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異世界召喚による日本人拉致に自衛隊が立ち向かうようです  作者: 七十八十
第4章 みっつめの世界(真) ~異世界だからって剣と魔法のファンタジーとは限らない~
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4-3 自衛官、異世界で穏やか(?)な朝を迎える

快適なキングサイズの高級ホテルのベッド・・・とはいかないものの、快適な寝床であった。


空も朝から晴れており、気持ちがいい青空が広がっている。

朝食も勝手に用意されているという至れり尽くせり。

異世界に事前偵察に来ているというのに、日本で普通に生活しているより快適なのではなかろうか。


実に平和な異世界の街の朝である。

常に線量計を持ち歩いて、被曝量に注意しなければならないこと以外は実にいい世界である。


「おはようございます桐島さん。よく眠れましたか」

「おかげさまで快適に過ごさせていただいてます」

「そうですか、何かあったらいつでも言ってくださいね」


現在、情報分隊が滞在させてもらっているのは町長の家である。

もっとも、町長の家とはいうものの、日本で言うところの団地のアパートのような建物なので、泊めてもらう部屋には困らないのだが。


この街はシュバルツスタンと呼ばれているらしい。

今となっては由来は誰もしらないらしいが、この町長の家になっているアパートを中心に集まってできた街とのことである。


異世界に初めて転移する際、転移先の状況が不明であるので、まずはNBC検知器だけ放り込んでみたり無人機だけ送り込んで状況を確認するのだが、最初にこの世界につながった時、戻ってきた線量計は針が振り切っていたのである。

結局、何度か試してみて線量に問題の無い地域と繋がったので、事前偵察に派遣されたわけだが、見ていると気が滅入る世界だった。


これまでの世界と異なり、この世界の技術水準は中世や近世ではなく、間違いなく現代、いや現代に近い水準”だったことがある”世界である。


よくわからないクリーチャーに襲われていた人間を助けたところ、それがたまたま町長の長男だったので今の場所に落ち着くことができた。

この世界についての情報も得ることができたので、万々歳だったのだが、報告を送った日本からは何勝手に現地勢力に接触してんだよというお叱りが返ってきた。

いや、見殺しにするのも気分悪いやん?


町長から聞いたこの世界の成り立ちは、まぁ、なんというか、地球の歴史で言うと

「キューバ危機が危機で終わらなかった世界」

という印象だった。


一触即発の核戦争の危機から、その「一触」が起こってしまい、核ミサイルが飛び交う最終戦争(ハルマゲドン)が起こってしまった後の世界。

それがこの世界である。


核ミサイルの応酬で各国の政体は崩壊。

頭が無くなっても末端は憎しみと惰性で戦争を続け、ミサイルに載せる核弾頭が無くなれば核爆弾、核爆弾がなくれば核物質爆弾(ダーティーボム)、爆弾を運ぶ飛行機が無くなれば核砲弾は序の口で、放射性物質と炸薬を詰めたドラム缶をカタパルトに載せて撃ち出すなど、とにかく「相手の国を再起不能にする」ためだけに戦い続けた。


化学兵器ももちろん使用されたし、焦土作戦はあたりまえ、考えられる限りの非道な作戦は全て行われたと言っていい。

最早、元の国も領土も思想も宗教も、何もわからくなっても小競り合いは続いた。

そんな戦争も、戦う人間がいなくなれば終わるのである。


皮肉なことに、戦いが激しかった場所ほど放射線量も高くなり、化学兵器で汚染されるのだから、そんなところで人間が生存できるはずがない。

最終的に戦っていた人間は勝手に死んでいったのである。


では、生き残った人間が皆平和を望む平和主義者だったから生き残ったのかというと、そんなわけはない。

彼らは「運が良かった」だけである。


主要都市は核に焼かれて、他の場所はどこそこ構わず汚い爆弾が降り注いで、シェルターには化学兵器が注入された世界である。

もっとも、そんな世界で生き残ってしまったことが、果たして本当に「運が良かった」のかは議論のあるところだろうが。


そうして僅かに残った人類は、このような集落を作って、細々と生き延びているらしい。


「今日は風も無いので街に放射性物質が飛んでくる心配はしなくていいでしょうが、街の外は注意してください。狭い個所に溜まっていたりしますから」

「ありがとうございます。とりあえず今日は昨日教えていただいた北側の山に行ってみるつもりです」


こんな世界に飛ばされた日本人は災難だと思うが、そもそもこの世界に飛ばされている確証もないのである。

基本的にこの世界は、1つの集落だけで世界が完結してしまっているので情報収集は自らの足によるしかない。


「放棄されたシェルターですか・・・人が残っているとも思えませんが」

「まぁ行ってみないことにはなんとも」

「くれぐれも注意してくださいね。特に閉鎖されたままの区画は要注意です。中に人がいるかも、と思う気持ちはわかりますが、だいたいが中に毒ガスが溜まっているだけですから」

「・・・注意しておきます」


この街の住人の行動範囲内で他に人が住んでいる場所はないと聞いていた。

以前はそのシェルターを拠点に住んでいる人もいたようだが、結局この街に合流したらしい。


突然変異で狂暴化した野生動物(クリーチャー)が闊歩するこの世界では、少数での野外活動は死活問題になるので、ある程度の規模の集落に人は集約されているらしい。

まぁ、安全に住める場所が限られている。というのもある程度人が集まって住んでいる理由のようだが。


そういえば日本からの指令で、突然変異のクリーチャーを調査したいから捕獲しろとかいう命令がきていた。

どうやって化け物みたいな背びれの生えたヒグマとか3mくらいはあるドラゴンみたいなトカゲを捕獲するんだよ。

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