11-20 怪獣と戦うロボットの映画ってあったよね(みっつめの世界)
転移の閃光とともに現れた巨大なタコ。
身長60mほどある超巨大魔導騎士よりも遥かにデカいタコである。
あと、ついでにパラシュートのついた転移装置も落ちてきた。着地までは考慮されていないらしく
「これ喰われないよね?大丈夫だよね?」
《これまででわかったことだと、あれの餌は放射性物質のようですから、大丈夫でしょう》
巨大なクレーター外縁部に停車したNBC防護車にいる防衛技官から無線が入る。
ちなみに、数台のNBC防護車がいて、クリスもそこにいる。
やばくなったらクリスだけ連れて逃げよう。
「よっしゃ!いくぞ!」
巨大魔動騎士を走らせ、一気にタコに接近する。
《行け!巨大ロボ!》
「その名前はアカン!」
ほんと自重しねぇな!あの技官。
《夜のハイウェイで吼えます?》
「お前いくつだよ!?」
言っている間にタコに組み付くが
「足が多いな!」
《タコなんだから当たり前だろ!何も考えずに突っ込んだのか!》
怒って喚いているクリスさんの声が聞こえる。
だって武器ないし。
とはいえ、タコも図体のわりに力は弱いようだ。
というか、よく見るとそこらへん傷だらけだし、右目も潰れているようだ。
「とりゃあ!」
絡まる足を振り切って、右アッパーをタコの口(と思われる場所)に叩き込む。
と、腕がタコの中にめり込む感覚と共に、その場所から何かを大量に吐き出した。
「どわぁ!」
《なんか吐き出してます!その調子です!》
《なんだあれ!?なんか光ってるけど大丈夫なんだろうな!?》
ハイテンションな技官と、タコが吐き出したものを見てテンパっているクリスが対照的である。
うん、というか墨じゃないね。なんか青く光ってるし。
というより・・・
「なんかタコ縮んでない?」
《そんな気がしますね。もっと吐かせ続ければ、勝手に転移装置も吐き出しそうですね》
つまり口を殴り続ければいいのか。
というか、よく考えてみると口の中に指突っ込まれて喉をおえっとされてるのか。ちょっとタコが可哀想になった。
とはいえ、速く終わらせないと、魔導騎士のNBC防護も限界があるという話だった。
「うおおおおおおお」
《あ、あれはまさか!デンプシーロール!!》
騎士を左右に大きく振りながら、左右からパンチを繰り出す。
意味があるのかは微妙だが、とりあえず弱って無防備になったタコの口にパンチを撃ちこみ続ける。
「ぷぎいいいいいいいいいい」
妙な断末魔を上げながら、タコは体内に貯めこんでいたものを盛大に吐き出し続ける。
《わー、綺麗な池ができあがってますねー》
《言ってる場合か馬鹿たれ!テリオス、大丈夫なんだろうな!》
タコが吐き出したものが青とか緑に光っている。
何これコワイ。
と、だいぶ小さくなったタコが、おえっと最期まで残っていたものを吐き出すように、転移装置を吐き出した。
《よーし、じゃあ、その転移装置破壊しちゃってください》
「え、壊しちゃっていいの?」
《そんな汚染物質まみれの装置もう使えないですよ》
それもそうか。
ふん!と転移装置を踏みつけようとしたところで、転移装置が光り出した。
《あ、やばい》
《テリオス、逃げろ!》
技官とクリスの声を聞き、緊急脱出装置を作動させる。
大型魔導騎士から脱皮するように、通常の魔導騎士が飛び出し、ロケットエンジンで射出されて一気に距離をとる。
着地してから元の場所を見ると、転移が完全実行される前に大型魔導騎士が転移装置を踏んで破壊したらしく、元のまま残っているが
「・・・タコがいないな」
とはいえ、なんとなく締まらない終わりだったが、タコの騒動は終息を迎えた。




