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異世界召喚による日本人拉致に自衛隊が立ち向かうようです  作者: 七十八十
第2章 ふたつめの世界 ~大学生、勇者になる~
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2-9 自衛官、ようやく動き出す

ターボプロップ特有の低いような高いような唸りをあげながら、デブといって差し支えない機体が離陸していくのを見送る。


AC-130UスプーキーII


王狼からの情報と、それを裏付ける実地偵察で、事前偵察隊が転移した場所が、淡路島程度のモンスターしかいない無人島だと判明した結果、米軍が持ち込んだ対地攻撃機である。


「米軍は何と戦う気なんですかね」


鴨野曹長は高度をあげていくAC-130を目で追いながらため息をついた。

野戦飛行場というには立派な設備が整ったこの場所が、この世界の探索拠点として稼働したのはつい先日のことである。


米軍の今回の派遣戦力はAC-130Uが1機とMV-22(オスプレイ)が6機に運用要員と海兵隊が少々。

どう考えてもこの基地を拠点に、AC-130で援護しつつ資料収集する意図である。

とはいえ、AC-130とV-22の広いカバーエリアのコンビは羨ましい。


対して日本側は事前偵察隊に加えて、退役前なのか実は退役してるのか微妙なRF-4EJ(ファントム)が6機ほど。

他にF-4EJも何機かあるが、飛んでるところを見ないので部品取り用ではないかと思われる。

一応、CH-47J(チヌーク)も2機持ってきているが、もっぱら米軍に負けじと資料収集に明け暮れているようで、こちらには使用順がまわってこない。


つまるところ、この世界に勇者として召喚されたという大学生 滝川雄一(20)を探しているのは情報分隊だけで、その情報分隊はCH-47の使用順がこないのでこの島でぼーっとしているだけという有様である。


世間的にはRF-4EJで探していることになっているが、戦術偵察機で何を探すのかと・・・。


「しっかし、アメさんは随分気合入れた装備なのに、うちはしょっぱいですね」

「ただでさえ数が足りないCH-47(キャリア―)持ってきてるだけ頑張ってるんじゃないかね」

<貴様らの世界の道具は面妖なのが多いなぁ・・・>


王狼までぐでーとしながら滑走路のV-22を眺めている。

まぁ、その王狼を枕にしている桧山二曹と俺もたいがいだが。


「そら、前回の世界で回収してきた金属がなぁ・・・」

「未知の生物のゲノム情報が、とか生物学会も騒いでるみたいですよ」


これまでの地球の法則に当てはまらない、未知の金属や生物を前の世界から持ち帰ったせいで、アメリカは完全にお祭り騒ぎ。

この世界での資料回収にもかなりのプレッシャーがかかっているとのこと。


とはいえ、そんなものを日米が独占することになったので、ますます中露はうるさいようだ。

在日米軍が増強されているのは、異世界転移だけが理由ではないというのも納得の情勢。


ちなみに一方の我が国の防衛予算はお察しである。


「それにしても暇だなぁ」


大きく伸びをしながら立ち上がる。

日本人捜索に本腰を入れていないのは国際関係の緊張も関係している。

あんまり一気に回収しすぎると1つの異世界に留まる理由付けが難しくなるのと、安全だと思われるとマスコミはじめ様々なところがうちも連れていけと五月蠅いから、発見は急がないとの内部方針が出ていた。


そんな内部方針がでていることが漏れる方が問題ないのか?と思うが、マスコミや他国を入れないことが重要だから厳守とのことだった。

召喚で拉致された日本人は可哀想だと思うが、上の方針は「国益優先」らしい。

逆に言うと、救出が国益に適うと判断されたり、時の政府が話題作りしたかったら一気に進むこともありうるので、やっぱり拉致被害者は災難だと思う。


「今のところ異世界に召喚された日本人が死んだなんて話はでてませんけど、実際のところどうなんでしょうね」


秋月三曹がぼそっと言った。


「まぁ、言ってもまだ2つ目の世界だしなぁ。わからんとしか言いようがないだろう」


救出が遅れることによる懸念事項ではあるが、この世界の日本人は勇者として召喚されて、仲間もいたということはわかっているので、野垂れ死んだりはしていないだろう。


<まぁ、あの勇者のことだ、どっかで生きとるだろう>


王狼は無責任に欠伸しながら言っている。

お前の最近の行動、完全に飼い犬みたいだな。

犬だっていうと怒るから言わないけど。


と、突然基地内にサイレンが鳴り響いた。


「指揮官集合?」


首を傾げる。

はて、何かあっただろうか。


「とりあえず行ってくるから、お前らだらけてないでいつでも出れるようにだけしておけ」


そうして俺は派遣部隊司令部となっているプレハブを目指した。




「勢力間の紛争ですか?」


作戦室で聞かされたのは、RF-4EJによってもたらされた情報だった。

なんでも、紛争と思しき武力衝突が発生しているという。


「紛争というか、一方的な蹂躙だな。航空偵察だと防衛側兵力は僅少だ」


多数の航空写真を前に空自のROが説明してくれる。

というか、戦車や装甲車ならともかく、騎馬だの戦列歩兵だのよくわかるな。


「とりあえずこの状況に日本人が関わっているのか、巻き込まれているのか、一切不明な状況ではあるので、いつでも出られるように待機しておいてくれ」


どうやらCH-47が戻ってきたら割り当ててもらえるようだ。

王狼は・・・載らないよなぁ。

本人曰くこの島までは泳いできたらしい。なんでも王狼は隠居したら代々この島で余生を過ごすのが慣例だとか

また、泳いでもらうかと思ったが、二度とやりたくないとかいってたし、吊り下げるか。

重量は象と思えばなんとか許容範囲内だろ。

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