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異世界召喚による日本人拉致に自衛隊が立ち向かうようです  作者: 七十八十
第6章 いつつめの世界 ~二足歩行のロボットって人くらいの大きさが一番便利なんじゃね?~
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6-7 自衛官、自由に待機させるのは良くないと思う

『こちらFDC 対TOT「フジ」発動! TOT20秒前!』


会場に設置されたスピーカーから大音量の音声が流れている。


『だんちゃーーーーく いま!』


アナウンスと同時に、18門の榴弾砲による曳下射撃が炸裂し富士山の形をつくる。


「「「「おおー」」」」


富士総合火力演習では恒例の演目だが、ここは東富士演習場ではないし、歓声を上げているのも全員迷彩服である。


「異世界を演習場扱いするのはどうなんだ」

「最近は新兵器の試射にも制約がないからちょうどいいって話もでてますね」


射撃に歓声をあげる日米兵士を後方から眺めつつ、俺は呆れていた。


「なんか最近は資料収集が主で、日本人探しはついでっていうのを隠さなくなってきたなぁ」

「実際、そうそう都合よく見つかるもんでもないですからなぁ」


鴨野曹長は視線を侵入してきたAH(アパッチ)にやりながら答える。

確かに、ここ最近行った核戦争後の世界にせよ、海ばかりの世界にせよ、日本人は見つからなかった。

そもそも、ネットはおろかマスメディアすら存在しない世界では、勇者召喚などで世界中に認知されていない限り、日本人を見つけ出すなんていうのは、天然資源や持って帰ると有用そうな異世界文明(ファンタジー要素)を見つけ出すことに比べ、非常に困難である。


「だが、これはやりすぎだろう」

「日本人とアメリカ人を暇な状況にすると碌なことをやらない見本ですな」


今回の派遣は、陸自が第7師団主力、米陸軍が在韓米軍にローテーション配置されるはずだった第一機甲師団第二旅団戦闘団。

当初アメリカは、海兵隊が第一海兵師団から機甲戦力を抽出して派遣するはずだったのだが、海兵隊ばかりが派遣されていることにいろいろあって陸軍になったらしい。

どこもバランスは大変だねぇ。


「しかし、アニメとかだと二足歩行兵器に戦車ぶつけるのは負けフラグではないか?」


ずらっと並んだ10式戦車とM1A2SEPを眺めながら思う。


「とはいえ、他の対抗策もないでしょう。現状、歩兵携帯対戦車ミサイルがロックオンできるのかどうかも不明ですし」


米軍の(ジャベリン)はシーカー冷却が必要で即応性と発射可能時間に制限がある代わりに、目標に熱源が無くてもロックできるので、多分この世界の二足歩行兵器もロックオンできる。

うちの(軽MAT)はシーカー冷却不要で即応性に優れ、特にシーカー起動回数に制限はないものの、エンジン熱ような明確な熱源を持たない目標へのロックオンはできないので、この世界の兵器に対して有効かは未知数である。


「意外とあっちのほうが有効では」

「まぁ、撃たれたくない兵器筆頭ではありますね・・・」


俺と鴨野曹長の視線の先にあるのは2門の35mm機関砲を備えた87式自走高射機関砲である。


「全弾APDS(装弾筒付徹甲弾)とか殺意高すぎるだろ」

「一応SAPHEI(徹甲焼夷榴弾)も持ってきてるらしいですよ」

「殺意が増してるじゃねぇか」


それを毎分550発×2門とか凶悪すぎる。

米空軍のA-10、AC-130と並んで狙われたくない兵器筆頭だ。


「しかし、この世界での目標に比べて過剰戦力じゃないかなぁ」

「二足歩行兵器の鹵獲と魔石に魔術を封じ込める技術の獲得でしたか」

「二足歩行兵器はその制御系やらなんやらにいろんな可能性を見てるみたいだなぁ。魔石のほうはそこに治癒魔術を封じ込めれば戦場救命や救急救命に革命が起こるって言ってたな」


治癒魔術の解析と再現には成功したようだが、使用できるかどうかとその効果は使用者に完全に依存するらしい。

これを平準化するにはどうしたらいいか、という課題の中で、この世界の魔導騎士と呼ばれる二足歩行兵器が使用する遠距離攻撃用の兵装が注目されている。

魔石投射砲と呼ばれるそれは、特定の魔術を封じ込めた魔石を発射し、命中した箇所でその魔術の効果を発揮させるというものだった。


この世界ではもっぱら爆裂魔術だの、氷結魔術だの、雷撃魔術だの、攻撃手段として使用しているようだが、治癒魔術を封じ込めた魔石を携行させればAEDみたいに誰でも使えるのでは?というのが目論見のようだ。


「攻撃手段としては火砲のほうが有効ですか」

「いかに俺達の世界の兵器が攻撃手段として効率化されているかわからされて、ほとほと嫌になるって装備庁の連中は言ってたな」


まぁ、嫌な言い方をすれば「世界で殺した人間の桁が違うのだ」ということだろう。

全くもって誇れないことではあるが。


「願わくば、兵器をショーにしか使わない世界であってほしいものだ」


総火演もどきの演習ショーを続ける日米合同軍を見ながら益無いことを思うのだった。

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