2-7 大学生、ハーレムをつくる?
「で、だ」
皇帝陛下は俺の方を見て行った。
「伝承によると勇者殿は異世界から来ておろう」
そんなことも伝承に残ってるのか。
ん?てことは魔王を倒したら帰れるかどうかも知ってるのか?
「そうですけど、魔王を倒したら帰れるんですかね?」
「ふうむ。知る限り勇者が魔王を討伐した後、元の世界に帰ったという話は聞いたことがないな。皆、魔王討伐後の話が残っておる」
まじでか。ということは帰れない?
「過去の勇者は皆、魔王討伐後に結婚しておるし、国を創ったりしておる。実際、我が国も初代の勇者様が創ったとされておるしな」
魔王討伐に成功すれば報酬も思いのままだし、わざわざ帰る理由もないということだろうか。
「まぁ、帰るという選択肢があるのかどうかについてすら伝承は残されておらん。としか今のところ応えられんな」
「そうですか・・・」
やってみなければわからない。ということか。
「それで、本題に戻るが、いざ魔王の首をとるという際に軍による援護はさせてもらうとして、伝承通りまずは諸国を巡られるのだろう?」
ここまででわかったことだが、どうやらこの世界にレベルアップという概念はないらしい。
つまり強くなるには、地道に訓練する他ない。
身体能力は聖剣のバフでわりと常人離れしているので、いきなり魔王討伐に向かってもいいのだが、如何せん経験が足りない。
身体能力が上がったところで、普通の日本の大学生だった俺には、実際に剣で切りあった経験も命のやり取りをした経験もないのだ。
「恐らくそうなるかと思います」
経験を積むためにも、そして魔王討伐のために強い人を味方にするためにも、しばらくは少人数で諸国を巡るほうがいいだろう。
アレクシアの援助だけでもお金の心配はないので、異世界を見て回りたいというのも本音ではあるが。
「そういうことなら、是非我が国からも2名連れて行ってくれ」
皇帝がそういうと2人の女性が部屋に入ってきた。
これまたなかなかの美人である。
「初めまして勇者様。ガリア帝国第一皇女、エクセル・ガル・ガリアと申します。我が魔術で必ずやお役に立ちましょう」
黒いドレスを着た銀髪の女性が優雅に挨拶した。
「エクセル皇女の側仕えを仰せつかった、近衛騎士のキリエ・ヘイズと申します」
戦力増強は歓迎だが、第一皇女なんか連れて行っていいんだろうか?と皇帝を見るが
「帝国一の魔術師と自信を持って言える自慢の娘ゆえ、是非ともお連れ下され」
とのことなので、美人を断る理由もなく喜んでパーティーに加えた。
エリーシャには考えなしすぎると睨まれたけど、問題ないよね?
ちなみに、第一皇女に夜這いされて初物を美味しくいただいたのだが、アレクシアが合流してきた後に修羅場になった。
おんなってこわいなぁとおもいましたまる
アレクシアが再合流した後、帝国を後にし、この世界の全ての知識を収集しているという大樹海にあるという世界樹を目指した。
エルフのハンター、ルルに出会っていろいろ一悶着あったあと、彼女もパーティーに加った。
アレクシアは色男だねぇとケラケラ笑い、エクセルは歓迎しますと目が笑っていない笑顔で言った。
アレクシアはともかく、エクセルの笑顔はホントに怖かった。無関係なメルドーズがちびりかけていた。
アレクシア曰く、帝国は勇者を婿入りさせて「勇者の国」というのをより明確にさせたいらしい。
ミスティルテイン王国のせいで勇者伝説がかなり胡散臭いものと見られだしている現状、建国のルーツが勇者だというガリア帝国はかなり焦っているのだとかなんとか。
ちなみにアレクシア自身は
「勇者の子供を身篭れたら国に箔がつくしラッキー」
と思っているとのこと。
なので、「魔王討伐後に元の世界に帰る」ということについては応援してくれるらしい。
帰るまで好き勝手するのはいいけど、できたら私の相手もしてね。とか言われたのでその日の夜はいつも以上に頑張ってしまったの余談である。
世界樹に辿り着いてからも一悶着あって、ドルイドのフィーリスが仲間になった。
エクセルが目が笑ってない笑顔で以下略
この世界の全ての知識を吸い上げていると言われるだけあって、世界樹で得られた情報は大きかった。
・魔王と勇者は対の存在。
・魔王を倒すには勇者が聖剣を心臓に突き立てる必要がある。それ以外では死なず、不死である。
・勇者も魔王と同じくこの世界においては不死である。ただし魔王に魔剣を心臓に突き立てられると死ぬ。
・魔王は一定周期で現れ、魔王の出現によって勇者は召喚可能になる。
・勇者が魔王討伐に失敗して死亡した場合、次の勇者が召喚可能になる。
・魔王討伐に成功した場合、勇者の不死性は失われる。
といったそれまで曖昧だったことや、新しい情報がわかったのは大きかった。
怪我がすぐ治るのでおかしいなぁとは思っていたが、どうやら魔王討伐までは基本的に不死らしい。うれしいやら恐ろしいやら。
しかし、そんなことよりも最も重要だったのは
・魔王討伐後に聖剣と勇者召喚が行われた魔法陣を用いることで勇者は元の世界に帰ることができる。
という情報だった。
しかし、同時に問題が発生した。
”召喚に使われた魔法陣”が必要なのである。
残念ながらミスティルテイン王国とは事実上敵対状態である。
なんせ、第一王子だというリューベックと教団僧侶のダンカンは、ガリア帝国の監獄に置いてきたのである。
その決断に後悔はないので、とりあえず保留してその情報は、俺と世界樹から情報を引き出したフィーリスの心の中に止めることになったのだった。




