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異世界召喚による日本人拉致に自衛隊が立ち向かうようです  作者: 七十八十
第11章 いろんな世界 ~大怪獣現る~
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11-1 たこのきもち(みっつめの世界)

いつも読んでいただきありがとうございます。

毎日更新を気合で続けてきましたが、そろそろ限界なので本章の完結をもって、一旦この話を締めたいと思っています。

それまでは毎日更新を続けたいと思いますので、どうぞ最期までお付き合いください。

それは体長5mにはとどかないが、4mは軽くある巨大な生物だった。

そして、それは動物としてはそこそこ優秀な知能も有している。


もし、それをほとんどの日本人が見たなら、その大きさに驚くだろうし、それが生息している場所にも驚くだろう。

そして、大阪人がそれ見たらこう思うだろう。こいつつこたらどんなデカいタコ焼きができるんや。と。


そう、それはどう見てもタコだった。

そして驚くべきことに、それは陸上に住んでいた。

もっとも、この世界の海は、放射性物質やら有毒廃棄物やらで、浸かっていると人間なら1分も持たないだろうが。


そんなタコだが、クリーチャー紛いの生物が多いこの世界では被捕食者である。


熊が変異したと思われるクリーチャーは、大きいものだと5mほどあり、背中に変な背びれが生えている。

トカゲが変異したと思われるクリーチャーは、もはや恐竜である。


そんなわけで、基本的には体の大きさに似合わず、狭い場所を好み、捕食者から逃げ回るように暮らしている。


ここにも、そんな個体が1つ。


便宜上、彼と表現するタコは、数日前に遭遇したトカゲのクリーチャーの群れから必死になって逃げていた。

基本的に生物や植物が少ない世界なので、追う方も追われる方も必死である。


彼はトカゲのクリーチャー―――もはやヴェロキラプトルとでも表現した方がいいクリーチャーから逃げていた。

時には狭い穴に体をくねらせて押し込み、またある時は岩に擬態し、またある時は全力で8本の足を使って走り。


嫌だなぁ、食べられたくないなぁ、怖いなぁ。

彼が考えているのはそれだけである。


とはいえ、それだけ必死になって逃げても、トカゲのクリーチャーは追跡を止めなかった。

彼が逃げている間に、一度も生物と遭遇しなかったのがその理由である。

つまり、向こうもこれを逃すと、次にいつ獲物に遭遇できるかわからないのである。


もともとハルマゲドン(核戦争)のせいで生物が少ない世界とはいえ、そもそも生物が生息できないエリアも多いので、それなりに生物の生息域は密度があるものである。


もともとこのエリアも、それなりの数の生物が生息していた。が、最近発生した地震と、それに伴う山体崩壊のせいで、かなりの数の生物が下敷きになったり、逃げだしたりしてしまい、数を減らしていた。

何より、人間が捨てていたドラム缶が壊れて、中身(使用済み核燃料)が漏れ出して線量が異常に上昇してしまったのも生物が逃げ出した理由である。


が、幸か不幸か、彼は放射性物質や各種化学物質への耐性が高かった。

トカゲのクリーチャーが、彼を追い込み切れないのもそれが原因である。


しかし、その追いかけっこにも終わりが来た。

8本の足を器用に動かして走る彼の先に、1匹のトカゲクリーチャーが躍り出た。

それを見た彼は、すかさず方向転換、がその先にはもう1匹。

そして、後方からは先ほどから彼を追いかけていたのが2匹。


崖の淵に当たる場所で、3方向を押さえられ、彼に逃げ場は無くなってしまった。

最早これまでと、最期の抵抗をしようと彼が決意したとき、ぐらっと地面が大きく揺れた。

その結果、足を踏み外した彼は、そのまま崖を転がり落ちる。

後に残ったのは、名残惜し気に崖の下を覗きこみ、悲し気な鳴き声をあげるトカゲのクリーチャーだった。


痛いよう、痛いよう。

体の柔らかさゆえか、意外と頑丈にできているのか、崖の下に落ちた彼は、痛がってはいるものの生きていた。

しかし、そこは耐性が高い彼にとっても、危険な場所だった。


早く逃げなくちゃ。

そう考えて、必死に登れそうな場所を探す。

上に戻れば、まだトカゲがいるはずなのだが、そんなことも考えられないほど、彼はこの場所が危険だと感じていた。


「なぜそんなに慌てているのかね?」


その危険な場所に1人の男が立っていた。いや、真っ黒なヒトガタというべきか。


人の言葉など理解できるはずのない彼だが、ヒトガタの言っていることはなぜだか理解できた。


ここは危ないから逃げなくちゃ。


「危ない?なぜ?現に今も君は平気じゃないか」


言われて、彼は立ち止まる。

そういえば、先ほどのような危機感と逃げなきゃという焦燥感は感じない。


「ほら、大丈夫。それに、あれ、君なら食べられるんじゃないか?」


壊れた容器から外に出ている棒状のそれを、彼は手で掴み、むしゃむしゃと食べ始めた。


食べなくちゃ。食べなくちゃ。


彼はなぜそう感じるのかわからないまま、一心不乱に食べ続ける。

それを満足気に見届けたヒトガタは、悍ましい笑い声をあげて天へと昇って行った。

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