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異世界召喚による日本人拉致に自衛隊が立ち向かうようです  作者: 七十八十
第5章 よっつめの世界 ~なんやかんや言っても大艦巨砲はロマン~
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5-12 高校生、再び海に出る

「うぅ、ひどい目に遭った・・・」


朝日が眩しい。

徹夜明けには辛い。


とぼとぼと造船所を出て副長のアパートまで歩いて帰る。

早く寝てしまいたいが、ユーニービで寝なかったのはこれから造船所の作業が始まるせいで、五月蠅くて寝てられないからである。


「疲れた・・・」

「お帰り」


ドアを開けると腕を組んで仁王立ちしている副長がいた。

これは怒っていらっしゃる。

そういえば、帰らないというのを聞いていたので書置きなども特に残していなかった。


「た、ただいま?」

「朝帰りとはいい御身分ですね?」


なんか嫁さんに朝帰りを怒られる立場の弱い旦那みたいになってるんですけど。


「も、申し訳ございません」


とはいえ、何の連絡もしていなかったのはこちらの落ち度である。


「何をしていたか聞いてもいいですか?」


いいですかと一応断ることができそうな感じで言っているが、その態度は完全に断ることを許さないものである。

とはいえ、嘘をつくようなことでもないので、起こったことをそのまま話す。


ずっと居着いているのもあれだし、ユーニービの様子も見たかったので造船所に行ったこと。

そこで機関長の世話係と会って、機関室を見に行ったこと。

部屋の扉の銘板を読めるとわかったら機関長が突然飛び出してきて、そのままさっきまで拘束されて翻訳をやらされていたこと。


「機関長と普通に話ができている時点で驚きなんですが」


話し終わるころには、副長も怒っておらず仕方ないなみたいな雰囲気になっていた。

基本的に機関長とのコンタクトは、最初のハードルが高すぎて、みんな越えられないというか、もうむしろくぐれよっていう状態だが、僕の場合は日本語を読めたことで機関長側のゲージが、人見知りとか引きこもりよりも知的好奇心のほうで振り切れてしまったようだ。


「とはいえ、何の連絡もせずに勝手にいなくなったことは事実ですから、次からは注意してください」


最後に心配したんですからとか小声でごにょごにょ言っていた気もするが、聞こえなかったふりをする。

すいませんでしたと謝り、そのあたりで限界を迎えたのでベッドに入らせてもらう。

なぜか副長まで入ってきてまた抱き枕にされたが、気にする余裕もなく眠りに落ちた。


そこから出港までは多忙な日々だった。

副長から航法に関する様々なことを教わりながら、入居中のユーニービに出向いて機関長に翻訳させられたり、突然現れた艦長に副長共々拉致されて朝まで飲む羽目になったり、日本にいたころは考えられない充実した日々を過ごした。


一通りの座学は済んだから後は実地だけだと副長にお墨付きをもらい、機関長は相変わらず部屋から出ることはなく、艦長は相変わらず神出鬼没に人をひっかきまわし、無事に出港の日を迎えた。




「ああ、さらば愛しき人よ!また逢う日まで」


なんか見張り所から大声でポエムを叫んでいる鷹人族の見張り員を、概ねみんな痛いものを見る目で見ながらの出港となった。

なんでも件の鷹人族さんは、とある酒場のウェイトレスといい関係になったらしい。

それと離れるのが辛いのだとか。


ちなみに僕のほうは航海科に転属となったのだが・・・


「あの、副長」

「ん?」

「近いです」


近いと言うか後ろからぎゅっと抱きしめられている。

いろいろと当たって大変です。


他の科員に白い目で見られるかとビクビクしていたら


「くれぐれも副長のことを頼む」

「絶対に副長に航路を引かせないように」

「副長が現在地を確認しようとしたら、それとなく正しい位置に導くように」


と熱い握手まで交わされてしまった。

どんだけ現在地間違えたんだよ副長・・・。

そう言われてしまうと、副長のためにも僕がしっかりしなければと思う。


機関長の翻訳の手伝いを続けてはいるものの、目下の目標は世話係と協力して部屋ですること(ボトラー)()めさせることである。

真人間への道は遠い。


そんな変人たちを乗せて、前と変わらずユーニービ号は出航した。

いつもと変わらないお気楽航海、この時点ではそう思っていたが、僕らが変わらなくても、それを取り巻く世界が変わっていたことを知るのはもう少し後のことだった。

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