3-10 自衛官、メイドに恐怖する
翌日、騎士団や国王に見送られて王都を出発した。
荷物が面倒なので、荷物運び1人くらい認めてやるか?と思ったが、滝川がアイテムボックスを使えるとかいって、魔法陣ででかい荷物を消してしまった。
曰く、聖剣のアビリティのひとつで、荷物を異空間に収容できるらしいが、荷馬車1台分の荷物くらいは入るものの、それは箱などでひとまとめにしている場合で、中のものを個別に取り出したりはできないらしい。
つまり、着替えや食料、資金を詰め込んだ箱をアイテムボックスに送って、ちょっと買い物したいからお金を出したい、と思っても一度全部アイテムボックスから出さないといけないらしい。
で、しかも荷物は1つしか入らないらしく、水筒1つでも1つ、荷馬車の荷台でも1つらしい。
荷馬車1台の荷物をいれておけば、楽に長期行動の荷物をいれておけるが、出そうと思えば荷馬車1台分のスペースが必要なわけで、結構不便だ。
とはいえ、野営用の装備なら放り込んでおいて問題ないということでもあるので、それだけで持ち運ぶ荷物はかなり減る。
使い勝手が悪いとはいえ、無いより便利なことは確かだ。
結果、徒歩での4人旅となった。
馬でも借りて行こうかと思ったら、クリスティア王女と滝川が
「「乗れません」」
とハモったので徒歩になった。
王女の体力が心配である。
もっとも、俺の読み通りならそんなに歩く必要はないはずだ。
つーか、メイドは乗れんのか。と思ったら
「メイドに不可能はありません」
とか聞いてもないのに答えられた。
メイド怖い。
「で、とりあえずどっちに行ったらいいんだ」
なんとなく行く方向はわかるが、一応聞いておく。
というか、送り出されて違う道行くとか考えにくいし、この道がどこに続いてるか知ってるし。
「この道をまっすぐ向かいます。2日ほどで大森林との境界にある街に着きます」
私は行ったことないのですが、と王女は力なく笑った。
思った以上に箱入りだったのかもしらん。
「まぁ、姫様は箱入りの上に自身も引きこもり気味でしたので、せっかく上級まで育てたスキルもほぼ活かせず、知識ばかり増えた頭でっかちですからね」
メイドが追い討ちかけてるんですけど。
というか主人に対する態度じゃないよね。
「マ、マリア!?」
「旅の間は友人に対するように接して欲しいとのことでしたので」
「お前は友人にそんな容赦なく接してんのか」
友達いないだろ。
「失敬な。確かに四六時中このポンコツ姫様の面倒を見ていてプライベートなんてほぼありませんが、友人くらいはいます」
「例えば?」
「同じ部署のメイドとか?」
「それはただの同僚だろうが」
バカな!?とかメイドが驚愕している。昨日の会場で少し話した印象ではガチガチの堅物って感じだったが、こいつ結構面白いな。
「いや、あの姫様がそろそろ泣きそうなんでなんかフォローを」
おろおろして滝川が言っている。
「大丈夫です、姫様はこう見えて強い子です」
「身近な人がそう言ってるし、大丈夫なんじゃね?」
「えぇ・・・」
なんかクリスティアがうじうじと、どうせ私なんて引きこもりで踏ん切り着かなくて前の討伐は置いて行かれましたよーとかなんとか言っているが気にしない。
「街まで2日ってことはいきなり野営か」
「まぁ、途中に小さな村はいくつかありますが、早めに慣れるという意味でも野営をしたほうがいいかもしれませんね」
私も実際にしたことはありませんし。とマリアは付け加えた。
俺はまぁ慣れたものだし、滝川も前の世界で慣れたものだろう。
現代人2人のほうが野営に慣れてるってどうなんだ。
引きこもりで体力無そうな姫様にあわせてゆっくり歩いていると、ふと違和感を感じた。
演習で奇襲を受ける前や斥候に見られているときに感じるのに似ている。
スキル:不射之射 使用 消費MP:使用中10/分
連続使用は今のところ50分か。
使用したまま寝るわけにはいかないようだ。
付随スキル:遠見 使用 消費MP:使用中15/分
うーん、これはまた燃費の悪い。
と思ったが、まだレベル1だったか。
で、まぁ斥候が隠れていそうな場所を順に見る。
素人考えでは高いところにいそうに思えるが、実はそうでもない。
周辺より高い場所というのはそれだけで目立つし、何より退路が限られるケースが多い。
つまり、塔の上なんていうのは斥候が陣取るには最悪の場所なわけだ。
理想的なのは見張るべき場所、今の場合はこの街道より高くて、隠れられる茂みや木々の多い丘なんてのがいいが、-----いた。
隠蔽のためにそこらで調達した草に埋もれているが、こちらを双眼鏡でしっかり見ている斥候だ。
さて、あとはどうやって俺がいることを教えるかだが・・・つくづくあのいい加減な世界神にフラッシュライトを取り上げられたのが痛いなぁ。




