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異世界召喚による日本人拉致に自衛隊が立ち向かうようです  作者: 七十八十
第11章 いろんな世界 ~大怪獣現る~
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11-9 幻ではない襲撃(日本)

中部航空方面隊防空指揮所(DC)

関東、中部、近畿という日本の政治、経済の中枢部の防空を担当する航空自衛隊の指揮所である。

小松、百里の戦闘機部隊を指揮下に収め、昼夜を問わず日本の空を守っている。

もともと中国による偵察飛行(いやがらせ)の増加でオーバーワーク気味だったところに、異世界絡みで政府が中露の要求を突っぱねたのでますますオーバーワークが加速していた。


その照明の抑えられた室内の正面には、担当する防空エリアの地図と、必要な情報が表示された大型ディスプレイがある。

そのディスプレイの潮岬南方の海上に、突如、国籍不明機を示す黄色いシンボルが表示された。


《潮岬南方80海里(ノーティカルマイル)の海上に国籍不明機(ボギー)を複数探知》


警告音とともに、オペレーターの抑揚のない声がスピーカーから響く。


「どうなってる、近いじゃないか。串本は昼寝でもしてたのか」


突然の出現に司令は飲んでいたコーヒーを取り落としそうになる。


《無線による呼びかけには応答ありません。速度160ノットで北方向に進行中。編隊ではないようです》


表示されているシンボルは8つだが、編隊というほどには密集しておらず、かつ速度、高度、針路ともにバラバラで統一性が無い。

何より、日常的にちょっかいをかけてくる中露の軍用機でも、そんなエリアに現れることは稀だし、それ以前に現用の軍用機としては遅すぎた。


「速度も遅いし、反応も小さい。フライトプランから逸脱した小型機か?八尾と白浜に所在不明になっている機がないか照会してみろ」

「それにしては数が妙です。すでにADIZ(防空識別圏)の中ですし、ここは」


副指令が暗にスクランブルを促す。

どっちみち、無線の呼びかけにも反応できない自機位置を見失った小型機だったとすると、実際に航空機を出して誘導するしかない。


「数が多い、小松と百里から迎撃機(FI)を上げろ」

「今からだと接触前に陸に接近する恐れがあります」

「念のためだ、岐阜の第4高射群に準備させろ。それと、小野の陸自第8高射特科群に緊急連絡」


迎撃機を上げる指示を出した後、司令と副指令はマイクを外して小声で遣り取りをする。


《迎撃機上がりました。小松303からF-15J2機、コールサインはプリースト03。百里3からF-2A2機、コールサインはウィザード01》


大型ディスプレイの小松と百里の位置に、緑色のシンボルマークが現れる。


「接触したとして、無線にも応じず、指示にも従わないとなると・・・」

「小型機でも人口密集地に近付かせるわけにはいくまい」

「警告射撃の先となると、前例がありません。最悪、政治問題化する恐れも・・・」

「それは俺たちの考えることじゃない。目の前の仕事に集中しろ」


他に聞こえないよう、小声での遣り取りで司令が副指令を一喝する。

と、突然、室内に警報が響く。


《西空DCより緊急連絡、四国南方海上にて哨戒飛行中だった海自P-3Cが、正体不明の飛行生物により撃墜された模様。乗員の安否は不明。SAR(捜索救難)のため海自US-2が急行中。合わせて新田原305がスクランブル》


一気に室内の緊張感が高まる。


「小松と百里から後詰を上げろ。北空にも連絡、場合によっては通常任務は三沢にカバーしてもらう」


それだけ言うと、マイクを外した司令は副指令に耳打ちした。


「幕僚長と大臣に大至急連絡。正体不明の飛行生物が本州に接近中。場合によっては実弾の使用も止む無し。と」


副指令は無言で頷いて、防衛省との直通回線の受話器を上げた。


《プリースト03、会敵予想時刻まであと30。ウィザード01、会敵予想時刻まであと40》


海自の哨戒機を撃墜した敵対的な飛行生物。

そんなものが、どこから現れたのか。

面倒なことになりそうだ、と心の中で思う司令だったが、実際には司令が思った以上に面倒なことになっていくのだが、そのことを今の彼は知る由もない。

小松の第303飛行隊及び、百里の第3飛行隊(執筆時点では三沢。2019年度中に移動予定)の本来のコールサインとは異なりますが、やっぱり小松と百里のスクランブルといえばプリーストとウィザードですよね!

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…あれ?原子炉危なくね?
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