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異世界召喚による日本人拉致に自衛隊が立ち向かうようです  作者: 七十八十
第10章 いつつめの世界 ~転生者は転移者と対峙する~
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10-5 転移者、戦闘を甘く見る

「諸君!いよいよ明日出撃だ!」


騎士団長の言葉に、操縦士達はうおおと気勢を上げる。


「我が国の混乱に付け込んで神聖な領土を侵した不埒なランシュタット王国に鉄槌を下すのだ!」


騎士団長の演説は割とどうでもいいが、いよいよ出撃だと思うと気持ちが昂る。

とりあえず、こっちの弱みに付け込んで攻めてきた悪い奴らを追い払う。ということくらいしかわからないが、ユートの役に立てるのならよしとする。

今回の作戦の司令官はユートで、指揮官として初陣だと本人が言っていた。

せっかくだから少しくらい役に立って、恩返しはしたいと思ったのだが、俺は本陣のユートの直掩だから多分出番はないという。


最近は模擬戦でも8割くらいの勝率になってきたし、せっかくなら戦ってみたかったのだが。

魔導騎士の操縦は日本にいたころにやっていたゲームより簡単じゃないかと思う。


「緊張するね」


同じく初陣になるというミリアがやや固い表情で声をかけてくる。


「まぁ、ミリアも俺も、ユートの直掩らしいから、戦闘には関われないでしょ」

「それはそうなんだけど、やっぱり訓練とはちょっと違うかな」


何度か操縦についてアドバイスをしてから、ミリアとはかなり仲良くなった。

魔導騎士に乗ったのもほぼ同時期ということで、周りからもセットと思われている。


「君らは明日が初陣だろう。戦場の空気を感じることだ」


演説を終えた騎士団長がいつの間にかこっちに来ていた。

なお、暁人とミリアには知る由もないことだが、模擬戦でベテランに勝ちまくって戦闘を甘く見ている節のある2人を本陣直掩にしたのは騎士団長である。

2人の操縦技術自体は認めており、戦場の空気を知り、慎重に動くことを覚えれば一流の操縦士になれるという考えでの本陣直掩配置だが、2人には知る由もない。


「出番が無さそうなのが残念です」


さっきまでの砕けた態度はどこへやら、ミリアはびしっと直立して騎士団長に対峙する。

このあたり、幼少期から貴族として教育受けてた職業軍人なんだなと思う。


「戦場では何が起こるかわからん。貴様らの腕を見込んでの本陣直掩だ。油断するなよ」


これは騎士団長の偽らざる本音なのだが、どの程度伝わったのかは当人たちにもわからない。

それだけいうと騎士団長はまた別の操縦士に声を掛けに行った。


「お、アキトにミリアじゃないか。相変わらず仲いいな」


騎士団長の演説中、横で置物になっていたユートが来た。

普段ふらふら遊んでるよなぁと思っていたが、どうやらほんとに遊んでいただけだったらしく、侯爵家跡継ぎとしての勉強を放り出していたらしい。

大丈夫かこいつ。

そして、何かと俺とミリアをくっつけようとしてくるのだが、面白がっているだけにしか見えない。


「お前こそ、明日大丈夫なのかよ。総大将様だろ?」


ユートの冷やかしには応えずに、軽口を返す。


「あー、いや、まー、うん。指揮は騎士団長がやるし、大丈夫じゃないかな?」


・・・ほんとに大丈夫か?

明日の準備がいろいろあるとかで、ユートはその後幕僚団に連れていかれていた。

多分、マリオネットみたいに言われたことをあれやこれやとやらされるんだろうなと思うと可哀想な気もするが、今まで好き勝手やってきた報いのような気もする。

その好き勝手やってた時に仲良くなった身で言えたことではないが。


「ねぇ、アキト、ちょっといい」


さっきから黙っていたミリアが急に思いつめたように声をかけてきた。


「別にすることは騎士の最終チェックくらいだけど、どうしたの?」

「こっち来て」


そう言って、人気のないところに連れていかれた。


そのあとミリアと何があったのか?

それは俺とミリアだけの秘密である。

ひとつだけ言えることは、2人の仲が深くなったということである。


呑気にも、このときは次の日の戦闘は騎士に乗って待機してれば終わるだろうなどと甘いことを考えていたのだが、それを後悔するのは全て終わった後の話である。

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