6-5 転生者は気に食わない奴らと対峙する
「ふざけるな!」
部屋にクリスの怒声が響き渡る。
一方的に勝ちを重ね、本選出場を決めた後、王国騎士団本部の会議室に呼び出された。
曰く、俺達が使っている騎体だけが高性能で卑怯だから、騎体性能を全て開示せよという。
「自分たちの無能を棚に上げて人の成果をすべて開示しろとは、王都の魔導研究も落ちるところまで落ちたな」
「口を慎めよ小娘が!」
クリスは明らかに煽っているんだが、それに顔を真っ赤に反論するおっさん。
なんでも王都魔導大学の教授らしい。事前情報ではクリスを大学から追い出した張本人だとか。
俺は、対応はクリスに任せるから好きなようにしていいと事前に言ってあった。
「そうであろう?自分たちの魔導騎士が遠く及ばないから、他人に研究成果を見せろとは?研究者として、私は何もわからない無能です、と言っているようなものだろう?」
「言わせておけば・・・」
おっさんはぐぬぬと爆発しそうなくらい顔を真っ赤にしている。
けど、俺の騎士ってもともとうちにあった奴にバーニア追加しただけだから、性能だけでいうのなら普通のはずなんだが。
コマンドもコンボもロックオンも制御系に手を入れただけで、武装もそのままである。
「まあまあ、教授、礼儀も知らぬ田舎者に何を言っても仕方ありますまい」
そこで厭味ったらしい侯爵が口をはさんできた。
「魔導に関する全ての成果は、魔導騎士の名家たる我がヘーニル侯爵家に使われてこそ価値を持つのです。そこの研究者も当家で雇ってやるから感謝しなさい」
「寝言は寝ていえ。あの騎体の性能が他より高いから勝ち残ったと思っているような貴様に雇われるくらいなら死んだほうがましだ」
クリスってこんな狂犬キャラだったっけ?侯爵にも噛みついていったよ。
「貴様、無礼だぞ!」
侯爵の取り巻きがなにやら喚きだした。
さすがにそろそろ止めるべきかな?
と、侯爵は手を挙げて取り巻きを制止した。
「あの騎体の性能を開示しないと言うのなら、トリステル伯爵家は以後出場禁止ということになるが?」
「な!?」
ここで初めてクリスが動揺してこちらを見た。
侯爵と教授はニヤニヤと嫌らしい顔をしている。
しかし、この侯爵と教授は何を根拠にそんなことを言ってるんだろうか?
「それは国王陛下のご意思ですか?」
魔導騎士戦術競技会は国王の名で開かれている競技会であり、その出場権は国王によって保証された貴族の権利である。
「現国王は関係ない!あいつの座っている椅子は直に私のものだ!その私が貴様らを戦技会から追放するといっているのだ!」
「では、伯爵家として正式に国王陛下に追放が事実か確認させていただきます。先ほどの発言とあわせて、ね」
クリスを促し、退出しようとする。
すると突然、取り巻きたちが扉に回り込んできた。
分かりやすすぎて言葉もない。
「貴様らがこの部屋から出られるとでも思っているのか?」
侯爵は歪んだ顔でこちらを睨んでいる。
やはり悪役小物はこういう風にわかりやすくないとね。
というか、こいつらは好意的じゃない人物に呼び出された俺が、何の対策もしていないと思っているのだろうか。
「まぁ、まずはそこの小娘・・・はなんだその残念な体は。ちっとも楽しめそうにないではないか」
「顔はそこそこなのだが、体は学生時代からちっとも進歩しておらん」
こいつら仮にも俺は田舎の大したところではないとはいえ、伯爵家次期当主なのだが、そんなのを害したらどうなるとか考えないのだろうか。
いや、今はそれよりも
「なんかごめんな、俺のせいでお前があんなにも侮辱されるなんて」
うっとかいいながら口を押え、泣き顔になりながらクリスの肩に手をかける。
「お前が一番侮辱してるわ!」
慰めたのに、なぜかレバーにいいのを一発もらってしまった。なぜだ。
「ええい、さっさとその愚か者どもをやってしまえ!」
侯爵が悪代官のようなセリフを吐いたとき、扉が激しく叩かれた。
「近衛騎士団だ!ヘーニル侯爵!貴殿に謀反の疑いがかかっている!今なら寛大な措置が約束されるだろう!大人しく投降したまえ!」
うーん、仲良くなったボクっ娘男装男爵に助力は頼んでおいたけど、思ったより大事になってない?
今年の更新は今回が最後になります。
拙い作品ではありますが、読んでいただいている皆さまに感謝を。
来年も続けられる限りは毎日更新を続けたいと思いますので、よろしくお願いします。




