8-8 自衛官、こんな死に方はしたくないと思う
『これでビーコン3つ目ですね』
掘り返すのは早々に諦めて、さっさとビーコンの位置だけでも見つけてしまおうということにして捜索を始めたら、1ヶ所目の近くであっさり見つけてしまった。
まぁ、同じ場所で仕事してたら固まって流されたってことだろう。
「とりあえず目印つけたら2つ目の場所を掘り返してみよう」
山体崩壊で流れ出した土砂なので、岩もかなり混ざっている。
穴を掘るくらいは5mあるパワースーツのおかげで、生身でやるのとは比べ物にならないほど早いが、重量物をもちあげるとなるとやはり本格的な重機が必要である。
パワースーツ用に造られた大型のスコップを装備して、ビーコンが反応した2ヶ所目の地点に向かう。
「とにかく掘ってみてビーコンが強くなる方向を探っていくしかない」
『岩が無いといいですけど』
ある程度掘ると、ビーコンの反応は強くなった。
どかせないほどの岩も無いので、さくさく掘り進んでいく。
とはいえ、穴の崩落を防ぐために、深くなればなるほど、穴を広げたり周囲を固めたりしなければならないので、ペースは落ちていく。
「お?」
さらに穴を深くしようとして、スコップの先にガチンと金属質なものが当たる感触があった。
『出ましたか?』
「まだわからん。岩かもしれんし」
固い感触のあった周囲の土砂を2人で取り除いていく。
『出ましたね』
「出たな」
パワースーツの背面、バックパックだった。
「とはいえ・・・」
『無理でしょうね・・・』
フレームが大きくひしゃげている。
流れてきた岩の直撃を受けたのだろう。
仮に岩の直撃は助かっていても、コクピットの遮蔽が不十分になって被曝で死んでいるだろう。
「いずれにしても出してやらんとな・・・」
『そうですね・・・』
気が重くなるが、せめて連れて帰るくらいはしてやらないと可哀想だ。
結局、ビーコンに反応があった場所は、最初の場所だけがかなり大きな岩の下になるようで、他の2ヶ所からはひしゃげたアームスーツと大型トラックがでてきた。
アームスーツのほうはまだなんとか原型をとどめていたが、トラックの方は運転台が完全にひしゃげていて、どこがなにだったのかもわからない状態だった。
いずれにしても遺体だけ回収とはいかない状態だった。
『トラックのほうどうしましょう』
「どうするってもなぁ・・・」
アームスーツのほうはとりあえず腕と足、バックパックを外して胴体だけにすれば、なんとかコクピットをまるごと運べるが、トラックの運転台のほうはそうもいかない。
というか、どこまでが運転台でどこがエンジンで荷台なのかもよくわからない状態である。
「とりあえず引き上げといて後続の坑道掘削組に任せるか・・・」
潰れて小さくなっているとはいえ、撤収地点まで持っていくには大きいし、なにより重い。
『隊長、やばいかも』
周辺警戒にあたっていた桧山から無線が入る。
相変わらず高い線量のせいでノイズ交じりで耳障りだ。
「なんだ?」
『見覚えのある装甲車がこっちに向かって山を登ってきてます』
「見覚えのある装甲車?」
96式とかNBC偵察車とか機動戦闘車とかが思い浮かんだが、それなら別にやばくはなかろう。
『教都のやつです』
「えぇ・・・」
激しく面倒な予感がするが、あの装甲車自体は大した武装もないはずなので、別に荒事にはならないか。
とはいえ、相手をするのもめんどくさい気がする。
知り合いだったりするとなおのことめんどくさいが、考えてみたら生身で外に出られる環境ではないので、こっちもパワースーツから降りないし、向こうも装甲車から出てこないだろう。
つまり知らん顔して、適当に相手すればいいのだ。
うん、そう思うと気が楽になったぞ。




