11-5 大学生、何もしない(ふたつめの世界)
「なーんも効いてないね」
「タコがデカすぎるんですよ」
一通り巨大タコに攻撃してみたものの、効果があったどころか、こちらを意識したかどうかすら怪しい。
「考え方を変えよう。タコが街に向かわなければいいんだ」
「それはそうですが、どうやって?」
「エサでもあげて餌付けしたらええんと違う?」
コハクから常識的な案がでたものの
「あの大きさのタコが食べる量の餌って?」
「言うたうちがアホやったわ」
ですよね。
「タコ、タコか・・・タコと言えば」
「それはうちの考えと同じくらいアホな案の気がするから言わんほうがええんと違う?」
「あのサイズのタコの餌よりはタコツボのほうが現実的じゃない?」
俺は思いとどまったのに、言いたいことを言ってしまうアレクシアさん。素敵。
「100mのタコが入る壺とかどうやって作る気なんや?」
コハクは呆れ顔だが、別に壺である必要はない気がする。
「狭い空間ならいいんだし、穴ならなんとかならない?」
「労力のわりに確実性に欠ける気がする上に、そもそもそんな巨大な穴どうやって掘るんや?」
そこは俺にいい考えがある。
「そこにあんまり役に立ってないこの世界最大の国のお姫様がいます」
「あー、ガリア帝国に人海戦術で掘らせんのか。けどそんなんやってくれるかね?」
「あの皇帝、娘にはダダ甘みたいだし、エクセル使って頼めばいけそうじゃね?」
まったくダメージになってなさそうな攻撃魔法をタコにぶつけ続けているエクセルを見ながら話し合う。
というか、あんな勢いで撃ち続けてたらそのうち魔力切れで倒れるぞ。
「たしかに、目に入れても痛くないほどエクセルのことが可愛いみたいですし、いけそうな気がしますね。あれにそんな使い方があったとは、盲点でした」
幼馴染のアレクシアからのお墨付きももらったので、それで行けそうな気がする。
「んじゃ、帝都まで自衛隊に送ってもらって、早速準備にかかろう」
「いや、ちょい待ち、あのサイズのタコが入る穴とか掘れるわけないやろ」
「無理かな」
「無理やわ」
名案だと思ったが、あっさりコハクに否定されてしまった。
「コハクが妖術であのサイズのイカに化ければ」
「人をなんやと思てるんや?」
あ、いかん、コハク様が怒っておられる。
「おお!?」
無意味に魔法を撃ち続けていたエクセルが突然変な声を上げた。
見ると、タコが突然まばゆい光を放ち始めていた。
「なんだ!?」
すると、見る間に直視できぬほどの光量になり、それが収まった時、タコの姿はどこにもなかった。
「消えた?」
「まぁ、結果オーライっちゅうことやね」
コハクは一件落着と言った風である。
「おおおお、知らぬうちに我が封印されし力が目覚めた!?」
「「「ないない」」」
あほなことを言っているエクセルは無視して、自衛隊のヘリが待っている場所まで戻る。
と、送ってくれた自衛官が皆、全身をすっぽり覆い、ガスマスクのついた防護服を着ていた。
「何してるんですか?」
「いや、あのタコのせいかしらんが線量計に反応があったので一応」
「おいいいいい!?」
俺普通の恰好なんですけど!?
「あ、直ちに人体に影響は出ない程度の線量だから大丈夫ですよ。タコが消えてから下がりましたし」
ほんとに大丈夫なんだろうなそれ!?




