11-19 未知への飛行(日本+α)
入間基地を離陸し、一路太平洋を南下するC-2輸送機が1機。
「しっかし、こんな作戦うまくいくんかね?」
「まぁ、我々がやることはコース通りに飛んで、荷物を降ろすだけですから」
そのコクピットで、機長と副操縦士が愚痴を言っていた。
ちなみに、彼らの本来の所属は美保基地であり、硫黄島への物資輸送のためにちょうど入間にいたので白羽の矢を立てられていた。
「けど、あの装置が空中投下対応してるとか、開発した奴は何考えてたんでしょうね」
「なんでもあらゆる環境で使えて故障しないっていうのが開発コンセプトだから、あらゆる環境に対応できるようにしたらしい」
「パラシュートで降下しながら転移ってどんな想定してたんですかね?」
「知らん」
貨物室の積み荷は異世界転移装置B型。
これをタコの頭上に落として別の世界に飛ばしてしまおう。というのが第二次タコ討伐作戦である。
あとのことは転移先でやるらしい。
《アスター02よりコメット01、誘導を開始する》
「コメット01了解。誘導に感謝する」
空域管制を行っているAWACSから音声通信が入る。
《空域内に民間機はいないが、ロシア空軍のTu-95がいるので注意されたし》
「コメット01よりアスター02、ロシア空軍による進路妨害の可能性は?」
《現状ではこちらへの妨害行為はない。ウィザード03が護衛に着きますのでご心配なく》
コクピットに並ぶ液晶画面の1つに、AWACSから送られてきた飛行経路と空域情報が表示される。
もっとも、飛行経路や脅威情報はヘッドアップディスプレイにも表示されるので、あえて見る必要は無いのだが。
指定のコース通りにしばらく飛行していると、降下の指示がでてきた。
「いよいよですね」
「コメット01よりアスター02、これより投下高度まで降下を開始する」
《こちらアスター02、進路上に脅威なし。進入を開始されたし。幸運を祈る》
雲ひとつない快晴とはいうものの、視界には陸地は無く、ただただ海が広がるばかり。
比較対象がないので、高度計を見ていないと気付いたら海面とキス。なんてことも起こりかねない。
水平線が見えているので空間識失調に陥らないだけましである。
「あ、見えました」
「でかいな」
投下高度まで降りたC-2の進路上に巨大なタコが見えてくる。
丁度タコの背後から接近する形になる。タコの右手に同航する護衛艦もいるが、C-2の侵入を見て退避を始めたようだ。
『貨物室後部貨物扉開きます』
「了解」
貨物室にいる空中輸送員からの連絡を受け、気持ち推力を上げて減速に備える。
「コース良し」
《アスター02よりコメット01、作戦変更なし》
「投下準備!」
『投下準備良し』
「進入コース良し、コースそのまま」
「投下用意!投下まで10、9、8、7、6、5秒前、3、2」
『投下、投下、投下!』
貨物室からガラガラガラという重量物が滑り落ちる音が鳴り、C-2が通り過ぎた空中に何かが放り出される。
そして、放り出された何かは、パラシュートを開き、ゆっくりとタコに向かって降下していく。
投下後に身軽になったC-2は貨物扉を閉め、推力を上げて急速離脱にかかる。
タコと並走していた護衛艦もすでに退避済みである。
異変に気付いたタコが周囲を見回したとき、C-2から投下された異世界転移装置B型は強烈な光を放ち、そして、後には何も残らなかった。
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何もない世界に、その巨大な躰を晒している。
「ほんとになーんもないな、ここ」
《そりゃここクレーターですからね。多分地下でツァーリボンバでも爆発させたんでしょう》
「え、それ大丈夫なん?」
《線量は問題ないから大丈夫です。爆発から30~40年てところですかね》
自衛隊が(人の国の予算を勝手に使って)作った超巨大魔導騎士に乗って、無線で支援車両に乗っている防衛技官と話をする。
ここはなんでも地球で言うと、キューバ危機からそのまま世界大戦に突入しちゃった世界らしい。
《そんなことより、本当に大丈夫なんだろうな!?》
《クリスさんは心配性ですなぁ。大丈夫ですよ。ちょっとタコの口から腕突っ込んで転移装置取り出すだけですから》
「なんでそれの操縦士俺なん?」
《急すぎて他に用意できないんで。けど乗りたいでしょ、それ》
いや、クリスに無理矢理乗せられたんですけど、クリスも心配なら始めからそんなことさせないでいただきたい。
「それより、ちゃんと約束守ってくださいよ!」
《・・・大丈夫ですよ》
その間はなんだ。
《あの約束は私がこいつを締めあげて守らせるから、テリオスは何も心配しなくてもいいぞ!》
クリスさんは頼もしいっすね。
しかし、国王が予算取り戻すために最前線で戦わされるってどうなの?
と、ちょうど超大型魔導騎士の正面前方に強烈な光とともに、巨大なタコが現れた。
ていうか
「聞いてたよりでかくね!?」




