9-13 自衛官、メイドに振り回される
「レンジャー訓練よりきつい。どうしてこうなった」
クソメイドに捕まってから、塔を登り始めたのだが、夜になったらどこで休憩するかとか、何も考えずに、全速力で進めるところまで進んで夜になったら寝る。
これを繰り返し、凄まじいスピードでこの1週間進んできた。
最初のころは、女を3人連れたバカ強いユーイチと呼ばれる男の噂を聞いたが、途中から聞かなくなった。
つまり、あいつは途中でくたばったか、クソメイドのアホなペースのせいで追い抜いたかのどちらかである。
「なので、しばらく待つか戻らないといけません」
「は?早く帰りたいんですけど?」
夜、本日の休憩場所となった58階の冒険者ギルドでマリアに向かって提案すると、一蹴された。
なお、途中階の拠点になるので、当然ベッドはないし、職員もいない。
施設自体も山小屋と言うか、退避小屋のような簡素な物である。
そもそも、今いるのも我々2人だけである。
「いやいや、俺の仕事は日本人連れて帰ることだからね。ほっといて帰るとかないから」
「ぐすん、ではあはあなたはか弱い乙女のことなんて知ったこっちゃないというのですね」
絶対ウソ泣きだが、泣いてるようにしか見えない。女ってコワイ。
「か弱い乙女とかどこにいるんだよ」
そもそもここまでのモンスターはほとんど出てくると同時に、クソメイドがハルバートでぶっ飛ばしているので、俺は何もしていない。
夜間の不寝番を交代でできる以外に、俺が必要になった場面は今のところない。
「とにかく、最低でもいることがわかってる滝川を連れて帰らないと話にならないから、俺は次の拠点がある60階で待つことにする」
のんびりしたいしな。
「はぁ、こんな美人と2人きっりなのに一度も襲って来ないとか生殖器ついてるんですか」
「恥じらいも無くそんなこと言う奴を乙女とは言わねぇよ?」
というか、お前を襲うとか後が怖すぎて普通のやつはやらねぇよ。
「仕方ないですね。では私も休憩することにしましょう。そろそろしんどいです」
「しんどいんならなんでこんな無茶してたんですかね・・・」
ここまで一度もベッドで寝ていない。
「2人きりで誰もいない状況で、疲労で判断力をていかさせればあなたが手を出してくるかなと思いまして」
「何言ってんの?」
相変わらずこのメイドは発想がぶっ飛びすぎててわからん。
「いえ、元の世界だと誰も私に声かけてこない上に、こっちが言い寄ってもなぜか逃げていくので、このままだと完全に喪女なので、とりあえずあなたでいいかと」
「お前の普段の行動と言動を考えろ?まともな判断力持つ奴ならお前に手を出そうなんて考えないからな?」
「つまり、あなたの判断力を低下させるにはもっと疲れさせないといけなかったわけですか。失敗でした」
ん?というかなんで喪女とかいう単語知ってんのこいつ?
「ところで、喪女ってなに?」
「あ」
あ、って言ったよこいつ。
「お前、まさか転生してる?」
「ナンノコトデスカネ?」
露骨に目を逸らして棒読み返答である。
わかりやすすぎるわ。
「この野郎、今まで黙ってやがったな?」
妙に上手いこと日米の企業や政府と交渉して、施設運営していたわけである。
「バレたのなら仕方がない!覚悟しろ!」
ヤバいと思ったときには拘束されていた。
「ぐふふ、いい体ですね」
今までの無表情な鉄面皮とは打って変わって、どっかの姫様にはとても見せられないようなだらしない笑みを浮かべたメイドが視界に入る。
その後のことは思い出したくない。
もうお婿に行けない。ぐすん




