修行できた。
他の仲間とも同じように仲を深めていけば、高純度の魔法触媒が手に入ったり、封じられていた魔法の解放に繋がったりと、着々と己の力が増していく結果になったのだ。
次のやり直しの時に、その時の仲間がいなくてもそれらの入手法はそこまで変わらなかったため、必ずあいつがいないとダメ、なんて事はなかったから。
そんな風に自分の中で言い聞かせて、仲間の女性陣だけではなく、同性の友人たちとも交流を深めていった。
そうして事件の解決は、もうほぼ完璧であると言えたのだけれど。
それでも、彼女と親しくはなれなかった。
何度も繰り返した事で授業の内容はすっかり把握しているから図書室で必死になって勉強をする必要もなくなってしまったし、既に魔法に関しても相当なものになっている。
だからこそ、今こそ彼女ともっと積極的に関わって仲良くなろうと思ったのだ。
仲間たちと彼女との関係はそこまで深いものではない。だったら、後はもう自分が動いて彼女と親しくなるしかないのだ。切っ掛けを他者に求めても無いのであれば、もうあれこれ理由をつけないで自ら切っ掛けを作るべきだとも。
けれど彼女は手強かった。
声をかければ会話に応じてはくれるけれど、そこから先には中々進まなかった。
試験前に一緒に勉強しないか、と誘ってもやんわりと断られるし、休みの日に一緒にでかけないかと誘っても応じてくれた事はない。
何度かの会話で好きな物をいくつか知る事ができても、そこをとっかかりに先にいかないのだ。
何度もやり直したからこそ既に事件の解決策も万全で、前と比べれば被害だってほとんどない。
相手の目論見完封である。
仲間との関係は良好で、でもあまり深入りしない程度に留めてある。
最初の頃は助けられたといってもやや遅かったりしたせいで怪我をした者だって、今では怪我をしたといってもかすり傷で、その程度なら魔法ですぐ治るものだ。
もう相手が何を仕掛けてきたところでこちらが大きな被害を被る事はない。
だから、もうそろそろ事件を解決させて時を戻さず未来を歩むべきなのはわかっているけれど。
学園を卒業したら自分は国に戻らないといけない。
そしたら、もう彼女には会えなくなってしまう。
どうしたって諦められなくて、どうにかこの恋を成就させたかった。
あと一回。もう一回。
そんな風に何度も自分に言い訳して。
きっとこの恋を諦める事ができる日が来るまで、何度だって繰り返すのだろう。
願わくばどうか――
どうか、彼女がいつか振り向いてくれますように。
たまにあるゲームで何でこの子攻略対象じゃないんですかねぇ……? ってキャラに執拗に話しかけたりしてもイベントが発生しないので悲しみに暮れる図をなんやかんやした感じをイメージしていただけると。
誰にでもそういうキャラがいるって信じてる……!
次回短編予告
思っていたよりも早くに親が死に、急遽跡を継ぐ事になった若き侯爵にはまだ結婚相手がいなかった。そのせいで周囲がゴタゴタしてきたのもあって、彼は面倒ではない女を嫁にする必要があると考えて――そうして契約結婚を持ち掛けたのである。
それが、後に後悔する事になるとは思わずに。
次回 契約婚ですね、ご安心くださいバッチリです!
割とよくあるテンプレにテンプレを重ね掛けした感じの話。




