10-6 転生者は巨大ロボを見る
《ベルトロイ侯爵領騎士団の越境を確認。数は80》
国境地帯で偵察活動中の陸上自衛隊のUH-1Jから無線が入る。
今回の紛争に関して、陸自から派遣されてきた兵力はその1機と地上の連絡要員だけである。
自衛隊と米軍に任せちゃえばいいじゃん、と思ったのだが、エリザがブーブー文句を言ったのと、派遣されてる自衛官が
「国防を他国に委ねるとどこかの国みたいになりますよ」
と死んだ魚の目をして言っていたので、とりあえずうちの国だけで対処することになった。
「んじゃまぁ行きますか」
相手の数も事前の情報通り。
相手の数とどこから来るかがわかっているので、こちらは有利な位置に有利な数を展開済みである。
本陣には俺の専用機を含め、50騎。これは向こうの国境から見える高台にわかりやすく布陣しているオトリである。
これと別に、伏兵としてカモフラージュを施したエリザと専用機を含む120騎が森林外縁部に布陣している。
向こうは本隊の前に斥候も出していないようなので、伏兵がバレることは無いだろう。
わざわざ国王や王妃が前線にでる必要ないじゃんと思うのだが、もともとエースとして騎士団の先頭に立って反逆者を叩いてきたエリザと、それに勝って結婚した(ことになっているらしい)俺が前線に立つと、騎士団の士気が段違いらしい。
ちなみに、指揮官先頭の風習のない米軍にはリスキーでナンセンスだと嗤われた。
「ていうか、あれなんなん?」
陸自の連絡要員に本陣後方に立っているバカでかい魔導騎士?を指差して聞く。
いや、目立つから囮としては優秀なんだけど。
「え、おたくとことの共同研究の成果だって技官がはしゃいでましたけど?」
「あれうちの予算で造りやがったのか!」
と、急に背筋に寒気が。
見るとクリスが笑顔でこちらを見ている。あかん、超怒ってる。いらんことに予算使ってんじゃねぇって顔してる。
ちなみに、ほんとはコンピューターとかカメラとか、魔導騎士の近代化に必要な電子機器をちょーだいって言ったら、そんなもん渡せるわけねーだろ。けどこっちでやる研究を共同研究ってことで、予算出してくれたらフィードバックしてやるわ。
という、雑な協定を結ばされた。
まぁ、実際、飛行関係は目覚ましい進展があったのでそれはいいのだが、湯水のように予算使いやがるなぁと思ってたら、あんなバカでかい魔導騎士造ってたのか。
「ふふふ、ご説明しましょう!」
出やがったな防衛省から来た技官
「巨大ロボットと聞いて何を想像しますか!王様!」
びしっと技官がこちらを指差す。というかテンション高いなこいつ。こんなだったか?
「え、うーん、ドリル?」
なんとなくで答えると、技官に、あーそっちかーみたいな顔を顔をされた。なんか腹立つな。
「では、そこの三尉!」
今度は連絡要員で派遣されている自衛官をびしっと指差す技官。
「え、あー、合体?」
「正解!というか、見るからにドリルついてないでしょ?」
技官がバカにしたようにこっちを見る。腹立つなこいつ。
というか、前会った時はもっと普通だったような気がするが。やっぱこいつのテンションおかしいよな?
「ていうか、合体?」
「そうですよ、合体ですよ。ほんとは陸上自衛隊と航空自衛隊と海上自衛隊を合体させて、統合運用!とかやりたかったんですが、予算が足りませんでした」
いや、合体させるものとして最後おかしいだろ。異常にでかいし。
「ドリルもね、考えたんですけどね、やっぱり合体が優先かなぁと」
「いや、合体ロボにドリルつければ良かったんじゃ」
連絡要員の突っ込みに、技官は気付かなかったというようにこの世の終わりのような顔をしている。
「しかし、実戦があるということで、寝ずに調整を行い、こうして巨大合体ロボを持ってくることが出来たのです!」
ババーンという効果音が聞こえてきそうなポーズをとる技官。
ああ、こいつのテンションがおかしいのは寝てないからかぁ、と巨大ロボを見上げる。
「で、どこがどう合体すんの?」
「従来型の魔導騎士がコクピットにドッキングして操縦します」
「「ただただバカでかいだけじゃねぇか!」」
突っ込みが連絡要員と被った。
「ちゃうねん、時間がなかってん、ほんまは分離変形とかつけたかってん」
なんで突然関西弁なんだよ。
というか、もういいから寝ろ。




