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異世界召喚による日本人拉致に自衛隊が立ち向かうようです  作者: 七十八十
第7章 ひとつめの世界 ~愚王と愚王の娘と賢姫と元メイド~
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7-1 賢姫の憂鬱

「はあ・・・」


賢姫と呼ばれる現王妃、シャーロット・クルス・クルセイドは溜息をついていた。


憂鬱な気分にさせられる元凶は世間で愚王と呼ばれる旦那と、愚王の娘と呼ばれる娘である。


跡継ぎと思っていた第一王子は魔王討伐の勇者に同行して戦死してしまった。

さして優秀な息子ではなかったが、嫁さえきちんとつけてやれば人並みに王として統治できるだろうと思っていたのだが、いなくなってしまったのは仕方ない。


となれば、娘に婿養子をつけるしかないのだが、はっきり言って親の自分から見ても、愚王の娘と呼ばれているのを見て


「あ、うん。そうだね」


と思えてしまうような娘である。

周りをかなり優秀なので固めればなんとかなるかと思っていたら、目をかけていたメイドはさっさと世話を投げ出して商人に転身してしまった。


はっきりいってあのメイドなら安心して国を任せられるというくらい優秀な人材だったのだが、自分の利益が最優先という、為政者としては割とアレなところが玉に瑕だと思っていた。

そしたらほんとに機を見てその通りに行動されてしまったのだから、見る目は正しかったことになる。

もっとも、何も嬉しくないが。


「そして極めつけはあれか・・・」


愚王と呼ばれる旦那が突然言い出したクリスティアを嫁に出す話。

どうせ何も考えてないか、誰か有力貴族に吹き込まれたのだろう。

跡継ぎはどうするのかと詰め寄ったら、もう一人つくればいいと宣った。

思わず手加減なしでグーパンしてしまった。


もともと自分が王家に嫁いだのは政略結婚で、そこに情はない。

半ば義務として2人の子を生したが、これ以上あのバカとまぐわうとかごめん被る。

とはいえ、自分が腹を痛めて生んだ子であるから、愚王の娘であろうと不幸にはしてやりたくないという情はある。

あの愚女(スカポン)ではよその家になんて出されたら、家の箔をつけるのに使われて後は冷遇されるのが目に見えている。


「おらぁ!」


王妃が一人憂鬱な気分に浸っていると、凡そ女性が出していいトーンではないガラの悪い声とともに部屋の扉が蹴りあけられた。


「王妃はどこだ!」

「ここにいますよ」


新たな厄介事か、はたまたウルトラCの救世主か、どちらも有り得ると思いながら、王妃は部屋に飛び込んできた女性に声をかけた。


「私の大事な傀儡(クリスティア)が嫁入りってどういうことだ!」

「その傀儡の親の前なんですから、せめて本音は隠してください」


やはり厄介事のほうかと思いながら王妃は溜息をついた。


扉を蹴り開けて入ってきたのは、クリスティアの元側仕えメイドで、今は押しも押されぬこの国はおろか世界有数の商人になっているマリアである。


と、そこで王妃はあることに気付く。クリスティアの嫁入りを阻止するという点において、このメイド改め大商人は利害の一致する味方である。

まぁ、この国が将来的にこの商人の商売道具になる気がしないでもないが、それはそれである。


愚王(バカ)が言い出したことです。私は阻止するつもりですよ。協力してくれますね」

「お、さすが賢姫、話が速い。じゃあ、まずは愚王がバレス侯爵の娘との間につくった隠し子の暗殺からだな」

「ちょっとまってください、なんですって?」


今聞き捨てならないことをこの商人は言ったぞ。

その手の情報は私兵を使って調べさせているが、今まで全く上がってきていない。


「バレス侯爵の娘と愚王(バカ)の隠し子だよ。今回のクリスティアの嫁入りはバレス侯爵が愚王(バカ)に吹き込んだことだろ」

「前からそうでしたが、時々あなたの情報収集能力が怖くなるのですが」


まさか自分の隠し子のこともバレてるんじゃないだろうな、と王妃は冷や汗が流れるのを止められなかった。


「とにかく、その隠し子の暗殺は最終手段です。なるべく穏便にいきましょう」

「そう?早い方がいいと思うけど」

「後処理が面倒です。それに自暴自棄になったバカほど怖いものはないですよ」


死なば諸共とかで盛大に自爆されると後処理が面倒なのである。

為政者としての責任感があれば、そんなことはしないはずだが、多分あのバカにはそんなものはない。


「まぁ、バレス侯爵は魔族・日本排斥の急先鋒だし、魔王と自衛隊には話通してあるし、いつでも助力してもらえるよ」

「内政問題に問答無用で国外勢力を引きずり込むあなたの姿勢、為政者としてはどうかと思います」


こいつに任せたほうが愚王が自爆するより面倒なことになりそうな予感がぷんぷんすると、気を引き締める。


「うぇーん、マリア待ってよう、どこいるのぉ」


そのころになってようやく、おろおろとした半泣きのクリスティアが部屋に現れ、王妃は盛大に溜息を吐くのだった。

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