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異世界召喚による日本人拉致に自衛隊が立ち向かうようです  作者: 七十八十
第11章 いろんな世界 ~大怪獣現る~
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11-8 パトロール任務(日本)

夕暮れの近付く高知県室戸岬から南方約400キロの太平洋上。

ターボプロップエンジン独特の音を響かせながら太平洋上を飛行する航空機が1機。


グレーのロービジ塗装に、赤い丸の国籍表示。

海上自衛隊鹿屋基地所属の哨戒機P-3Cのパトロール飛行である。

とはいえ、特に何かあるわけでもなく、一応航路はあるが、さほど過密というわけでもない。

根本的に海上保安庁の固定翼機が足りてないので、航空機による広域哨戒は海上自衛隊の仕事になっているという事情もあり、わりと何もなくても哨戒機は飛んでいる。


あと、意外と知られていないが、哨戒機も戦闘機と同じようにスクランブル待機を行っている。

国籍不明の潜水艦情報があった際に、迅速に対応するには航空機が適切なためである。

副次的に捜索救難任務など、災害派遣にも対応するのは空自と同じである。

ちなみに、そもそも潜っていて姿の見えない「国籍不明の潜水艦情報」がどこからもたらされるのか、という話だが、正確には明らかになっていない。

友好国の探知情報や、各所に海自が設置している海中音響測定所からの情報だろうと言われているが、詳細は不明であり「おそらく」「だろう」で語られる世界である。


そんな哨戒機は11名のクルーによって運航されており、乗員の数は自衛隊が運航する航空機としてはP-1と並んでE-767に次いで多い。


「んん?なんだこれ」


その機上で、レーダーやFLIR(赤外線暗視装置)といった機材を担当するSS-3(レーダー員)は首を傾げていた。

突如、対水上レーダーに出現した反応。


軍艦の場合、近年はステルス形状を採用している関係で、探知が遅れることはある。

ステルス性への配慮が不十分とされるこんごう型ですら、海上交通センターのレーダーが捉えられずにAIS(自動船舶識別装置)と音声通信で現在地をやりとりすることがあるほどである。


とはいえ、それはレーダーの反射波が実際の船の大きさよりもかなり小さいから起こる現象であり、今レーダー画面上に突如出現した輝点は、大きさが100mほどある物体として映っている。

この大きさの船舶であれば、普通に探知できていなければおかしいのだが、突然至近距離に出現した。

AISの情報も確認してみるが、該当地点にAISの情報は無い。


「SS-3からTACCO(戦術航空士)正体不明(アンノウン)のレーダー反応(コンタクト)方位(ベクター)235、距離10マイル。突然現れました」

TACCO(タコ)からSS-3、スクリーンの故障じゃないのか?』

「SS-3からTACCO、動いてるから違うと思いますが」


SS-3が見ているのは所謂一次レーダー、各種情報処理が為される前の純粋な反射波の情報である。

そこからエコーや海面の反射波など、不必要な情報は省いて、探知目標の追跡番号(トラックナンバー)やAIS、IFF(敵味方識別装置)などから得られる情報を追加して表示するのが二次レーダーである。


かつては一次レーダーしかなく、そこからせっせと情報を読み取って黒板やホワイトボードに書き込んでいたのだが、デジタル化されて処理装置が自動でやってくれるようになってからは、一次レーダーを直接見ることは少なくなっている。

とはいえ、精度が上がっても自動化は良し悪しなので、特に水上目標や地上目標では一次レーダーが未だに活用されている。

逆に、目標のスピードが速く、地面や海面のエコーを(ルックダウン以外では)考慮する必要のない対空レーダーでは、二次レーダーしか使わないケースも多い。


『PICからTACCO、確認するか?』

『TACCOからPIC、雲の下に出てくれ。FLIRで確認する』


P-3Cの機体は緩降下を開始する。

天候は雲はでているが、荒れているというわけではない。

それほど厚くない雲を抜けて、FLIRを作動する。


「・・・なんだこれ?」


レーダーが何かをとらえた方向にFLIRを向けたら、なんだかわからない物が映った。


『TACCOからSS-3、どうした?』

「SS-3からTACCO、なんでしょうこれ。可視光に切り替えます」


FLIRの白黒画像から、通常のカメラに切り替える。


「・・・タコ?」

『なんだ、呼んだか?』


カメラに映った物を見て思わずつぶやいた言葉に、TACCOが反応する。

やがて機体は、その物体の確認のために、旋回に入る。


『タコか?』

『タコですね。しかもでかい』

『お前ら、さっきから人のことを呼んでなんだ』


自分のことを呼ばれていると思っているTACCOが不機嫌な声を出す。

いや、コンソールにカメラ映像出せるんだから、見ればいいのに。


と、突然、機内に響くプロペラの音が大きくなる。エンジンが緊急出力で運転されていることを示す轟音である。


『ブレーク、ブレーク!』

『ダメだ!間に合わない!』


PICとCo-Pilotの悲鳴にも似た声が響く。

直後、機体を衝撃が襲った。


『メーデー、メーデー!JUPITER03、左主翼に正体不明の生物が衝突!』

『1番エンジン脱落!2番エンジン、火災発生!』

『メーデー、メーデー!JUPITER03、制御不能!墜落する!』


PICとCo-Pilotの悲痛な無線への呼びかけが機内通話で流れてしまっているが、それを聞きながらSS-3は「航空機を破壊するほどの生物とは?」という疑問が頭に渦巻くのだった。

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