8-6 自衛官、気が重くなる
結局、処分場の崩落現場に到着したときには日が落ちてしまっていた。
人工的な明かりが全くない山中なので、月と星の明かりしかない。
天体観測する人なら喜ぶのだろうが、演習場でもわりかしよく見えるのでなんの感慨も湧かない。
けど、別世界だから天体も未知なのかな?
まぁ、探せばこの世界も核戦争前に天体の研究くらいしていただろうし、資料があるのかもしれないが。
まぁ、いきなり捜索を始めるので夜空を眺めている暇はないわけだが。
とりあえず交代で探すことにして、戦闘用アームスーツの2機は交代で周辺警戒。
作業用の4機は2機一組で交代で谷底におりて捜索。
廃棄していたブツの保管容器が大量に壊れたのか、線量が高すぎるので休憩といってもパワースーツからは降りられない。
『というか、この線量でパワースーツが壊れてたら生きてないですよね』
「とはいえ、遺体くらいは連れて帰ってやらんといかんだろ」
『そうはいってもパワースーツ4機で何するんですか。完全に山が崩れてますよね』
「・・・探すんだよ」
それしか言えない。
「アームスーツにはビーコンがあるから、とりあえず動いてるうちにそれだけでも捕まえて場所を絞れば、あとは崩落したトンネル直して重機搬入するだろ」
『何事もなく終わればいいですけど』
少なくとも人は来ない場所だからトラブルが起こるとしたら、俺たちの二次遭難のほうだろう。
とりあえず俺と秋月の2人が捜索チームの初回休憩側になったので、パワースーツを屈ませて、コクピット内で仮眠することにする。
『これ、寝にくいですね・・・』
「もうちょっとコクピットを広げてリクライニングシートにしてもらわないと長時間行動はきついな」
『けど核燃料にしない限り普通はどんなに長くても24時間で補給ですよね・・・』
まぁ、このサイズで核燃料積んでるとか恐ろしすぎて兵器としては使えんわな。
「とりあえず72時間起きてるわけにもいかんし、寝る努力をしよう」
『首が痛くなりそうだなぁ・・・』
「・・・パワースーツ自体を傾けて固定すればいいんじゃないか?」
コクピットの椅子自体は直立しているが、二足歩行ロボットと考えれば、屈ませて適当な岩にでも寄り掛からせればいいのである。
『なるほど、寝れそうですね』
さっそく秋月は実践して確かめているようだ。
俺もさっさと寝てしまおう。
降りて休憩できる場所を見つけるほうがいいのかもしれないが、捜索時間を減らせないとなると休憩時間を削るしかない。
見つかるかどうかわからないものを探すなら、このまま休憩してしまうべきだと判断し、俺も瞼を閉じた。
『隊長、交代の時間です』
「んん、あと4時間」
『起きてますよね?』
「はい」
冗談の通じない奴め。
『ビーコンの反応があった辺りに目印つけてますのでよろしく』
交代組が指差す先に黄色い旗が立てられている。
『掘ったら反応が強くなったので多分あの下あたりなんでしょうけど、岩があるみたいで掘るのは厳しいですね。確認できるビーコンも1つだけなので、生存の可能性を求めるなら他を探す方がいいかもしれません』
鴨野はそう報告してくる。
「岩って砕けそうにないの?」
『発破すればいいんでしょうけど、その下にいる可能性もあるわけでして』
死んでてもあんまり乱暴なことはできないし、地道に掘るのが無難か。
「ちょっと様子だけみて、無理そうなら他のビーコンを探す」
『了解』
秋月を引き連れて、とりあえず目印に向かって谷を下る。
それにともない、線量も増加していくので、パワースーツの遮蔽が破損していれば間違いなく生きていないだろう。
重くなる気持ちに耐えながら、ビーコンの受信機の電源を入れるのだった。




