6-13 転生者は事務処理をする
「皇国で大規模な反乱?」
間諜からの報告を見ていた俺は思わず声を上げた。
「ほう、どれどれ」
横で別の書類を見ていたエリザベートが顔を寄せてきた。
結局、なんやかんやエリザベートに押し切られて結婚することになったので、今の俺はランシュタット王国トルステル侯爵あらため、ランシュタット国王になっている。
もともとはクリスがなんか健気でぐっと来たから結婚しようと思っていたら、エリザに結婚を申し込まれた。
普通そういうのは外国の王族とかとやるもんじゃないのか、と言ったら国内の基盤固めるついでに好きな相手と結婚できるんだから、私のために受けてくれとか言われた。
とはいえ、それでクリスを放り出すような薄情な真似はしたくないし、どうしようと思っていたら、エリザに、国王になったら嫁が複数人いるのなんて普通だと言われた。
そう言われてしまうとなんかあれなので、エリザにクリスを第二夫人にすることを条件にしたらあっさりオッケーだったので、エリザと結婚して国王になることになった。
そこでクリスが私は平民だしとか、俺とエリザに迷惑がかかるとか、グズグズ言ったので、エリザが
「功績的には叙爵して問題ないだろ」
って言って子爵にしてしまう一幕もあったが、最終的にクリスも泣いて喜んでくれたので良かった。
まぁ、それはともかく
「やっぱりこの間の情報、正しかったのか」
「これを見る限りそうだろうね」
先日もたらされた、皇国軍主力の2個魔導騎士師団が文字通り「消滅」したという情報を、俺とエリザ、クリスは「眉唾」と判断していたのだが、どうやら事実だったようだ。
「皇国はバラバラになるな」
「元々軍事力で併合して押さえつけてた国だから、あの情報が事実だったなら当然の結果だね」
エリザはざまぁみろといった感じで報告を読んでいる。
「このチャンスに失地回復でも目指してみようか」
「失地回復?」
「私が王位継承したときのゴタゴタの間に皇国に切り取られた場所があるのよ」
そんな場所があるのか。
なら相手がゴタゴタしてる間に取り戻すのはありか。
「けど皇国の2個師団を消滅させた存在が謎だよなぁ」
「なんか皇国に一方的な条件突き付けた国があるとかいう噂はあるけど、そんな未知の国にできることじゃないしねぇ」
「拡散魔力爆発でも起こしたのでは?」
そこにクリスがお茶を持って入ってきた。
「拡散魔力爆発?魔素を貯めこみすぎてオバーフローしたら起こるっていうやつ?」
クリスに尋ねるが、あれってたしか
「火山みたいなもんだろ。そんな貯蔵庫を人工的に作れるとは思えないが・・・」
「まぁわからないことは考えても仕方ないっしょ。とりあえず軍の準備はさせるよ」
エリザはウキウキとしたように席を立とうとする。
「ちょっとまて、お前、陣頭指揮とろうとしてるだろ」
「私が王位継承の時のゴタゴタで切り取られた場所なんだから、私が先頭に立って取り返してこそ箔がつくってもんでしょ」
スキップしながらエリザはクリスと入れ替わりに部屋を出て行った。
「あれは・・・」
「戦闘が楽しみで仕方ないってところでしょうね」
クリスが溜息を吐きながら言う。
「少しお茶にしませんか」
「そうだな、少し疲れたよ」
ぐっと伸びをしながら机を片付け、クリスとまったりティータイムを楽しむ。
そろそろ書類の処理に戻らないとダメかなぁと思っていると、エリザがてくてくと部屋に戻ってきた。
「どしたん?」
「なんか日本とアメリカっていう国の使節を名乗る人たちが来てるらしいだけど、どうする?」
「は?」
エリザの言葉に思わず間抜けな声を出してしまった。
日本とアメリカって、あの日本国とアメリカ合衆国だよね?
「え?」
なんで?




