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異世界召喚による日本人拉致に自衛隊が立ち向かうようです  作者: 七十八十
第5章 よっつめの世界 ~なんやかんや言っても大艦巨砲はロマン~
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5-21 高校生、クビになる

「帝国の大海洋艦隊が壊滅的損害?」


何かの荷物を密輸するため寄港した帝国辺境の港。

駐留艦隊はおろか、桟橋すらなく、沖留めしてカッターで上陸する場所を港と呼んでいいのかは知らないが、その港で聞いた噂話を副長が艦長に話している。


「眉唾だねぇ」

「私もそう思いますが、かなり広まっている話のようです」


上陸していたのは副長と僕を含めて5名。

荷物を渡した後、みんなで別れてその噂の情報を集めてみたものの、辺境の田舎町では大した情報は集まらなかった。


この街、というかこの群島は鯱人族が住む地域だが、もともとは独立した国で、帝国に負けて植民地になっていた。

特に資源もなく、泳ぎが得意という種族特性はあるものの、軍艦に乗るうえでは特にメリットもないので、帝国内では鯱人族は冷遇されている。

結果、どちらかというと反帝国的な土地柄ではあるので、誰かが吹聴したそんな噂が広まったのではないか?という推論は成り立つ。


「それに、他から来ている行商船もその噂を信じていました。帝国内でかなり広まっているのではないでしょうか?」

「それがほんとならストーカーもちっとは大人しくなってくれるかね」


このユーニービはもともと帝国が保有していた軍艦である。

まぁ、どうもそのルーツは僕がもともといた日本の軍艦みたいだが、この船がこの世界に蒸気機関をもたらした。

帝国は蒸気機関を独占することで、その勢力を確固たるものにしていたのだが、うちのお気楽艦長、ゴリラみたいな掌帆長、トリガーハッピーな砲雷長、あと何人かの船員が、技術解析用に係留されていたこの船を盗み出したらしい。


で、帝国はもちろんこの船を取り戻そうと追いかけまわしてくるので、追跡してくる軍艦をストーカーと呼んで忌み嫌っている。

ちなみに、艦長曰く、もう蒸気機関の図面はある程度ばら撒いたから、帝国がこの船を追いかけまわすのはほぼメンツの問題。とのことだった。


「まぁ、事実ならうちらにとっていい話だし、ただの噂なら噂で今まで通りさね」


艦長はあっけらかんと言って、その話題を打ち切った。

呆れたように艦長を見る副長の横で、僕は艦長の目に一瞬宿った真剣(マジメ)な光が気になった。




数週間後、母港に帰った僕たちは、その噂が帝国外にも広まっていることを知った。

帝国は戦艦16隻と装甲巡洋艦4隻を失った。というのがその詳細らしい。


もっとも、それでもなお帝国の艦隊戦力は圧倒的なのだが、軍事圧力が和らぐことは確実であり、反帝国の植民地での独立闘争や周辺国の領島奪還の動きが早くも活発化してきたらしい。


「商機だね」


それを聞いた艦長はニヤリと笑った。

もともと、ユーニービは反帝国の組織に武器を売ったり、組織の人間の逃亡を助けたり、連絡を仲介したりといったことも多く生業にしてきた。

そんな組織が活発に動き出したということは、仕事が増えるということである。




そんなわけで、荷物を積んだら数日後に再度出港となったのだが、出港の当日、ユーニービに行くとその前で艦長が仁王立ちしていた。

見ると、乗船を止めているようである。

一緒に来た副長と顔を見合わせるが、副長も何も知らないようだ。


「ようやく全員、揃ったね!今船に乗ってないお前らは全員クビだ!」


艦長の一言でざわざわと集団はざわめく。

と、副長が代表して前に出た。


「どういうことか説明してください」

「どうもこうもそのままの意味だよ。今回から航海は今船に乗ってる乗員だけで行う」


それならクビとか言わずにそう言えばいいと思うのだが・・・。

ユーニービを見ると、甲板にいる水兵は皆、職業水兵で僕のような人数合わせの素人水兵はいなかった。


「副長の私も乗せないんですか」

「現在地合わせられない航海長なんていてもいなくても一緒だろ」


艦長の顔にいつものおちゃらけの雰囲気はなく、冗談を言っているようには見えない。

副長は今にも泣きそうだ。

というか、艦長が人を傷つけるような物言いをするのはかなり珍しい気がする。


「おら、さっさと降りろ!」

「な、なにをする貴様ー!離せー、私の家はあそこだー!」


掌帆長が機関長を無理やり引き摺って船から降ろしてきた。

おっさんが女子高生を無理矢理連れてきたようにしか見えない。

・・・なんか見た目の犯罪臭がすごい。


ぽいっと放り投げられた機関長は、小さく丸まってソトコワイソトコワイソトコワイと小声でブツブツ言っている。その姿がコワイ。


「わかったらさっさと解散しな!」


それだけ言うと艦長はさっさと乗り込んで、タラップをあげ出港してしまった。

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